🇫🇮フィンランド/ヘルシンキ 2019年8月2日
ヘルシンキに新しく完成した中央図書館「Oodi」。
そこは、これまでに見たことのないような素敵な図書館でした。
帰国後、その図書館が2019年の「Public Library of the Year(公共図書館オブ・ザ・イヤー)」に選ばれたというニュースを聞きました。
世界から注目される「フィンランド教育」を体現したような「ヘルシンキ中央図書館 Oodi」をご紹介しましょう。
偶然見つけた建物
フィンランドの首都ヘルシンキに到着した日、宿にチェックインした私たち夫婦は食料の買出しがてら近所を散歩しました。

私たちの宿は、ヘルシンキ中央駅近くの再開発エリアにあり、目の前が大きな公園になっていました。

真新しい遊具で子供たちが遊び・・・

イスラムの衣装に身を包んだ女性たちも子供たちとバスケに興じていました。

その公園から見て、ちょっと気になるものがありました。
このサーカーコートではありません。
後ろに見える、真新しい建物です。

無機的な外観ですが、よく見るとテラスのようなところがあり、人影が見えます。
「あそこは、何だろう?」

買い物の後で訪ねてみると、そこは素敵な図書館だったのです。
ヘルシンキ中央図書館「Oodi」
ある意味、この図書館を訪れたのはまったくの偶然でした。
しかも建物の1階に入っても何の施設か見当がつきません。

1階にはカフェがあったり、このような公開収録のスペースがあったり・・・

屋外に出ると、ステージがあって、番組収録の準備をしていたり・・・
ショッピングモールか何かなのかと思って、エスカレーターで上の階に上ってみました。

最上階の3階まで上ってみると、そこが図書館であることが初めてわかりました。
仕切りのないワンフロア全体にゆったりと本が並んでいます。
白い天井がうねるモダンな作りで、大きな窓から差し込む豊かな光が室内を適度な明るさに保っています。

ドーム型のソファーに体を沈め、本を読みふける女の子。
とてもセンスのいい、モダンな図書館のようです。

図書館スペースの端っこは、なぜか床が傾いていて、その上り坂になったフローリングの床に座り込んで時間を過ごしている親子もいます。
何だか、とても「自由」を感じさせる空間です。
「いいな、ここ」
思わず、そんな感想が湧き上がってきます。

でもこの図書館の特徴は、単に建物がユニークなことではありません。
ここでは、20ヶ国語の本を楽しむことができます。
他の図書館では読むことのできない、膨大な種類の雑誌も揃っています。
さらに映画や音楽、ゲームのソフトも豊富の取り揃えていて、無料で楽しむことができるのです。

そして、ありました。
公園から見えたテラスです。
私が訪れたのは夕方でしたが、このテラスに面した席。寒い冬でもきっと気持ちが良さそうです。

テラスに出てみます。
ウッドデッキの上に椅子を並べて、沈む夕日を眺めながら想い想いの時を過ごす人々。

この人など、大きな荷物を持ち込んで、一日こうして好きな本を読みながら過ごしている雰囲気です。
勉強=読むこと
実は、本を読むことは、フィンランド教育の大きな特徴となっています。
フィンランドの教育では、「勉強=読むこと」という意識が徹底されているそうで、子供たちの放課後の過ごし方も、外で遊ぶか、本を読むかというのが主流だといいます。

そしてフィンランド教育の最大の特徴は、初等教育から大学院まで公立・私立を問わず授業料が無料ということです。
教育こそは重要な公共サービスであり、どんな境遇の子供たちにも平等な教育機会が与えられます。
消費税に当たるフィンランドの付加価値税は24%。
その税率の高さには驚きますが、それによってこうした公共サービスが実現するのであれば、一つの選択肢だと思えてきます。
そんなフィンランド教育が、2000年から始まったOECDによる「学習到達度調査(PISA)」でトップクラスの成績を収めたため、俄然世界的な注目を浴びることとなったのです。

