2021年のテーマとして掲げた「井の頭公園の植物」観察。
9月に入り頭上を見上げながら歩くと、様々な樹木が個性豊かな実を色づかせているのに気づく。
文字通り、実りの秋が始まろうとしている。
そんな中から、「トチノキ」「ロウバイ」「ミズキ」「ハナミズキ」「エノキ」を記録したい。
「トチノキ(橡)」

緑色の大きな葉の間から見えるキウイのような大きな実。
これは「トチノキ」の実、すなわち「栃の実」である。
真夏に成長し、初秋には色づいて地上に落下してくる。

落下すると割れて栗のような種子が顔を出す。
正確に言うと、この種子が「栃の実」と呼ばれるもので、縄文時代から食糧とされてきたそうだ。
しかしアクが強すぎて、栗のようにそのまま焼いたり煮たりして食べることができず、複雑な工程を経てアクを抜き、もち米などと混ぜて「トチモチ」にして食べるのが一般的だという。

それにしても、樹高20メートルはあろうかという大木から落ちてくる実がまともに当たると、間違いなく痛いに違いない。
「トチノキ」の下を歩く際は、気をつけて通り抜けたいものだ。
「トチノキ」 分類:ムクロジ科トチノキ属 特徴:落葉広葉樹・高木 花が咲く時期:5〜6月 実のなる時期:9〜10月
井の頭公園の「トチノキ」はここ!

「ロウバイ(蝋梅)」

干し柿にも似た不思議な実に気づいたのは、つい最近のことだ。
お世辞にも美しいとは言えないこの実は「ロウバイ」である。
早春の公園を彩るあの蝋細工のような可憐な花とは似ても似つなぬ姿である。

私は全く気づかなかったが、6月ごろからビワのような実がなり、9月ごろにはすっかり枯れたような様子に変わる。
実の中を割ると種がいくつか入っているそうだ。
蝋梅という名がついていても梅の仲間ではないため、その実は食用とはならず、むしろ有毒であるという。
「ロウバイ」 分類:ロウバイ科ロウバイ属 特徴:落葉広葉樹・小高木 花が咲く時期:12〜3月 実のなる時期:10〜11月
井の頭公園の「ロウバイ」はここ!

「ミズキ(水木)」

葉っぱの上に小さな実をたくさんつけるのは、私が好きな「ミズキ」の木である。
井の頭公園の中にたくさん植えられていて、季節の移ろいに応じてその実を、緑から赤、赤から黒へとその色を変化させる。

「ミズキ」は上に向いて実をつけるため、小鳥たちにとっては食べやすく、大きさもちょうど食べやすいサイズで人気があるらしい。
実の色づきが一様ではないのも、ミックスキャンディーのようで楽しい印象だ。
「ミズキ」 分類:ミズキ科ミズキ属 特徴:落葉広葉樹・高木 花が咲く時期:5〜6月 実のなる時期:9〜10月
井の頭公園の「ミズキ」はここ!

「ハナミズキ(花水木)」

赤く少しとんがった実をつけるのは庭木として人気の「ハナミズキ」。
アメリカ原産で、1912年に東京市長の尾崎行雄がワシントンへサクラを贈呈し、その返礼として1915年にアメリカから日本へやってきたのだという。
花の時期には見慣れた樹木だが、実がなっているところをしげしげと眺めたことはなかった。

花の後にできる実は10~11月頃になると深紅に熟す。枝先に3~4個がまとまって実るのが普通で、実は落葉後もしばらくは木に残る。アオキのように光沢があって美しく、小鳥の御馳走になるが、毒性があるため人間は食用しない。実の直径は1センチほどで、内部には種子が2粒含まれる。
出典:庭木図鑑 植木ペディア
葉が色づくのも他の樹木より早いようで、一足早く秋の訪れを感じさせてくれている。
「ハナミズキ」 分類:ミズキ科ミズキ属 特徴:落葉広葉樹・高木 花が咲く時期:4〜5月 実がなる時期:10月
井の頭公園の「ハナミズキ」はここ!

「エノキ(榎)」

枝先のたくさんの小さな実をつけているのは「エノキ」。
樹高20メートルの大木に似合わない小さな実である。

「ミズキ」同様、小鳥たちに人気の実であるが、果皮に甘味があり人間の子供たちも昔はよく食べたそうだ。
ただ枝が高い場所にあるため、子供たちが実を食べるのは容易ではなかっただろうと想像する。
大人にとっては、榎の根元や枯れ枝に生えるエノキダケの方が馴染みが深いと言えるだろう。
「エノキ」 分類:アサ科エノキ属 特徴:落葉広葉樹・高木 花が咲く時期:4〜5月 実のなる時期:9〜10月
井の頭公園の「エノキ」はここ!

井の頭公園の植物2021
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