お気に入りだった吉祥寺の中華料理店「翠蘭」が8月末で閉店したというニュースを知ったのは、今月に入ってからだろうか。
調味料をいろいろ料理を警戒して、中華料理を敬遠することが多い妻も「翠蘭」はとても好きだったので、我が家としてはとてもダメージが大きい。
「聘珍楼」や「銀座アスター」などの高級中華はどうも妻の好みではなさそうなので、三男の手伝いをして自宅に戻る前、私は妻を一軒の中華屋に誘ってみた。

吉祥寺駅南口、雑居ビルの3階にある「中国家郷飯 吉祥菜館」。
平成10年創業というから、もうかれこれ四半世紀この場所で店を構える老舗中華料理店である。
ずいぶん昔、妻を一度だけ連れてきたことがあるが、その時の印象はさほど芳しくはなかったようだ。

エレベーターを降りると、ちょっと貧乏くさい扉が待っている。
私のようなオヤジには入り易いが、女性好みというには程遠い。

店に入ると、賄いを食べているおばさんが一人だけ。
ちょっと時間が早いのもあるが、昔ながらの円卓が3つもあるゆとりのスペースだが、私たちが最初の客のようだ。
それでも、窓際のテーブルに座ってメニューを見ていると、1組、また1組と客が入ってきて、4人掛けのテーブルはほぼ埋まってしまった。
妻も「昔より綺麗になったみたい」と言い、多少印象が改善したようだ。

「中国家郷飯」とわざわざ名乗るように、この店の特徴は本場の中国料理が味わえること。
メニューを開くと、豊富な料理が中国風の野暮ったい盛り付けで並んでいる。
オーナーも従業員も中国人らしく、接客も日本的なものではなく愛想のない中国風。
だけど私は、まるで中国に来たようだと感じて嬉しくなるのだ。

私がまず注文したのは、「蒸し鶏のネギソースかけ」(580円)。
前菜もボリュームたっぷり。
この量で580円は安い。
中国で食事をすると、そのボリュームの多さにいつも驚かされるが、この点でもこの店の料理は中国的である。
日本の中華料理に感じる繊細さはないものの、食べればとても美味しくて、妻と2人で食べても十分満足できる一品だ。

前菜の後のメインとして注文したのは「北京ジャージャー麺」(800円)。
「ジャージャー麺」は学生時代にキャンパス近くの中華料理店でよく食べていた思い出のメニューだ。
個人的にはもう少し辛味があった方が好みだが、甘口の肉味噌も悪くはない。

一方妻は、ホワイトボードに書かれていた「おススメ」の中から「アスバラとホタテ炒め」(1280円)をチョイス。
アスパラのことを「アスバラ」と表記してあるあたりも、ちょっと外国に来た感じがして個人的には好感が持てる。
ただ、上海料理と思しきこの炒め物は味付けがイマイチで、お酢をかけていただいた。
選ぶ料理によって当たり外れが大きいのも、中国的といえば中国的である。

ものすごく美味しいというわけではないが、北京、四川、広東、上海という中国の4大料理が手頃な値段でいただける「吉祥菜館」。
個人的には好きなお店である。
「翠蘭」がなくなった吉祥寺で、今後利用頻度が高まることも予想される。
食べログ評価3.44、私の評価は3.60。
「中国家郷飯 吉祥菜館」 電話:0422-41-0628 営業時間:11:00~翌0:00 定休日:無休 https://akr3442773276.owst.jp/