この中央図書館「Oobi」が、フィンランドの独立100周年のメインプロジェクトとして完成したのも、教育を大切にするお国柄ということでしょう。
100億円を超える建設費は、ヘルシンキ市と国が支出しました。
ちなみに、「Oobi」とは、フィンランド語で「頌歌(しょうか)」という意味だそうです。頌歌と言われても意味がよくわからず調べてみると、「神の栄光、君主の徳、英雄の功績などをほめたたえる歌」でした。
「Oodi」の小冊子を見ると、その理念の第一に「Equality」、すなわち「平等」を掲げています。
すべての人に、Oodiを利用する権利があります。特別な理由がなくOodiで時間を潰しても大丈夫、むしろおすすめです。
私たちは、人種的偏見や差別を許しません。
「Oodi」小冊子より
そんな「Oodi」の理念、本当の魅力がいっぱい詰まっているのが、2階のスペースです。
図書館オブ・ザ・イヤー
ヘルシンキ中央図書館「Oodi」が、2019年の「Public Library of the Year (公共図書館オブ・ザ・イヤー)」に選ばれたのは、帰国後の8月27日でした。
偶然訪れた図書館が、世界最高の図書館に選ばれるなんて、意味もなくうれしい気分になります。
「Oodi」が他の図書館と大きく違うのは、やはり2階のフロアでしょう。
2階でまず驚くのは、このスペースです。

あえて床を階段状にして、屋根裏部屋のような狭い空間を作っているのです。

床に座り込んでいる人もいれば、寝転んでパソコンに向き合う人もいます。
黒い立方体が適当に転がしてあり、椅子にもなれば机としても使えるという気ままな感じです。

あえて柱を設けて、大空間を適度に仕切っています。
だから、立ったまま歩くことができず、かがんだり、這ったりして自分の居場所を見つけるのです。
それによって、公共の場所があたかも自分のプライベートスペースのように感じられるから不思議です。
とにかく、居心地がいいんです。
だからか、何もせず、床に寝転んで、友達とおしゃべりしている女の子もいました。

「Oodi」が掲げるコンセプトは、「人々が交流するリビングルーム」。
何の目的もなく、ただただ気持ちの良い空間で時間を潰す、それが許される図書館って素晴らしいと思いました。
屋根裏部屋を抜け出して、奥に行ってみると・・・

アイスホッケーの画面を見つめるお父さんがいました。
「何をしてるんだろう?」と思って周囲を見回してみると・・・

ガラスで囲まれた部屋の中で、少年2人がソファーに座ってアイスホッケーのゲームに興じていました。
そして、少年たちを写すカメラも置かれています。

ここが、「ゲームルーム」のようです。
ちなみに、案内板は上からフィンランド語、スウェーデン語、英語の3ヶ国語で表記されていました。
そして、ゲームルームの隣には・・・

簡易スタジオのような設備があります。
どうやら、ここでゲーム実況をしているようです。

少年たちが対戦しているアイスホッケーのゲームに実況をつけて番組化していたのです。
先ほどのお父さんが見ていたのは、ここで制作されたゲーム番組のようです。
この番組がどこかで放送されているのか、インターネットで流されているのか、それとも番組作りを体験する図書館のアトラクションなのかはわかりません。
でも、日本の図書館ではあまりお目にかかれない今風な試みだと思いました。

先に進むと、自由に使える3Dプリンターが並んでいたり・・・

有料で使える大型プリンターがあったり・・・

こちらにあるのは、Tシャツに自分のデザインがプリントできる機械です。

図書館のパソコンは満席。
みんな自分が作りたい物をパソコンでデザインし、設置されている機械を使いこなしてオリジナルグッズを作るのです。
これならいくらいても、退屈することはないでしょう。

こちらは裁縫のコーナー。
ミシンや私にはよくわからない器具が置いてありました。

こちらの小部屋は工作室のようです。
ロボットのようなものが無造作に置いてあります。
人々が新しいテクノロジーに自由に接し、自分だけのオリジナルを作り出す。
これこそが、日本とは違い、フィンランドの教育が注目される理由であり、「Oodi」が世界最高の図書館に選ばれた理由なのでしょう。
フィンランド教育の一番の理念は、誰にでも平等に教育の機会を与えること。
「Oodi」に来ると、それがただのキャッチフレーズでないことがわかります。
ヘルシンキ中央図書館「Oodi」 開館時間: 月-金 08:00-22:00 土-日 10:00-20:00 https://www.oodihelsinki.fi/en/
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吉祥寺@ブログ
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