<きちたび>北海道の旅〜函館2022②🇯🇵 「温泉旅館 銀婚湯」で野趣あふれる北海道の秋を満喫する

🇯🇵北海道/八雲町 2022年10月22~23日

今回の函館旅行のメインイベントとして友人が用意してくれたのが、道南の秘湯「銀婚湯」への1泊旅行だった。

旅行といえば自分で一生懸命ガイドブックと格闘し行き先を決めるのが私にとっての常識だが、今回は学生時代の悪友たちとの団体旅行。

だから行き先も日程も友人にお任せ、彼の車に乗って連れて行ってもらうだけなのでどうもいつもと勝手が違う。

旅行2日目の22日、天気をチェックしていた友人が「今出れば大沼が晴れているので出発しよう」と突然予定を変更した。

函館の北にある紅葉の名所「大沼国定公園」には23日に行く予定だったが、朝食を済ますとすぐに家を出てまず立ち寄ったのは「城岱牧場展望台」という山の上だった。

標高500メートルのこの展望台からは函館の街が見下ろすことができる。

こうして眺めると、函館山がまるで江ノ島のように見え、津軽海峡を睨む拠点として列強が重要視したことがわかる。

展望台の周辺は町営牧場となっていて夏には牛が放牧されるのどかな風景が見られるそうだが、私たちが訪れた際にはすでに牛たちの姿はなく、紅葉もピークを過ぎて寒々しい景色となっていた。

展望台から山を下り、遠くに駒ヶ岳の独特の姿が見えてきた。

時間は10時50分、ここで友人があることに大事なことに気づいた。

翌日に予定しているバーベキュー用の肉を解凍してくるのを忘れたというのだ。

関西に住む友人から送られた厚さ4センチの立派な神戸牛のステーキ肉が冷凍庫に入ったままになっていて、予定通り温泉から戻った後ではバーベキューまでに解凍が間に合わないと焦り始める。

予定では大沼周辺で1時間ほど紅葉狩りを楽しんで、12時すぎに鉄道で到着するもう一人の仲間と合流することになっていた。

迷った末、高速道路で函館まで往復し肉を冷凍庫から取り出して解凍することを選んだ。

山道では時間がかかったが、高速道路を使えば大沼から函館までは30分ほどで戻ることができ、時間通り大沼公園駅に到着する仲間をピックアップすることができた。

大沼ではまず友人オススメの「山川牧場」のソフトクリームを食べることに。

山川牧場は明治時代に創業した歴史ある牧場で、現在140頭の乳牛が飼育されているという。

牧場のソフトクリームといえば北海道のマストアイテム。

あっさりとした味でハズレなしだ。

少し離れた場所には同じ山川牧場が経営する「山川ファームモータウンファクトリー」があって、この店の「ローストビーフサンド」(1100円)をこの日のランチにすることにした。

山川牧場では、ジャージー牛と黒毛和牛を掛け合わせた「ジャー黒牛」に飼育もしていて、この希少な牛肉を使ったローストビーフは柔らかくて予想より遥かに美味しかった。

食後は、紅葉を楽しみながら大沼の湖畔を車で一周。

その頃には晴れ間も広がり、湖の向こうに駒ヶ岳の勇姿がくっきりと望めた。

大沼と駒ヶ岳といえば、学生時代ヒッチハイクで立ち寄ったことがあり、「日本にこんな美しい場所があるのか」と感動したことを思い出す。

駒ヶ岳は江戸時代の1640年に大噴火を起こし、山体崩壊によって山頂部が崩れ現在のような独特な姿になった。

この噴火まではおよそ5000年間活動を休止していて、その美しい山容から「渡島富士」と呼ばれていたというから火山というのはわからないものだ。

大沼を後にした我々はさらに北上して、目的地の「銀婚湯」に到着したのは午後2時すぎだった。

予定ではチェックインの1時には着きたいと言っていたので、1時間遅れということになる。

八雲町上ノ湯にある「温泉旅館 銀婚湯」。

すっかり紅葉した林の中にその宿は静かに佇んでいた。

温泉の由来が書かれた立札が立っていた。

銀婚湯温泉は、落部川中流の中州より湧出する道南屈指の名泉として広く知られています。

当温泉の発見はかなり古く、先住民族が狩猟のおりおりに汗を流し、時には療養のために常浴していたようです。しかし、戊辰の役に榎本武揚率いる幕軍の負傷者を湯治させて顕著なる効能があったというので、一躍有名になった温泉でもありました。当時は熊笹で覆った掘立小屋程度の湧出の少ない山中無人の山湯だったのでしょう。

