今月に入って小鳥たちのさえずりに俄然興味が沸き、何とか鳴き声を聴き分けられるようになりたいと思っているのだが、これが実に難しい。
しかし、鳥の鳴き声をずっと聴き続け、ついに鳥の言葉の意味を解き明かした研究者がいることを知った。
昨夜のNHK「ダーウィンが来た!」は、私にとってかなりインパクトのある内容だった。
「ダーウィンが来た!」の今週のテーマは、「聞いてびっくり!鳥語講座」。
井の頭公園にもいるシジュウカラなどの身近な小鳥たちの鳴き声や生態を詳しく紹介してくれるというので、迷うことなく録画しておいた。
シジュウカラやヤマガラ、コガラ、ヒガラなど「カラ類」と呼ばれる野鳥たちは、葉が落ちる秋から冬の間、複数の種が集まり「混群」と呼ばれる大きな群れを作ることがあるという。
みんなでエサを教えあったり、外敵から身を守ったりすることを目的とするこの「混群」には、生息域が近いゴジュウカラやエナガ、メジロやコゲラなどが加わることもある。
この「混群」の鳥たちは、言葉を使ってお互いにコミュニケーションをとっていることが最近分かってきた。
この野鳥の言葉を研究しているのが、京都大学白眉センターの鈴木俊貴博士。
15年以上、鳥たちの声に耳を傾け、その言葉を次々に解明してきた。
たとえば、カラ類の中でも小さな「コガラ」が発する「ディーディーディー」という鳴き声。
これは仲間を呼び寄せる「集まれ」を意味する言葉だという。
エサを見つけた時などに発し、この声を聴くと同じコガラだけでなく、他の種の鳥たちも集まってくるのだそうだ。
ただし共通の言葉があるわけではなく、同じ「集まれ」でも、シジュウカラは「ヂヂヂヂ」と鳴き、ヤマガラだと「ニーニーニー」、ゴジュウカラの場合は「フィフィフィ」と鳴くそうだ。
次は、天敵を発見した時に仲間に注意を促す言葉。
シジュウカラが高音で「ヒーヒーヒー」と鳴くと、小鳥たちは一斉に身を隠す行動を取る。
この「ヒーヒーヒー」は「タカが来た」という意味なのだそうだ。
すると、コガラは「ヒヒヒヒ」、ヤマガラは「スィスィスィ」という似た周波数の音で危険を伝え合い、タカから身を守るという。
この周波数の音は猛禽類には聞こえにくいらしく、小鳥たちのコミュニケーションには最高なのだ。
こうした小鳥たちの言葉は同じくタカを天敵とするリスなども理解し、すぐに逃げ出すのだとか・・・。
鳥たちはただ単に鳴いているだけではないらしいのだ。
さらに、小鳥たちは単語だけでなく、簡単な文章も作れるという。
たとえば、小鳥たちにとって危険なモズの剥製を置いてみると、シジュウカラが「ピーツピヂヂヂヂ」と声を上げる。
この「ピーツピ」が「警戒しろ」、「ヂヂヂヂ」は「集まれ」という意味だ。
つまり、気をつけながら集合し、自分たちより強い相手を集団で威嚇して対抗しようというわけだ。
こうした文章は、人間の専売特許だと見られてきたが、時間をかけて小鳥たちの言葉を聴き続けることによって少しずつ解明されているみたいである。
こちらの写真はシジュウカラの子ども。
初夏に巣だったばかりの子どもたちは、1ヶ月ほど親鳥と生活を共にしながら生きる術を学ぶ。
この時期に混群の中にヘビの剥製を置いてみる。
すると、シジュウカラの親鳥がヘビを見つけ「ジャージャー」と鳴く。
これが「ヘビだ」という意味らしい。
すると、親鳥の声を聴きながらヘビを観察していた子どもたちが同じように「ジャージャー」と鳴くようになる。
そこへ、ゴジュウカラやヒガラ、メジロの子どもたちもやってきて、シジュウカラの言葉を学ぶのだという。
つまり、初夏の今頃の季節、巣立ったばかりの小鳥たちがお互いの言葉を学び合う学校のようなものができることが分かったというのだ。
さらに、興味深いのは、鳥もウソをつくということだ。
混群の中にあえてエサを置くと、体の大きな鳥が独り占めしてしまう。
カラ類の混群の序列で言うと、ゴジュウカラが最も大きく、続いてヤマガラ、シジュウカラの順となり、一番小さいコガラは他の鳥たちがいる間はエサにありつけない。
そんな時、コガラが裏技を使うことが分かった。
コガラが「ヒヒヒヒ」と鳴くと、エサ場の鳥たちはタカが来たと思って一斉に逃げる。
その隙にコガラがエサ場に降りてきて、エサを食べることが確認されたのだ。
一番小さな鳥のずる賢いウソ。
しかし、回数を重ねるうちにみんな騙されなくなるのも人間世界と同じようだ。
井の頭池では、少し前に生まれたばかりのカイツブリの子どもたちがひとり立ちの季節を迎えた。
自分で水中に潜ってエサを取り、親鳥たちも以前のように子どもたちに構わなくなったようだ。
一方、樹上にいる小鳥たちの姿は、葉っぱが茂るに従って見つけにくくなり、ただ鳴き声を聴くのみだ。
しかし昨日の番組で教えてもらったシジュウカラやコガラの鳴き声が果たして井の頭公園でも聴けるかどうか、すごく気になっている。
今日にも早速、公園をうろついて鳥の声に耳を傾けてみるつもりだ。
私たちの身近なところには、まだ解明されていない様々な謎が存在する。
そんなことを教えてくれる貴重な番組だった。