今日から4月。
岸田内閣肝入りの「こども家庭庁」が発足したり、自転車のヘルメット着用が「努力義務」になるなど、いろんなことが少しずつ変わっていく。

今日は朝から天気が良かったので最後の桜を楽しもうと井の頭公園をひと回りしてきた。
東京の桜は今年とても早くに咲き始めたので、もうすっかり盛りは過ぎて、池には花筏が広がっている。
今年の3月の平均気温は全国的に観測史上最高で4月上旬並みだったそうで、そのため軒並み平年よりも1〜2週間も早く桜が満開を迎えたらしい。
それでも東京ではこのところずっとお天気が悪かったため、昼が近づくにつれて多くの人が井の頭公園に押し寄せて、名残惜しそうに葉桜の下の花見で盛り上がっていた。
考えようによっては、花吹雪の中での花見もこれまた風流である。

井の頭池周辺のソメイヨシノはもうかなり散っている。
その代わり、周囲の木々も美しい新緑に染まり、それはそれで美しい。
そもそも花見客の目当ては、桜というよりも屋外での宴会なので、桜が散っても晴れて暖かいのが何よりなのだろう。

井の頭公園の桜の特徴は、ボートに乗って水上から桜を楽しめること。
今日は朝から全てのボートが出払って順番待ちの長い行列もできていた。
この光景、いつ以来だろう?
真面目な日本人の多くは今もマスクを外さないものの、すっかりコロナ禍は過去のものになりつつあるようにも見える。

花見を目当てに訪れる観光客が井の頭池の周辺に集まるのに対して、地元の人たちはさまざまな桜が咲く西園で花見を楽しむ。
こちらの桜は早咲きのカワヅザクラから遅咲きのウワミズザクラまで、3月初めから4月下旬まで楽しめる。

中央にあるソメイヨシノやオオシマザクラはすでにピークを過ぎてしまったが、まさに今が盛りの桜もある。
たとえば、こちらの「ヤエベニシダレ」。
近頃、枝垂れ桜もいいなと思うようになり、岡山の畑に1本植えてみようかなどと考えている。

少し花びらが黄色い「ウコン」もお気に入り。

白い「オオシマザクラ」も好きだが、八重の「シロタエ」も美しい。
今日のお昼はコンビニでおにぎりなどを買って、妻と2人、西園でささやかな花見ランチを楽しんだ。

美しい花といえば、ちょっと残念なニュースがあった。
箱根にある「星の王子さまミュージアム」が3月末で閉園してしまったのだ。
実はこのミュージアム、私もテレビ局で事業部長を務めていた頃に多少関わった縁があり、閉園のニュースを聞いて少し残念な気持ちになった。

あれは2009年のことだった。
強烈な台風が箱根を襲い、ミュージアムの建物の一部が危険な状態になってしまった。
多額の費用を費やして元の状態を復元するか、それとも取り壊すかの判断を迫られた。
ミュージアムの運営など初めての経験だったので迷った末、危険な建物は取り壊すことを決断した。

代わりに考えたのが、取り壊した箇所に美しいお庭を作ることだった。
建物は変わらないが庭は季節ごとに変化する。
一年一年成長して、リピーターの人を増やしてくれると考えたのだ。

とはいえ、私にはその方面の知識が全くなかった。
そこでガーデニング好きの妻に聞いたところ、一人のガーデンデザイナーの名前を教えてくれた。
吉谷桂子さん、当時は新聞にも連載を持つ人気のデザイナーさんだった。

早速、吉谷さんに連絡を取りミュージアムの庭づくりを依頼。
快く引き受けてもらった。
そうして湿気の多い箱根で南仏をイメージしたヨーロピアンガーデン作りが始まったのだ。
今思えば、私が植物に興味を持つようになったのはあのプロジェクトがきっかけだった気がする。

その後、私は再び報道の現場に戻り、ミュージアムとの縁は切れてしまったが、私が手がけた吉谷さんのヨーロピアンガーデンは成長を続け、閉園までミュージアムに新たな魅力を加えてくれた。
星の王子さまの物語の中で重要なキャラクターを務めるのがバラ。
吉谷さんの庭づくりでもバラは中心的な花としてミュージアムのシンボルとなった。

去年の末、少し余裕ができて久しぶりに吉谷さんのお庭を見にミュージアムを訪ねてみようと公式サイトにアクセスした時、初めてミュージアムの閉園を知った。
あの庭が最終的にどんな姿になったのか、自分の目で確認することができなかったのは残念だ。
でも、あの経験は無駄ではない。
今度は自分で、妻と一緒に岡山の畑でいろいろな植物を育ててみたい。
ただの畑ではなく、果樹や花が季節ごとに楽しめる自分好みの「食べられるガーデン」を目指すつもりだ。
どんな経験もプラスに考えれば、何かの役に立つ。
「星の王子さまミュージアム」での短い経験は、私にそんなことを教えてくれた。