久しぶりに新宿に行ったついでに、どこか老舗でランチを食べようと思った。
個人的にはどうも新宿という街があまり好きではなく、社会人になってからほとんど新宿のお店に行った記憶がない。
それだけに、逆に新鮮でもある。

選んだのは、大正10年創業のとんかつの老舗「王ろじ」である。
大正10年創業ということは、今年でちょうど100周年。
しかも、ここが「とんかつ」発祥の店という説もある(諸説あり)。
伊勢丹やビックロに隣接する一等地の路地裏にあって、いつも行列が絶えない人気店だそうだ。

だからわざわざ昼メシ時を外して、午後2時過ぎに訪ねてみたのだが、やっぱり行列ができていた。
若いカップルが多い。
そして回転は悪い。
ランチタイムは午後2時半までのようだが、果たして入れるのだろうかと心配しながら列の最後尾に並んだ。

案の定、午後2時半になっても行列はほとんど進んでいなかった。
すると店の中から一人の店員さんが出てきて、看板の電気を消した上で列の最後尾に立った。
ということは、2時半までに並んだ客は全員店内に入れるということのようだ。

結局、店の中に入れたのは午後2時37分だった。
行列に並んで30分以上。
コロナで外食もほとんどしていなかっただけに、2年ぶりの行列だった。

店内はすっきりとしたインテリアで、ゆったりとテーブルが配置してあった。
私はカウンターに案内されたが、地下にも席があるようで、「地下にどうぞ」と案内されて階段を降りていく客も多い。
それにしても、外で待っている間に、すっかり体が冷えてしまった。
席につくなり運ばれてきた温かなお茶がありがたい。

カウンターの目の前は厨房となっていて、大将と弟子の2人が調理にあたっている。
接客のおばさんともう一人かなり高齢のおばあさんが厨房も手伝っていた。
おばさんに聞くと、「王ろじ」は神楽坂で創業し、新宿のこの場所に店を構えたのは戦後の話だという。
今年創業100周年というのは確かだが、何月に創業したのかはわかっていないそうだ。

メニューを見ると「とんかつセット」と「エビフライセット」がメインのようだが、客の大半は「とん丼」と呼ばれるカツカレーを注文するという。
メニューの下には「とんかつ、とん丼は揚げるのに13分程度時間が要します」と書かれており、事実、「とん丼」が運ばれてくるまで16分ほどかかった。

その間、お茶と一緒に運ばれてくる「王ろじ漬」をつまみながら待つことになる。
さっぱりしたお漬物だ。

そしてお待たせしました。
こちらが伝統の味「とん丼」(1150円)である。
器の大きさはさほど大きくはない。
ちなみにこの器、なぜか丼の部分と下のお皿の部分がくっついている特製の器のようだ。

ご飯にカレーがかかっていて、その上に3つにカットされたとんかつが並べられている。
普通のカツカレーとは違い、とんかつにはあらかじめソースがかかっている。
特徴的なのはとんかつの衣がとてもサクサクしていること、そして中身の肉がとても柔らかいことだ。
これほどサクサクした食感の衣は食べたことがない。

先にとんかつを食べると、下からカレーのかかったご飯が出てくる。
とんかつは美味しいのだが、カレーは普通で、ご飯はちょっとベトベトした感じがした。

一度は味わってみたい老舗のカツカレーだが、30分以上並ぶほど美味しい印象はない。
ひょっとすると、「とん丼」ではなく普通の「とんかつセット」を注文した方が美味しいのではないかと感じながら店を出た。

店の壁には作家・柴田錬三郎さんのこんな色紙がかけられていた。
好店三年 客をかえず
好客三年 店をかえず
為 王ろじ 柴田錬三郎
食べログ評価3.68、私の評価は3.30。
「王ろじ」 電話:03-3352-1037(予約不可) 営業時間:[火] (火曜日夜営業無し)11:15~14:50 [木〜月]11:15~14:30/17:30~20:20 定休日:水曜