<ご当地グルメ>岡山「ダンケ」の「モーニングセット」

東京では昔ながらの喫茶店というのがずいぶん少なくなってしまったが、岡山にはまだ昭和の香りそのままに営業している喫茶店がいくつも残っている。

歳をとったせいか、近頃妙にその手の喫茶店に入りたくなる。

今朝、宿泊先のホテルをチェックアウトし、空港に向かう前に近くの喫茶店でモーニングを食べてみることにした。

ホテルを出た目の前に建つ「岡山シンフォニーホール」。

目指す喫茶店は、この建物のすぐ裏手にあった。

そこは古い雑居ビルで、前の通りを歩いていても、このビルの2階に喫茶店があることさえ気づかない。

昔は岡山市でも一番賑わった商店街の近くとはいえ、路上に目立った看板もなく、知らない客がふらりと入ってくるような場所ではないと思われる。

エレベーターでビルの2階に上がると、地味な印象のドアがあった。

お店の名前は「ダンケ」。

今と比べると、昔の日本ではドイツ語の店名をつけることは珍しくなかった気がする。

店内に入ると、まるでタイムスリップしたような空間が残っていた。

緑の革張りソファー。

スピーカーからはスローなジャズが流れている。

カウンターの陰に、一人のおばあさんが座っていた。

「モーニングできますか?」と尋ねると、「7時半から」と言いかけて「もう7時半ね」と自分で合点し、「トーストとサンドイッチどちらにします?」と質問された。

私はサンドイッチとホットコーヒーを頼んだ。

店の一番奥の窓際のソファー席に座る。

外から見るとそっけないビルだが、店内には不思議な居心地の良さがある。

今時珍しい「全席喫煙可」のお店で、ほのかにタバコの香りがした。

私は開店時間の7時半に合わせて店に入ったので一番乗りのはずだが、店内ではすでに2人のお年寄りが別々に食事をしていて、常連さんなのか家族なのか、いずれにしても通常の客とは別扱いの存在がいるようなお店なのだ。

私が珍しそうに店内を見回していると、予想外に早くおばあさんの女主人がモーニングを運んできた。

素朴なミックスサンドと普通のコーヒー。

当然、お砂糖は壺に入っている。

銀のミルク入れというも近頃見かけなくなった。

サンドイッチは、薄切りのパンにゆで卵とキュウリ、トマトが入っている。

ただ、あまり味がしない。

マヨネーズやマスタードのような濃い味付けが一切なく、私には少々物足りない。

コーヒーも、かなりアメリカンな感じで、私には少し薄かった。

それでも、この店に来て良かったと思える雰囲気はある。

本当ならこのソファーに腰かけたまま何時間も過ごしても怒られなさそうなお店なのだが、あいにく空港に行かねばならぬ。

さっさとサイドイッチを平らげて、10分ほどで店を出た。

お勘定の際に初めて、サンドイッチのモーニングセットの値段が600円だということを知る。

「お店もう長いんですか?」と聞くと、「長いなんてもんじゃないわよ。言いたくないぐらい。あなた生まれてなかったんじゃない」と女主人が答える。

常連さんらしき男の人が隣から「もう60年ぐらいになるんじゃない」と口を挟んだ。

「60年前ならもう生まれてますよ、昭和33年だから」と答えると、女主人は「若くていいわね」と妙なリアクションを返してきた。

なんだか朝からホッとするような、気持ちがちょっとほぐれたような気がした。

食べログ評価3.27、私の評価は3.20。

「ダンケ」
電話:086-232-4836
営業時間:7:30~18:00
定休日:年末年始

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