<吉祥寺残日録>トイレの歳時記🌾七十二候「霎時施(こさめときどきふる)」、健康診断を受けてカレンダーを買う #211028

我が家のトイレにかけてある歳時記カレンダーも残すところ2ヶ月となった。

今日からは七十二候の「霎時施(こさめときどきふる)」となる。

「霎」という字はあまり見たことがないが「こさめ」とか「しばし」と読むことが一般的なようだ。

しかし我が家のカレンダーには「しぐれときどきほどこす」とルビがふられていて、「時雨(しぐれ)が時々降る頃」とその意味が書かれていた。

「時雨」とは、主に秋から冬にかけて起こる、一時的に降ったり止んだりする雨のことである。

まさに変わりやすい秋の空を代表する言葉という印象だ。

確かにこのところ、天気の変化が大きい。

雨が降ってブルブル震えるような日があると思えば、真っ青な空が広がる暖かな日もある。

大陸からの移動性高気圧が西から東に移動するこの季節、天気はなかなか安定しないのは日本列島の宿命なのだ。

そういえば、「女心と秋の空」ということわざがある。

実は、「男心と秋の空」の方がもともとなのだそうだ。

「All About」に、面白い記事が載っていた。

『「女心と秋の空」と「男心と秋の空」 元々はどっち?意味・由来や語源の違い』

三浦康子さんという方が書いたこの記事の一部を引用させていただこう。

「男心と秋の空」のことわざができたのは江戸時代。当時は既婚女性の浮気は命を落とすほどの重罪でしたが、既婚男性の浮気には寛大だったこともあり、移り気なのはもっぱら男性だったのです。また、若い娘に男性を警戒するよう戒めたり、ふられた際の未練を断ち切る慰めにも使われました。江戸時代の俳人・小林一茶は「はづかしや おれが心と 秋の空」という俳句を詠んでいます。

それ以前の和歌でも男心は移ろいやすいものとして扱われ、室町時代の狂言『墨塗』に「男心と秋の空は一夜にして七度変わる」という有名なセリフがあります。

では、「女心と秋の空」と言われるようになったのは、いつごろでしょう?

明治時代の尾崎紅葉の小説『三人妻』に「男心と秋の空」がでてきますが、「欧羅巴の諺に女心と冬日和といえり」と続きます。おそらくこれは、イギリスの「A woman‘s mind and winter wind change often」(女心と冬の風)ということわざのことで、強風や弱風に変化しやすい冬の風を女心にたとえたもの。この頃から変化の兆しがみえてきます。

その後、大正デモクラシーで女性の地位が向上すると、恋愛の価値観も変わります。当時、一世を風靡した浅草オペラで、『風の中の 羽のように いつも変わる 女心――』と歌う『女心の歌』※が大ヒット。西洋文化の影響で女性が素直に意思表示できるようになったこともあり、この頃から「女心と秋の空」とも言われるようになりますが、愛情に限らず、喜怒哀楽の感情の起伏が激しいことや物事に対して移り気なことを示しており、男心とは少しニュアンスが違うようです。

