朝、久しぶりに会社の夢を見て、不快な気持ちで5時に目が覚めた。

久しぶりに見る、夜明け前の光景。
今日も快晴だ。
最近やたらと眠たくて、先日は朝7時すぎまで寝て起きて、朝食を食べたらまた眠くなって朝寝をしてしまったほどである。

今朝も再びベッドに入ると2時間ほど眠り、起きて外を見ると遠くの煙が上がっていた。
川崎市の二子新地近くの住宅街で、メッキ工場が焼けたらしいということを昼のニュースで知った。
火事の煙を見たのは、いつ以来だろう?

さて、今日から二十四節気の「穀雨」。
「春の雨が田畑を潤し、穀物の成長を助ける」そんな季節となった。
といっても、今日の東京は終日快晴で、今年初めての「夏日」となる予報だ。
まだ「立夏」には早いというのに、井の頭公園もすっかり初夏の様相である。

「穀雨」の初候は『葭始生』という。
カレンダーには「よしはじめてしょうず」とルビがふられていたが、一般的には「あしはじめてしょうず」と読むらしい。
「ヨシ・アシが芽を出し始める頃」という意味のようだが、「ヨシ」と「アシ」はどう違うのか?という疑問が私の中に浮かぶ。

この疑問に答えるべく、これまでノーチェックだった水辺の植物について調べてみると、まさに知らないことの連続だった。
そもそも、「ヨシ」と「アシ」はどう違うのかと思って調べてみると、これが何と同じ植物のことだと知った。
和名ヨシの由来は、もともと本来の呼び名はアシであったが、「悪し」に通じるため、「ヨシ」と言い換えられたものである。日本の在来植物で、『日本書紀』に著れる日本の別名「豊葦原千五百秋瑞穂国」とあるように、およそ平安時代までは「アシ」と呼ばれていたようである。
出典:ウィキペディア
良い草と悪い草があって、そこから「ヨシ」と「アシ」という言葉が生まれたのかと思ったら、人間が勝手に呼び方を変えただけだったのだ。

井の頭池の七井橋の近くにある木杭で囲まれたエリアを「葦(アシ)島」というらしい。
どれがアシだろうと探してみるが、よくわからない。
今このエリアで目立っているこのハリネズミのような植物だが、どうやら畳表の材料となる「イグサ」で「ヨシ」ではないらしい。

この「葦島」の歴史が書かれた案内板が設置されていた。
井の頭池で水質悪化や水生植物の消失が進行していた1966年、かつて水生植物が繁茂していた様子を再現する目的で「葦島」が整備されました。木杭で囲いを作って土を充填し、近隣の都立善福寺公園からヨシ(アシ)を移植しました。
葦島は岸から離れていて手入れをしにくかったため、やがてムクノキや外来種のシュロ、トウネズミモチなどが入ってきて中低木が密生した状態になりました。
2018年のかいぼりをきっかけに、井の頭池に湿地を再生するという当初の目的に沿って再整備を行いました。
公園内の案内板より

では、「ヨシ」とはどんな植物なのか?
井の頭池のあちらこちらに、いま緑の細長い葉をスラリと伸ばしたこの植物が生えている。
しかしこれは「ヨシ」ではなく、「ガマ」のようだ。
ソーセージのような「ガマの穂」をつける水生植物で、すでに1mほどの高さに育っている。

一方、湿地帯にチョロチョロと生えている地味な植物。
植物識別アプリ「Picture This」で調べると、どうやらこれが「ヨシ(アシ)」のようである。
『葭始生』。
暦通り、まさに今の季節に「ヨシ」が芽吹いてきているということらしい。

今はまだ、ガマやイグサに比べると小さな存在だが、夏場になれば3メートルの高さに成長する。
しかも大群落を作るため、他の植物を飲み込んで水辺を覆い尽くしてしまうのだ。
徳川家康が江戸を開くまでの関東には、一面のヨシの原が広がっていたという。
「ヨシ」こそが関東平野の主だったのだ。