大正14年5月、七飯峠下の川口福太郎、志あって中州を開掘し、熱湯大量湧出に成功し、温泉宿建設に夢をはせたものでした。ときあたかも大正天皇銀婚の佳日にあたり、妻トキの発案で、そのお目出度いお祝いに自分たち夫婦の銀婚式を重ね合わせて銀婚湯と命名したのです。

なるほど「銀婚湯」というめでたい名は、大正天皇に由来しているのか。

歴代天皇の中でも夫婦円満で子宝に恵まれたことで知られた大正天皇。

この絶妙のネーミングによって、今でも多くの銀婚カップルだけでなく、新婚のカップルもこの辺鄙な宿に足を運ぶのだそうだ。

銀婚湯は「日本秘湯を守る会」の登録宿でもある。

とはいえ、建物は比較的新しく掃除も行き届いていて気持ちがいい。

ここで新千歳空港からニセコ経由で来た仲間3人とも合流し、総勢9人が揃ったことになる。

私が案内されたのは2階の広々とした和室。

洗面所やトイレも2人が同時に使える広さで、ここに男5人で泊まる。

窓の外にはちょうど見頃の紅葉が広がる。

ピークは数日から1週間ほど前かもしれないが、ほぼベストなタイミングで予約してくれた友人に感謝だ。

温泉に着いたらすぐに浴衣に着替える。

羽織もタオル類も真新しくて気持ちがいい。

銀婚湯には立派な内湯もあるが、なんと言っても名物は5つの貸切野天風呂を楽しむ宿泊客専用の「隠し湯めぐり」である。

それぞれの貸切風呂には鍵があり、先着順でフロントに用意された鍵を受け取って屋外の風呂に向かう。

1万坪とも言われる広大な庭の中に、5つの源泉があり、そこに手作りの貸切風呂が設てあるという。

果たしてどんなお風呂なのか、すぐにでも鍵をもらって飛び込みたかったのだが、私たちがチェックインするのが遅れたためすでに5つの鍵は全て貸し出されてしまっていた。

仕方なくフロントで予約して、順番が回って来たらすぐに部屋に電話をもらうことになった。

30分ほど待って、ようやく電話がかかってきた。

仲間3人と連れ立って最初の隠し湯に向かう。

途中の庭は見事だった。

落葉した葉は適度に片付けられ、風情のある紅葉の景色が堪能できる。

人工的すぎもせず、かといって自然のままでもない。

私たちに最初にあてがわれたのは「かつらの湯」。

川の手前にある2つの隠し湯のひとつで、その名の通りカツラの林の中に古い木を組んで作られていた。

それは実に野趣あふれる湯船だった。

この岩風呂、駒ヶ岳から35トンもの巨石を運び入れ、従業員たちが岩を削って作ったものだというから驚きだ。

男3人で入るとぎゅうぎゅうの大きさだが、開放的で気持ちがいい。

ただ残念なのは、見上げるカツラの木がすでに落葉していたこと。

カツラの葉は黄色く色づいて美しいが、他の木に比べて早く葉を落としてしまうのだ。

次に空いたのは「もみじの湯」。

こちらは川の向こう側にあり、激しく揺れる吊り橋を渡って行かなくてはならない。

友人のひとりはこの橋が怖くて、風呂に行くのを断念したほどだ。

橋を渡ると、モミジや白樺の林が広がっていた。

このあたりはちょうど紅葉真っ盛りで、宿の周辺よりも一段とモミジが美しかった。

川沿いに少し歩くと、宿泊者専用と書かれた「もみじの湯」があった。

丸太を組んで作られた素朴な入り口、薪を積み上げて通路を作ってある。

こちらも岩をうまく利用した湯船で、先ほどの「かつらの湯」に比べて多少大きさがある。

従業員がみんなで一年がかりで作ったお風呂だそうだ。

目隠しの先には川が流れていて大自然に抱かれながら温泉に入る喜びを感じられるお風呂だ。

その名前の通り、大きなモミジの木があって、湯船に浸かって上を見上げると頭上に美しい紅葉が広がっていた。

これは、最高だ。

北海道までわざわざやって来た甲斐がある。

