<吉祥寺ライフ>井の頭公園の植物【3月】「イロハモミジ」& 新緑の主役たち①

2021年のテーマとして掲げた「井の頭公園の植物」観察。

先日の雨の後、落葉樹たちが一斉に芽吹きの季節を迎えた。

3月初めには、まだ枯れ木ばかりだった御殿山の雑木林もご覧の通り、すっかり春の装いだ。

しかし、これまでこの新緑の主役がどの樹木なのか、まったく気にしたこともなかった。

今年植物の名前を少しずつ覚え、定期的に観察するようになってその主役たちを突き止めた。

真っ先に芽吹くのは「イヌシデ」と「アカシデ」、やや遅れて「イロハモミジ」や「ヤマモミジ」、続いて「クヌギ」「コナラ」「ケヤキ」も次々に葉や花をつけ始めるのだ。

そんな井の頭公園の頭上を彩る主役たちを観察する。

「イロハモミジ(伊呂波紅葉)」

井の頭弁財天の正面を飾るこちらの樹木は「イロハモミジ」。

言わずと知れた紅葉の王様である。

でも、この「イロハモミジ」、春には新緑の主役ともなるのだ。

井の頭弁財天の境内にも植えられている「イロハモミジ」。

一般に「モミジ」といえば、この「イロハモミジ」を意味する。

調べてみると、「モミジ」という分類は存在せず、全部「カエデ」の仲間で、「イロハカエデ」が本来の名前なのだという。

ただ日本では葉の切れ込みの大きいものを「モミジ」と呼び、切れ込みの少ないものを「カエデ」と呼んで区別している。

「イロハモミジ」の名前の由来も、この葉っぱの形にあるという。

葉っぱが5~7つに大きく裂けることから、イロハニホヘトの文字を当ててイロハモミジ(あるいはイロハカエデ)と呼ばれるようになった。別名のタカオモミジは紅葉の名所として知られた京都の高雄に由来する。

出典:「庭木図鑑 植木ペディア」

私が井の頭公園で今年初めてモミジの若葉を確認したのは3月14日のこと。

個体差がずいぶんあるが、西園のグランド脇の木がいち早く芽吹いていた。

葉の下に赤くぶら下がっているのが花である。

「イロハモミジ」は井の頭公園のいたるところに植えられているので、この季節、瑞々しい新葉が日に日に成長してくるのを観察することができる。

まだ枯れ木のままの樹木もある中で、公園全体を春に色に染めていく重要な主役だということがわかった。

「ソメイヨシノ」と「イロハモミジ」の共演が楽しめる井の頭池東端の「ひょうたん橋」周辺も、この季節ならではの絶景スポットとなっている。

花言葉は「美しい変化」、なるほど・・・。

<追記>

4月18日、竹トンボのようなプロペラがついた実がたくさんできていた。

「イロハモミジ」
分類:ムクロジ科/カエデ属
特徴:落葉広葉樹・高木
花が咲く時期:4〜5月
実がなる時期:7〜9月

井の頭公園の「イロハモミジ」はここ!

「ヤマモミジ(山紅葉)」

「イロハモミジ」には名札がついていないが、「ヤマモミジ」の名札がつけられた木がいくつかある。

正直、「イロハモミジ」、「ヤマモミジ」、「オオモミジ」の見分けは難しい。

葉っぱが小さい順に、「イロハモミジ」「ヤマモミジ」「オオモミジ」の順だそうだが、新緑の季節にはどうやって見分けるのか、ネットで調べてみてもよくわからなかった。

「ヤマモミジ」も葉が出るタイミングで、花も咲く。

名札以外に何か見分ける方法がわかるといいのだけど・・・。

ちなみに、花言葉は「遠慮」、わかる気がする。

「ヤマモミジ」
分類:ムクロジ科カエデ属
特徴:落葉広葉樹・高木
花が咲く時期:5〜6月
実がなる時期:6〜9月

井の頭公園の「ヤマモミジ」はここ!

