2021年のテーマとして掲げた「井の頭公園の植物」観察。
最後まで冬の装いだった樹木たちも4月に入り新緑の仲間入りをし、公園全体が緑に染まった。
一番遅く葉を伸ばしはじめた木々を記録する。
「ハンノキ(榛の木)」

井の頭公園で特別な存在となっている樹木がある。
それが『ハンノキ』だ。
井の頭池の北側エリアでは「ハンノキ林再生計画」が進行中なのだ。

『このハンノキ林は、周辺の樹林化による日照不足、土砂の堆積による乾燥化で、次世代の若木が育っていませんでした。2018年の台風で多数の樹木が倒れたのを機に、ハンノキ林を再生するために倒木の整理や伐根をしました。』
現在は、自生した「ハンノキ」の若木が草に埋もれないよう除草したり、生育状況を追跡調査したり、行政と市民が協働で保全作業を続けているという。

「ハンノキ」というのはあまり馴染みがないが、昔から武蔵野の雑木林を構成していた樹木の一つで、井の頭公園は都内でも数少ない「ハンノキ」の群生地なのだそうだ。
「エノキ」や「ケヤキ」、「コナラ」や「イヌシデ」といった個性豊かな公園の大木を見ていると、「なぜハンノキを守るのか?」という疑問も湧いてくるほどこれといった魅力は感じられない木である。

私にとって「ハンノキ」の特徴といえば、冬の間、松ぼっくりのような実をずっとぶら下げたまま新緑の季節を迎えることだ。
緑の若葉が出ても、まだ枯れた実がたくさん枝に残っている。

「ハンノキ」は湿地を好む樹木なので、ここに「ハンノキ林」が復活すれば、陸の生き物だけでなく池の生き物たちも集まる井の頭公園らしいエリアとなりそうだ。
楽しみに変化を見守っていきたい。
「ハンノキ」 分類:カバノキ科ハンノキ属 特徴:落葉広葉樹・高木 花が咲く時期:11〜4月 実のなる時期:10月
井の頭公園の「ハンノキ」はここ!

「アキニレ(秋楡)」

パッチワークのような樹皮が冬からずっと気になっていた。
この木の名前は『アキニレ』というらしい。
春に花が咲く「ハルニレ」に対し、「アキニレ」はその名の通り秋に花が咲くという。

その葉はノコギリのようなギザギザを持ち、成長すると落葉樹としては肉厚で光沢がある葉となる。

「アキニレ」の木は、街路樹などとして植えられることが多く、井の頭公園内にも数本確認している。
しかし、葉が出たのを私が見たのは4月中旬になってからで、公園内でも最も遅い新緑である。
「アキニレ」 分類:ニレ科ニレ属 特徴:落葉広葉樹・高木 花が咲く時期:8〜9月 実のなる時期:10〜11月
井の頭公園の「アキニレ」はここ!

「イチョウ(銀杏)」

おなじみの『イチョウ』も、4月に入ってようやく若葉が出てきた。
生まれたての若葉も、やっぱりあの形だ。

井の頭弁財天に近い池のほとりに1本植えられている「イチョウ」の木。
その幹は、縦に溝が走り、まっすぐに天に伸びている。
緑が茂っているように見えるのは、周囲のモミジの新緑であり、「イチョウ」の葉はもっと上に出ているので地上からは見えにくい。

望遠レンズを使って下から見上げると、この季節、「イチョウ」の若葉は実に可愛らしい。
しかし実は、この木の歴史はとんでもない。
世界で最古の現生樹種の一つである。イチョウ類は地史的にはペルム紀に出現し、中生代(特にジュラ紀)まで全世界的に繁茂した。
現在イチョウは、「生きている化石」として国際自然保護連合 (IUCN)のレッドリストの絶滅危惧種 (Endangered)に指定されている。
出典:ウィキペディア

井の頭公園では「イチョウ」の木をあまり見かけないが、確か西園にもあったはずだ。
冬の時期には探しにくいが、この葉っぱが目印なので、今のうちに探してみるのも面白いかもしれない。
「イチョウ」 分類:イチョウ科イチョウ属 特徴:落葉(裸子植物)・高木 花が咲く時期:4月 実のなる時期:10月
井の頭公園の「イチョウ」はここ!

「メタセコイア(曙杉)」

「メタセコイア」の若葉が出始めたのも4月に入ってからだった。
枝からブラシのように緑色の細い葉を出す。

伸びてくると、枝から伸びた芯の両側に細かい葉が伸び始める。
「イチョウ」と同様、この「メタセコイア」も『生きた化石植物』と呼ばれ、白亜紀から古第三紀にかけて北半球に広く分布していたと考えられているそうだ。

そして気がつけば、いつの間にかあの整った樹形が復活している。
井の頭公園にもたくさん植えられている「メタセコイア」も、4月の新緑の主役である。
「メタセコイア」 分類:ヒノキ科メタセコイア属 特徴:落葉針葉樹・高木 花が咲く時期:3月 実のなる時期:11月
井の頭公園の「メタセコイア」はここ!

「ラクウショウ(落羽松)」

「メタセコイア」によく似た「ラクウショウ」の新緑は、「メタセコイア」より少し早かった。
「ひょうたん橋」周辺に植えられた「ラクウショウ」の木はすでに青々としている。

「メタセコイア」との見分け方は、この葉の出方なのだという。
ラクウショウの小枝では葉が枝から互い違いに生える「互生」だが、メタセコイアは一箇所から対になって生える「対生」であるため見分けられる。また、ラクウショウの方が葉が短い。
出典:庭木図鑑 植木ペディア
私にはまだ見極めるのは難しいが、こうした観察を毎年続けていけば、そのうち私にも見分けることができるようになるだろうか・・・。
「ラクウショウ」 分類:ヒノキ科ヌマスギ属 特徴:落葉針葉樹・高木 花が咲く時期:3〜4月 実のなる時期:10〜11月
井の頭公園の「ラクウショウ」はここ!

「ムクノキ(椋)」

井の頭池の南側に並んだ「ムクノキ」の大木にも、4月に入ってようやく春の変化が出てきた。
最後の大物といった風情だ。

「ムクノキ」は背が高いので、なかなか枝先の様子を地上から観察するのが難しいのだが、日本庭園近くの「ムクノキ」は地面近くに枝のおろしていて、間近から観察することができた。

若葉と一緒にモジャモジャと出てきた黄緑色いものが「ムクノキ」の花である。
一般には見向きもされない花ではあるが、こんな間近で観察できるスポットは貴重かもしれない。
ちなみに、葉っぱにはギザギザがある。

公園内でも有数の「ムクノキ」の巨木にも春が訪れ、周囲はすでに初夏の様相を呈し始めたように感じる。
「ムクノキ」 分類:アサ科ムクノキ属 特徴:落葉広葉樹・高木 花が咲く時期:4〜5月 実のなる時期:10月
井の頭公園の「ムクノキ」はここ!

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