「ひょうたん橋」の付近に生えているのも、「ヨシ」のようだ。
成長すると「ヨシ」の茎は硬くなる一方、中空で軽いため古来より様々な用途に利用されてきた。
代表的なのは夏の暑さをしのぐ「ヨシズ」だが、船の材料になったり、葦笛として楽器にも使われた。
西洋のパンフルートや中国の簫(しょう)も、同じく「ヨシ」の仲間が材料となったそうで、人間の考えることは古今東西あまり変わらないようだ。

葦島の「ヨシ」は人為的に刈られていて今の季節には目につきにくいが、橋を渡って中之島側に渡ると去年の「ヨシ」が枯れたままに残された浅瀬がある。
ここは鳥たちにとって格好の隠れ家となっていた。

今日も目を凝らすと、茂みの中に真っ白な鳥がいた。
「コサギ」だ。
「コサギ」は泳げないので、浅瀬で魚やエビを食べるという。
「ヨシ」や「ガマ」が生える井の頭池の浅瀬は、こうした様々な動物たちに住み心地の良い環境を提供している。

木陰に作った「カイツブリ」の巣では、いま子育ての真っ最中。
ボート乗り場近くのこの巣では4羽のヒナが孵っているのを目撃した。
この季節、大きな望遠レンズをつけて鳥たちの子育てを撮影するアマチュアカメラマンたちの姿をよく見かける。
私も真似をして、ちょっと動画を撮影してみた。
子供たちを押しのけて巣に上がり込む「カイツブリ」のお母さん。
それでも夫婦揃って子供たちのエサ集めに励む姿は見ていて微笑ましい。

上を見上げるとメタセコイアの樹上には、カワウが巣を作っている。
フナなどの魚を食べるカワウには、池の様子を真上から観察できるこの木がお気に入りのようだ。

おかげで、人間の方が気を使わなければならない。
カワウが陣取ったメタセコイアの木の周囲には、立ち入り禁止のコーンが置かれていた。

「上から鳥のフンが落ちることがあります。頭上ご注意下さい」
なるほど、これはカワウへの配慮というよりも人間からのクレームを避けるための手段のようだ。

ガマを育てるために設置された人工物の上で堂々と昼寝をしているのは「カルガモ」だった。
この季節、寝ているカルガモをよく見かける。

首を羽の中につっこんで、実に気持ちよさそうに寝ている。
冬の間はたくさんのカモたちがいてうるさかった井の頭池も、この季節になるとすっかり静かになり、暖かな日差しは日光浴にもってこいだ。
4〜7月が子育ての季節だというので、いずれヒナを引き連れて歩くカルガモの行列も見ることができるかもしれない。

そんなお昼寝のカルガモを撮影していた時、手前を動く気配がした。
見ると1匹のヘビが静かにはって近づいてくる。
長さは1メートルぐらいあるだろうか・・・。
池のほとりを悠然と進んでいく。

ヘビは、私の目の前で止まった。
ヘビを見たのは久しぶりなので、スマホを近づけて撮影するが逃げようとしない。
子供の頃はヘビが怖くて仕方がなかったが、ジジイになると毒蛇でもなければ特に怖くはない。
暖かな陽気のせいなのか、生き物すべてがのんびりして見える。
私が一生懸命ヘビを撮影しているのを見つけた老夫婦が近づいてきて、「大きいねえ」と言いながら、「アオダイショウはたくさんいるからねえ」と話していた。

そんな長閑な平日の井の頭公園。
今日も水辺の環境を守るボランティア「かいぼり隊」の人たちが活動していた。
公園の美しい環境は多くの人の手によって守られている。
私が吉祥寺に引っ越した頃から始まったこうした活動によって、水質はずいぶん改善され、昔の自然環境が徐々に再生してきている。

雑木林では、高所作業車を使った大木の伐採も行われていた。
庭木や街路樹のように人工的に整えすぎるのはよくないが、適度に人の手を加えて、自然の力を蘇らせる努力は大切だと思う。
日本人は昔から、自然と共生しながら生きてきた。
私もいずれお手伝いしたいところだが、今はまず日々公園を散歩して、少しずつ植物や動物を知ることから始めたいと思う。
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