今日から七十二候の「霞始靆」、「かすみはじめてたなびく」と読む。

我が家のトイレの歳時記カレンダーにも、珍しく同じ読み方でルビがふられていた。
『霞が春景色を彩り始める頃』という意味らしい。
最近すっかり朝が遅くなり、朝日を拝むこともほどんどなくなっていたが、昨日の朝6時半ごろ目が覚めたので、東の空を眺めてみた。

遠くが霞んでいるといえば霞んでいるが、霞んでいないといえば霞んでいないようにも見える。
しかし、日が昇り気温が上昇するに従って、都心方面のビル群が霞んできた。

これは紛れもなく、私がイメージするところの「春霞」である。
ちなみに・・・
「かすみ」とはなんだろう?
ふと、そう思った。
これまで深く考えたこともなかったので、この機に調べてみることにする。

■『デジタル大辞泉』の解説
1 かすみ。もや。
出典:デジタル大辞泉
2 朝焼けや夕焼け。
さらに詳しく・・・
『空気中に浮かんでいるさまざまな細かい粒子のため、遠くがはっきり見えない現象。また、霧や煙が薄い帯のように見える現象』という一般的な「かすみ」のイメージとともに、 『朝または夕方、雲に日光が当たって赤く見える現象。朝焼けや夕焼け』とも書いてある。
ということは、私が撮影した朝の景色も「かすみ」の一種と言えなくもない。

ちょっと違う説明をしているものもある。
■『とっさの日本語便利帳』の解説
空気中に浮かぶ水滴、ちり、火山灰やスモッグ、靄(もや)などにより遠くがはっきり見えない現象。気象学的定義はない。夜の霞が朧(おぼろ)。
出典:とっさの日本語便利帳
キーワードは、『気象学的定義ではない』。
霞は気象用語ではない
「霞」というのは気象用語ではないのだそうだ。
「霞」と似た現象でいえば、「霧(きり)」や「靄(もや)」は気象用語であり、視程1km未満を「霧」、視程1km以上10km未満を「靄」と呼ぶ。
「霞」は、「霧」よりも「靄」に近いイメージだが、気象用語であるかないか以外の明確な違いはあまり書かれていない。
霞は春、霧は秋
季語で言えば、「霞」は春の季語で、「霧」は秋の季語、「靄」は季語では用いられず冬のイメージが強いという。
冷たい空気の中に湿った暖かい空気が流れ込むことによってできるのが「霞」で、暖かな空気の中に冷たい空気が流れ込む時できるのが「霧」ということかもしれない。
昼間は霞、夜は朧
さらに付け加えると、「霞」は昼間、特に朝夕に用いられ、夜になると「朧(おぼろ)」と呼ばれる。
平安時代からこうした使い分けが定着したらしく、平安貴族の風流というか、浮世離れした暇な日常をうかがえる言葉遊びかもしれない。

とはいえ、私も会社を辞めて暇になった途端、その日の空の様子が気になるようになって来た。
特に雲が荒々しく空を彩っているのを見つけると、すぐにカメラを持ち出して写真に収めたくなる。
これは、人間が心の奥底に眠る本性ともいうべきものなのかもしれない。
知れば知るほど、日本語の奥深さを感じる。
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