引用:All About『「女心と秋の空」と「男心と秋の空」 元々はどっち?意味・由来や語源の違い』

江戸時代は「男心」、大正時代は「女心」。

要するに、力関係が変わったということなのだろう。

我が家に当てはめてみると、明らかに「妻の心と秋の空」という印象だ。

機嫌がいい時と悪い時でまるで別人になる。

とはいえ、妻から言わせれば、私もいつも言うことがコロコロ変わるそうで、「君子豹変す」と言えば聞こえはいいが確かに思い当たる節もある。

つまりは、お互いが我慢をしなければ、「男心」も「女心」も本来、秋の空のように移ろいやすいものなのだ。

「結婚生活は我慢が肝要」と昔の人は言ったそうだが、いつの時代も人間関係に我慢は必要不可欠ということだろう。

さて、今日は朝から「霎」とはまったく無縁なような青空が広がっていた。

私は妻と連れ立って外出した。

日差しがたっぷりで暖かい。

向かったのは吉祥寺駅近くの雑居ビルの最上階にある「藤田クリニック」。

初めてかかるお医者さんで、健康診断を受けるのが目的だった。

私は退職後も勤めていた会社の健康保険組合に入れてもらっているのだが、ここから年一回の健康診断を受けるよう通知が届いた。

都心の大病院から近くのクリニックまでたくさんの対象医療機関が載っているリストの中から家からすぐのこのクリニックを選んだ。

吉祥寺の医療機関の場合には、武蔵野市が行っている健康診断を受ける形になるようで、受診表などをあらかじめ市の保健センターにもらいに行った。

ただし、費用は武蔵野市ではなく私が加入する健保組合が全額負担してくれることになるようだ。

採血や心電図、レントゲン検査などを一通り行い、医師の診察を終える頃には1時間半ぐらい経っていた。

今日のところは特段問題はなかったようだが、レントゲンなどは専門医が確認する必要があるそうで、正式な結果は1ヶ月後の改めてこのクリニックを訪ね聞くことになる。

健康診断を終えて、私たちは東急百貨店の中にある紀伊国屋書店に行った。

ちょっと気が早いが、来年のカレンダーを購入するのが目的だった。

トイレにぶら下げるカレンダーには、いささかのこだわりがある。

トイレの時間というのは他にやることもないので、自ずと目の前にぶら下がっているカレンダーを眺めるからだ。

去年までは海外旅行先で買い求めた写真が美しいカレンダーがいつもかけてあった。

それがコロナによって海外旅行に行けなくなり、今年は「二十四節気・七十二候 歳時記カレンダー」というものに変わったのだが、これが案外役に立った。

とにかく人生でこれまで興味を持ってこなかった日本の伝統的な暦が、私たちの目にとても新鮮に映ったのだ。

「来年もこの歳時記カレンダーにしよう」

早い段階で、そう決めていた。

去年、吉祥寺にある本屋さんを回ってカレンダーを探した時、ここ紀伊国屋書店が一番多彩なカレンダーを置いているのを知った。

今年使っている歳時記カレンダーもこの書店で買い求めたものだ。

そして探していた「歳時記カレンダー」はすぐに見つかった。

見た目は今年のものとほとんど同じだが、書かれている内容は微妙に違う。

「よしよし、これでいい」

二人で合意して妻がレジに買いに行った時、私は歳時記カレンダーの裏に隠れていた別のカレンダーに気がついた。

「四季の恵みをいただきます 和食の暦」

副題として「二十四節気・七十二候 暦にちなんだ和食の話をお届けします」と書いてある。

これもいい、と思った。

私はもともと食に関心が薄く、和食の知識をほとんど持っていない。

来年も海外旅行にはそう行けそうにないので、ここは趣向を変えて、和食文化を軸として一年を過ごしてみるのもいいのではないか・・・。

そう思って、レジに向かっていた妻を呼び止めた。

「男心と秋の空」

やはり私は妻が言うように、言うことがコロコロ変わる男なのである。

こうして我が家に新しいカレンダーがやってきた。

来年は令和4年、壬寅(みずのえとら)である。

カレンダーの表紙にはこう書いてあった。

『日本では春夏秋冬とめぐる季節が豊かな作物をもたらします。細やかな季節の移り変わりに寄り添い、四季の恵みを暮らしに活かす。そんな先人の「知恵」を受け継ぐ日々をはじめてみませんか。』

いいじゃないか、始めてみよう。

来年は和食についてもっと知り、実際に食べてみて、その歴史を調べてみよう。

おそらく国内旅行には行きやすくなるだろうから、和食というテーマは実にふさわしい。

こうした来年の新たなテーマが1つ決まった。

<吉祥寺残日録>妻の誕生日、2021年のカレンダーを探して吉祥寺の本屋を巡る #201127

【トイレの歳時記2021】

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