三男に初めての赤ちゃんが誕生した日。
病院のある茨城県土浦のホテルに一泊し、夕方、駅近くの居酒屋さんにお祝いに出かけた。

少し薄暗い路地裏に立つ居酒屋の名は「うまい家」。
鮮魚のうまさで評判の老舗居酒屋とネットには書いてあったが、想像に反してとてもきれいで高級中華料理店のような外観だった。

まさに夕立が降り始める直前に飛び込んだ店内は、やはり居酒屋と呼ぶにはふさわしくない造りであった。
入り口近くにわずかなカウンター席があり、それ以外はずらりと個室が並んでいる。
2卓ずつ仕切られているが扉を開ければ大人数での宴会ができる構造だ。

掘り炬燵の席につくと、元気の良いおばさんがお通しを持ってきてくれた。
マグロの赤身をヌタのようにしたものだ。

私と三男は生ビールを注文し、本日のおすすめの中から「うまい家名物鯛のしゃぶしゃぶ」(2人前2700円)を注文する。

さらに定番メニューからはお店のおすすめ「お刺身の盛り合わせ」(2人前3080円)などを適当に頼む。
隣の席に置かれた豪快なお刺身盛りがあまりに美味そうだったからだ。

まずは三男が注文した「梅水晶」(550円)が運ばれてきた。
サメの軟骨から作るおつまみの梅水晶は私の好物であるが、どうやら息子も好きなようで、一緒に飲むことはほとんどないのに面白いところが似るもんだと思う。

すぐに「お刺身の盛り合わせ」もやってきた。
2人前だと大皿に隙間ができてお隣のような豪快さは見られないが、一切れ一切れの刺身が全部大きくて食べ応えがある。
魚は地魚ではなく全部豊洲で仕入れているらしい。
でも店の看板メニューは文句なく美味い。

「鯛のしゃぶしゃぶ」はおばさんがテーブルに来て自ら丁寧に調理してくれる。
たっぷりの野菜を煮た鍋の中に、鯛の切り身を一つずつ通してタレと共に各自に配っていく。

タレはポン酢とごまだれ。
どちらも柑橘の酸味が効いていた。
大口にカットされた鯛は脂ものっていて食べ応えがある。

妻が注文した「新さんま焼」(800円)は今年のサンマを象徴するような痩せた姿で登場した。
予定日よりも1ヶ月半も早く生まれてきた赤ちゃんのように細いサンマを見ながら、妻はおばさんに「今日赤ちゃんが産まれたんです」と早産だったことを話すと、おばさんは「私も・・・」と言って自らの出産体験を語って聞かせてくれた。
「女の人はみんな命懸けで子供を産むのよ」とおばさんは新米パパになった三男に諭すように語った。

もうこの辺りでお腹がいっぱいになったが、ここで三男が注文した「わらじコロッケ」(750円)がやってきた。
その大きさに「これはもう無理だ」と思いつつも、美味そうなのでついつい食べてしまう。
もう、お腹がはち切れそうだ。

ところが、このタイミングでお店からの出産祝いが届けられた。
「鯛のかぶと焼」。
通常なら1つ900円のする一品、しかもこれが2つもテーブルに置かれたのだ。
ありがたいのだが、残念ながらこの大きな鯛の頭をきれいに食べるだけのお腹はもはや残っていない。
それでも頑張っていただくと、適度な塩味がついた柔らかな鯛の身は思いのほか胃袋に収まっていった。
やっぱり地方には東京とは一味違った人情店がある。
とてもいい出産祝いの席となった。
食べログ評価3.60、私の評価は3.70。
「うまい家」 電話:050-5596-3766 営業時間:17:00~24:00 定休日:不定休 https://umiaya2021.owst.jp/