残る3つの隠し湯も見てみたいと思ったが、日が暮れる前に貸し出しがストップするため、この日の隠し湯めぐりは2つで打ち止めとなった。

隠し湯の後は内湯に入って体を洗い、さっぱりしたところで夕食となった。

特別高級な食材があるわけではないが、鍋を中心にちょうどいい量だ。

当然すぐに酒盛りも始まり、北海道産の昆布を使った昆布焼酎というものを初めていただいた。

部屋に入ってからも、ニセコ組が買ってきた北海道産の日本酒を次々に開けて、悪友たちとの酒盛りは深夜まで続いた。

翌朝は6時から隠し湯の鍵の貸し出しが始まる。

受付に鍵が並べられていて、宿泊客は先着順で好きな鍵を選ぶことができる。

私が6時すぎにフロントに行ってみると、ひとつだけ鍵が残されていた。

友人2人と共に再び吊り橋を渡り、白樺の林を抜け、宿から10分ほど歩いて一番通り隠し湯を目指す。

私が入った3つ目の隠し湯は「トチニの湯」。

「トチニ」とはアイヌ語でトチノキを意味し、この湯の周辺にトチノキが多いことから名付けられたらしい。

扉をくぐると、川の流れをバックに美しい紅葉が広がっていた。

一瞬どこが湯船だかわからないような自然そのものといった隠し湯である。

「トチニの湯」の売りはこの太い丸太をくり抜いた湯船。

お湯の注ぎ口も自然の木で作られていて、まさに自然に溶け込んでいる。

丸太風呂といっても大人2人が向かい合って入れる大きさがあり、川のせせらぎを聞きながら頭上の紅葉を愛でる「銀婚湯」でも最高の隠し湯だと感じた。

「トチニの湯」には丸太風呂とは別に川を望むもう一つの湯船がある。

丸太風呂の湯は温度が低いのに対し、こちらは比較的熱い湯が流れていて、丸太風呂にじっくり浸かった後にこちらのお風呂で温まってから上がるのが良さそうだ。

いずれにせよ、「トチニの湯」の源泉濃度は銀婚湯でもナンバーワンだそうで、この宿に泊まるなら絶対に入るべきお風呂だと思う。

3つ目の隠し湯を味わった後、宿に戻ると、フロントに隠し湯の鍵が2つ残っていた。

欲張ればもうひとつぐらい別の隠し湯に入ることもできるが、もう十分だと思った。

男女入れ替わりで前日とは異なる内湯に入って頭を洗い、これで温泉は終了。

温泉三昧、紅葉三昧の銀婚湯を心から堪能した。

朝ごはんも美味しくて、思わずご飯をお代わりしてしまった。

味噌汁の具は「みみのり」という海藻。

「銀杏草」という名前だそうで、北海道の日本海側でしか採れない仏の耳の形をした珍しい海藻である。

3月初旬の寒い海で、宿の従業員たちが自ら採ってきたものだという。

朝食後、しばらくゴロゴロしてからチェックアウト。

全国旅行支援の対象となったため、宿泊費は40%の割引となり、1人1000円のクーポンは全て酒代として使うことにした。

その結果、1泊2食付きで1人1万2000円ほどの支払いとなり、とてもリーズナブルな値段で最高の温泉を楽しむことができた。

心配したほどの二日酔いもなく、2台の車に分乗して、それぞれのルートで函館を目指す。

私たちのチームは帰り道、道南屈指のビューポイントと言われる「生地曳(きじひき)山」の展望台に立ち寄った。

明治時代、この山から木を切り出したことから名前がついたというが、この山頂からは、南に函館市街地、東には大沼と駒ヶ岳が一望できる。

この日は雲の多めの天気だったが、前日に訪れた大沼の全景がはっきりと確認できた。

大沼の向こうには噴火湾とも呼ばれる「内浦湾」が広がり、天気が良ければニセコの羊蹄山まで望むことができるそうだ。

北海道では家から少し車で走るだけで、素晴らしい大自然に遭遇できる。

それを実感した1日半の小旅行であった。

「温泉旅館  銀婚湯」
住所:北海道二海郡八雲町上ノ湯199
電話:0137-67-3111
http://www.ginkonyu.com/

北海道の旅

コメントを残す