<吉祥寺残日録>トイレの歳時記🌸七十二候「鴻雁北(こうがんきたへかえる)」、井の頭公園から渡り鳥が消えた #210409

今日は、七十二候の「鴻雁北」。

「清明」の次侯で、「こうがんきたへかえる」と読む。

渡り鳥の「雁が北へ帰っていく頃」という意味である。

「雁」について調べてみると、「カモより大きくハクチョウより小さい一群の総称」と書いてあった。

井の頭公園で雁の姿は見たことがないが、普段注意を払わない鳥類も気にしながら、4月に入った公園を一周してきた。

ソメイヨシノも散り、すっかり新緑に覆われた井の頭池。

先月までは多くの冬鳥たちで賑わったこの池も、いつの間にか静かになった。

泳いでいたのは、2羽のカルガモ。

カルガモは「留鳥」なので、一年中この池で暮らしている。

「キンクロハジロ」「ホシハジロ」「ハシビロガモ」「マガモ」などの冬鳥はすでに北に飛び立っていったのだろう。

3月末には多くの人たちで混雑していた遊歩道も、桜が散ると嘘のように人通りが少なくなった。

私のように桜を見ずに樹木や草を眺めて歩く人はほとんどいない。

私もつい先日までは、そうだった。

桜、アジサイ、紅葉と、派手なものだけに目を向け、本当のお目当ては自然ではなく、花見の後での友人や家族との宴会だったりした。

多くの都会人にとって自然とは、所詮、宴会の口実程度の意味しかないのかもしれない。

でも、今の私は違う。

公園内の植物を継続的に観察していると、日々多くの変化に気づくようになった。

たとえば、この「ウラシマソウ」。

1ヶ月前とはずいぶん姿を変え、大きく葉を広げて、「仏炎苞(ぶつえんほう)」の中には緑色の実ができ始めている。

秋になるとこの実が赤く色づくそうだ。

鳥でいえば、この日目立っていたのは「カワウ」ぐらいだろうか。

「カワウ」も一年中この池で過ごす「留鳥」。

冬鳥が消えた井の頭池の中央で、お気に入りの杭の上で大きく羽根を広げて日差しを楽しんでいるように見える。

そういえば、スピードが速すぎて写真には収められないけれど、井の頭公園の上空を飛ぶツバメを見た。

「清明」の初候が「玄鳥至(つばめきたる)」で、次侯が「鴻雁北(こうがんきたへかえる)」。

つまり、冬鳥が去り、夏鳥がやってくる今はちょうどその端境期であり、一年でも最も静かな時期なのだろう。

コロナ禍でも変わらない自然の営み。

生まれて63年経って、ようやくそんな自然の摂理に目が向くようになった。

植物の方も、ソメイヨシノが散ると、八重の桜が花を咲かせる。

昔から厚ぼったい八重桜は好きではないが、丁寧に見ていくと、中にはとても魅力的な花を見つけることもできる。

遅咲きの桜についても、改めて記録しておくつもりだ。

桜の季節が終われば、サツキやツツジが公園を彩る。

これまたけばけばしいので私の嫌いな花たちだが、ひょっとすると新たな魅力に気づくことがあるかもしれない。

そして早春、私の好奇心を刺激してくれた御殿山の山野草エリアでは、多種多様な植物がひしめきあい、もはやどれが何の植物なのか見極めるのさえ困難な様相となっている。

動物界での弱肉強食はよく知られるが、植物界でも激しい生存競争が繰り広げられていることをここに来ると理解できる。

弱い植物ほど早く咲いて、子孫を残す。

繁殖力の旺盛な植物は後から出てきてもどんどん縄張りを広げて繁栄する。

こうして自然を観察していると、「輪廻」という言葉が思い浮かんだ。

昨日4月8日はお釈迦様が生まれた日で、井の頭弁財天の御堂の前に派手な花飾りが置かれていた。

仏教ではこの日を「灌仏会(かんぶつえ)」、または「花まつり」と呼び法要が営まれる。

日本では、様々な草花で飾った花御堂(はなみどう)の中で、甘茶を満たした灌仏桶の中央へ安置した誕生仏像に柄杓で甘茶を掛けて祝うが、釈迦生誕時に産湯を使わせるために9つの竜が天から清浄の水を注いだとの伝説に由来する。釈迦を本仏としない日蓮正宗等を除く大多数の寺院で執り行われて参拝者にも甘茶がふるまわれ、甘茶で習字すれば上達するとの願掛けや害虫除けのまじないを作るなどする。

出典:ウィキペディア

修行僧は自然の中に身を置いて、そこから悟りを開くという。

わかる気がする。

生き残り、子孫を残すことこそが生物の本質。

都会のオアシスである井の頭公園でも、観察を続けていれば、毎年規則正しく繰り返される自然界の法則に気づくことができるのだ。

そう考えれば、植物観察も悟りに近づくための「修行」と言えるかもしれない。

<吉祥寺ライフ>井の頭公園の植物【3月】「アズマイチゲ」&「ウラシマソウ」

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