東京が、昨日ようやく梅雨入りした。
近畿・東海の梅雨入りから1ヶ月、結局今年の梅雨入りは平年より1週間も遅かった。

今日は七十二候の「梅子黄(うめのみきばむ)」に当たるという。
文字通り「梅の実が色づき始める頃」ということだが、すでに店頭には色づいた梅の実が売られていて、先日ブログに書いたように我が家でも妻が梅酒や梅干し作りを済ませている。

梅酒を入れた瓶はまだそれほど大きな変化はないが、梅シロップの方はもう出来上がったらしく、昨日妻は中の梅を全部取り出して残ったシロップを冷蔵庫で冷やした。

見るとうっすらと黄金色に染まっている。
もう梅ジュースとして飲めるようだ。

取り出した梅を使って、妻は梅ジャムを作った。
梅シロップの梅にほぼ同量の砂糖と水を入れて煮るだけ。

あまり煮込まなかったので、サラッサラの梅ジャムが出来上がった。
冷蔵庫で一晩寝かせて翌朝・・・

パンにつけて食べてみた。
さっぱりとした酸味と苦味を感じ、夏にぴったりのジャムである。
すごく簡単で、私もちょっと料理に興味が湧いてきた。

さて、井の頭公園の梅の木はどうなっているのだろう?
ふと気になって、梅雨入りしたばかりの園内をひとまわりしてみた。

御殿山の梅園に行ってみると、一時たくさん実をつけていた梅の木は早い段階で剪定されてしまったため、梅の実はほとんど残っていない。
数少ない実もあまり黄色くはなっておらず、緑のままのものが多いようだ。

中に多少、黄色くなった実もあったが、ごくわずかだ。

梅園から少し北側の高い木々の下にも数本梅の木が植えられているのだが、こちらの梅は色づいた実をつけていた。
種類が違うのだろう、実の大きさがやや小さいようだ。
花の季節が終わり、梅だけでなく、公園を歩くといろいろな樹木に実がついているのを目にするようになった。

西園の端っこに「ビワ」の木を見つけた。
黄色い実をたわわにつけている。

子供の頃、ビワは私の大好物であった。
黄色い皮を手でむいてかぶりつく。
ほとんどが種で食べられる果肉は多くはないのだが、ジューシーでとても美味しかった。

しかし、「ビワ」はスーパーなどでは人気がないらしく、店頭にあまり並んでいないという。
とにかく甘くて種がない果物ばかりがもてはやされる「お子ちゃま」の時代だ。

さくらんぼの季節なので、西園の桜の木もチェックしてみたが、5月ごろにはたくさんの実がついていたのに、この時期にはほとんど消えていた。
鳥たちが食べたのか、人間様が取ったのか、それとも自然に落下したのだろうか?
太宰治が飲み屋で盛られた桜桃をつまみながら、「子供たちに食べさせたら喜ぶだろう」などと考えるシーンを思い出す。
今月19日は「桜桃忌」である。

井の頭池のほとりに植えられた柿の木にも、小さな実ができていた。
もちろん柿は秋にならねば色づかないが、実の先端には朽ちた花の残骸を残したまま、その付け根の部分が膨らみ始めている。

三角公園に植えられた「ハナモモ」の木にも実がなっていた。
まだ緑色のままだが、表面は桃独特の産毛で覆われている。

狩猟採集生活を送っていた私たちの祖先は、どの実がいつ頃食べられるようになるのかを知り、じっと時を待って自然の恵みを得ながら生きてきたのだ。
「もう我慢の限界だ」とすぐに自分を甘やかす現代人は、もう少し「待つ」という祖先の知恵を学ばなければならない。
コロナ禍で最近、つくづくそう思う。

公園を歩くと、私たちに身近な果実以外にも木々それぞれに様々な実をつけている。
たくさんの実を枝いっぱいにぶら下げているのは「エゴノキ」。
秋に熟すが食べると「えごい(えぐい)」味がするため、人間には敬遠された。

果皮には喉を刺激するエゴサポニンという有毒物質が含まれ、誤食すると胃の粘膜がやられて喀血するおそれがある。かつて、痰切りの目的でエゴの実を製薬化したことがあったものの、胃への副作用があり製造は中止となった。また、現在は禁止されているが、実を川上で擂り潰して有毒物質を流し、麻痺した魚を川下で捕獲するという魚捕りの方法があった。実は染料として染物に使われる。
出典:庭木図鑑 植木ペディア
昔の人はとりあえず何でも食べてみた。
食べたうえで、食用に向くか向かないかを判断し、食べられなくても染料など別の用途に利用したのだ。

こちらは「エゴノキ」よりもひとまわり大きな「ハクウンボク」の実。
秋に熟すと、自然に裂けて中から種が飛び出すのだそうだ。
種は油脂が多いが、これを好んで食べる鳥もいるという。

豆のようなサヤをぶら下げているのは「ハナズオウ」。
艶やかなピンクの花からは想像できなかったが、この季節になるとマメ科の植物であることがよくわかる。

毒々しい赤い実をたくさんつけているのは「ウラシマソウ」。
春の花も異様だが、秋に熟す実も個性的だ。
虫を触媒として使い花が終わると緑の実をつけ、それが次第に朱色に変化していく。
未成熟の果実は有毒のシュウ酸化合物等を含有するが、成熟すると甘くなり鳥たちのエサとなって種を遠くに運んでもらうのだ。

様々な工夫で子孫を残そうとする植物たち。
梅雨の訪れとともに、井の頭公園ではキノコやコケなどが目立つようになってきた。
私の植物観察も、どんどんマニアックになりつつあるようだ。
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