2021年のテーマとして掲げた「井の頭公園の植物」観察。
紅葉シーズンを迎えた井の頭公園で今月私の目に止まった植物をまとめておく。
「カラスウリ」「マンリョウ」など実がなるものや紅葉の美しい植物たちだ。
「カラスウリ(烏瓜)」

普段通らない林の小道を歩いた時、藪の中に赤い実を見つけた。
植物識別アプリ「Picture This」で調べると、「カラスウリ」と表示された。
名前は聞いたことがあるが、しっかりと観察するのは今回が初めてである。
11月末にはすでに葉は枯れていて、赤い実だけがつるにぶら下がっていた。

5〜7cmの卵形の実はかなり目を引くが、鳥に食べられることもなくこうして残るのは、苦味があるからだそうだ。
実の中には、打ち出の小槌のような形をした黒いタネがたくさん入っている。
種子はその形から打ち出の小槌にも喩えられる。そのため財布に入れて携帯すると富みに通じる縁起物として扱われることもある。中国では医薬原料として活用されており、果実・種子・塊根ともに生薬として利用されている。かつては日本でも、しもやけの薬として実から取れるエキスが使用された。若い実は漬物にするほか、中身を取り出し穴をあけてランタンにする遊びに使われる。
出典:ウィキペディア

先月、サザンカの木に赤い大きな実がなっているのを見たが、あれもきっと「カラスウリ」だったのだろうと今になって気づいた。
夏の夜間には、白いネット状の花を咲かせるというので、来年はぜひ「カラスウリ」の花も見てみたいと思う。
花言葉は「よき便り」。
「カラスウリ」 分類:ウリ科カラスウリ属 特徴:つる性草本 花が咲く時期:8〜9月 実のなる時期:10〜11月
井の頭公園の「カラスウリ」はここ!

「マンリョウ(万両)」

薄緑色のかわいい実をつけた植物を見つけた。
お正月の縁起物として庭木に用いられる「マンリョウ」だった。
「マンリョウ」は「センリョウ」や「ナンテン」と同じように赤い実をつけるものと思っていたが、実は白い実をつける「シロミノマンリョウ」という種もあって、紅白の「マンリョウ」を揃って植えるとより一層ありがたい印象になるらしい。

井の頭池北岸の茂みの中をよく見ると、白い「マンリョウ」と赤い「マンリョウ」が並んで実をつけていた。
庭木として目にすることが多い「マンリョウ」だが、日本だけでなく東アジアからインドまで広く自生しているのだそうだ。
井の頭公園でも藪の中で実をつけているものが多く、人工的に植えたというよりも鳥などが種を運び自生したように見える。

それにしても、「マンリョウ」の赤い実は緑の葉によく映える。
「センリョウ」よりも美しいから「マンリョウ」と名付けられたという説が正しいかどうかはわからないが、確かに実の美しさではピカイチだと感じた。
花言葉は「寿ぎ(ことほぎ)」。
「マンリョウ」 分類:サクラソウ科ヤブコウジ属 特徴:常緑広葉樹・低木 花が咲く時期:7月 実のなる時期:11〜1月
井の頭公園の「マンリョウ」はここ!

「ハナノキ(花の木)」

11月といえばやはり目を引くのは紅葉。
井の頭池のほとりを歩いていて、「これは何の木だろう?」と気になったのが美しく紅葉したこの樹木だ。
植物識別アプリ「Picture This」で調べると「アメリカハナノキ」と表示された。

「アメリカハナノキ」についてネットで調べると、アメリカ北東部からカナダ南東部原産のカエデの一種で、日本固有の「ハナノキ」の近縁種だと書いてあった。
だとすると、井の頭公園に植えられたこの樹木も日本の「ハナノキ」の可能性が高い、と私は勝手に判断した。
春の芽出し前(3月~4月)に、木全体が赤く見えるほど花をつけるため「ハナノキ」と名付けられた。花は濃い紅色の珍奇な形状であり話題性はあるが美しくはない。
出典:庭木図鑑 植木ペディア
「ハナノキ」という名前にも関わらず、花は美しくなく、紅葉が美しい木なのだ。

一本の木で、赤くなる葉もあれば黄色い葉もある。
青空をバックに見上げると、そのコントラストがとても美しいキラリと光る紅葉の脇役なのだ。
花言葉は「信仰」。
「ハナノキ」 分類:カエデ科カエデ属 特徴:落葉広葉樹・高木 花が咲く時期:4月 実のなる時期:6月
井の頭公園の「ハナノキ」はここ!

「アカシデ(赤四手)」

この季節、御殿山の雑木林を赤く染めるのは、モミジではなく「アカシデ」である。
御殿山の雑木林には樹皮が似た「イヌシデ」の木が多いが、この季節には「アカシデ」と「イヌシデ」の区別がつきやすい。

色づいた葉の下に茶色いものがぶら下がっている。
これはアカシデの「果穂」と呼ばれるものだ。
果穂とは、種子を抱いた果苞(葉が変形したもの)が房状になったものである。

紅葉が終われば落葉し、ミノムシのようなこの果穂だけが枝からぶら下がって冬を越すことになる。
花言葉は「装飾」。
「アカシデ」 分類:カバノキ科クマシデ属 特徴:落葉広葉樹・高木 花が咲く時期:4〜5月 実のなる時期:8〜9月
井の頭公園の「アカシデ」はここ!

「ドウダンツツジ(灯台躑躅)」

神田川沿いで赤く色づいていたのは「ドウダンツツジ」。
小さな可愛らしい花が咲くのは知っていたが、秋にはこんなに赤く染まるのだ。

よく見ると、赤い葉の間からいくつもの実が突き出していた。
「灯台躑躅」という和名の由来はこうだ。
「ドウダン」は、枝分かれしている様子が昔、夜間の明かりに用いた灯台(結び灯台)の脚部と似通っており、その「トウダイ」から転じたもの。
出典:ウィキペディア
中国語では「満天星」と呼ばれ、日本でもこの漢字が当てられることも多い。

可憐な白い花と真っ赤な紅葉。
「ドウダンツツジ」が、生垣として愛用される理由が理解できた気がした。
花言葉は「上品」「節制」。
「ドウダンツツジ」 分類:ツツジ科ドウダンツツジ属 特徴:落葉広葉樹・低木 花が咲く時期:4〜5月 実のなる時期:10〜11月
井の頭公園の「ドウダンツツジ」はここ!

「ハゼノキ(櫨の木)」

神田川沿いで「ドウダンツツジ」の上で紅葉していたのがこちら、「ハゼノキ」である。
ろうそくの材料となるほか、天皇の装束「黄櫨染御袍」の染料としても使用されるウルシ科の樹木だ。

「ハゼノキ」の紅葉の特徴は、全体が緑の中で一部だけ赤い葉が出てくるところから紅葉が始まることだ。
さらに進むと、緑の枝と赤い枝が半々になっていき、やがて木全体が赤く染まる。
紅葉のピークはまだこれから。
12月になれば、「櫨紅葉(ハゼモミジ)」と呼ばれるほどの美しい紅葉が楽しめるだろう。
花言葉は「真心」。
「ハゼノキ」 分類:ウルシ科ウルシ属 特徴:落葉広葉樹・高木 花が咲く時期:5〜6月 実のなる時期:9〜11月
井の頭公園の「ハゼノキ」はここ!

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