「イヌシデ(犬四手)」

今の季節、御殿山の雑木林を歩くと、頭上が鮮やかな黄緑色に染まっている。

この主役は「イヌシデ」である。

落葉した冬の「イヌシデ」は樹皮の縞模様で、私の大好きな樹木となったが、新緑の季節もこの林の中で一番先に春を告げてくれる。

御殿山の雑木林にたくさん植えられている「イヌシデ」の木の下に立つと、青空を覆い隠すほどにもう若葉が繁り始めているのだ。

大木が多くて地上からはよく見えないが、探してみると低い位置に枝を伸ばしている「イヌシデ」を見つけることもできる。

黄緑色の正体は「イヌシデ」の花である。

「雄花序」と呼ばれる長さ4〜5cmの花穂が、小枝から無数にぶら下がる。

この花の様子が神社で使う「紙垂(しで)」に似ていることからこの樹木に「シデ」の名がつけられたという。

私が初めて「イヌシデ」の花に気づいたのは「イロハモミジ」と同じ3月14日のこと。

上の写真はその時の雑木林の様子だが、これがわずか10日の間に・・・

日に日に春めいてきた。

下から見上げるとこの程度だが、普通に正面を見ながら散歩していると風景が日毎に春に変わるのを感じたものだ。

今では、こんな感じでパステルカラーに埋め尽くされている。

黄緑色の「イヌシデ」と赤茶色の「アカシデ」が入り混じり、私が一年で最も好きな新緑の色彩を織りなすのだ。

ちなみに、「シデ」の花言葉は「装飾」、これも花から来ているのだろう。

樹木ごとに個体差があり、早い木ではすでに若葉がかなり育っていた。

葉脈がはっきりと見えるきれいな葉っぱだ。

今年になるまで「イヌシデ」の名前さえ知らなかったが、実は井の頭公園に春の訪れを告げる主役だということを初めて知った。

「イヌシデ」
分類:カバノキ科クマシデ属
特徴:落葉広葉樹・高木
花が咲く時期:4〜5月
実がなる時期:10月

井の頭公園の「イヌシデ」はここ!

「アカシデ(赤四手)」

「イヌシデ」同様、葉が出る前に花穂が垂れ下がる。

ただし、その色が赤茶色なのが「アカシデ」、花の季節は見分けがとても簡単だ。

「イヌシデ」に比べると樹皮も滑らかで縞模様が薄い。

でも「アカシデ」という名の由来は、やはりこの花の季節に赤い雄花がたくさんぶら下がることから来ている。

御殿山の雑木林には、「アカシデ」と「イヌシデ」が混在して植えられているため、今が一年で最も美しい季節と言えるのかもしれない。

雨が降った後には、歩道上にたくさんの「アカシデ」の花穂が落ちていた。

「アカシデ」
分類:カバノキ科クマシデ属
特徴:落葉広葉樹・高木
花が咲く時期:4〜5月
実がなる時期:8〜9月

井の頭公園の「アカシデ」はここ!

「クヌギ(櫟)」

ジブリ美術館前の「クヌギ」の大木の枝先がモヤモヤしているのに気づいたのは、数日前のことだ。

何やら黄色っぽいものが出ている気がした。

カメラの望遠で撮影してみると、「イヌシデ」に似た花穂がたくさん出てきているのがわかった。

「クヌギ」は「ソメイヨシノ」が咲く頃、こうした黄色い10センチほどの雄花をつけるそうだ。

ずいぶん高い位置にあるので、間近で見ることはできないが、花粉は風で飛ばされ、やがて花穂が地上に落下するのも「シデ」と同じだ。

花言葉は、「穏やか」。

「クヌギ」
分類:ブナ科コナラ属
特徴:落葉広葉樹・高木
花が咲く時期:4〜5月
実がなる時期:9〜10月

井の頭公園の「クヌギ」はここ!

「コナラ(小楢)」

御殿山エリアの雑木林では「イヌシデ」や「モミジ」に挟まれるように、「コナラ」の枝先にも変化が見られるようになった。

望遠レンズでのぞくと、新葉の間から「クヌギ」と同じような花穂が確認できる。

「コナラ」の「雄花序」は、成長すると長さが6〜9cmほどになるという。

「シデ」や「クヌギ」に比べると、花と葉っぱが同時に出てくる違いがあるようだ。

「コナラ」の花言葉は「勇気」。

「コナラ」
分類:ブナ科コナラ属
特徴:落葉広葉樹・高木
花が咲く時期:4〜5月
実がなる時期:9〜10月

井の頭公園の「コナラ」はここ!

「ケヤキ(欅)」

そしてここ数日、急に芽吹き始めたのが「ケヤキ」の大木だ。

井の頭池の周辺に並ぶ「ケヤキ」の先端に黄緑色のものが見え始めた。

望遠レンズで覗くと、小さな若葉とともに、プツプツした小さな実のようなものが枝についている。

これがどうやら花のようなのだが、雄花も雌花も小さくて地上からではとても識別できない。

でもそれが逆に若葉の黄緑色を主役に押し立てて、爽やかな色に頭上を染め上げてくれる。

こうして見ると、「ケヤキ」の新緑も美しいと感じた。

3月半ばごろから一斉に春の装いを進める落葉樹たち。

桜ばかりが注目される井の頭公園の春だが、私にとっては新緑こそが春の主役なのだ。

「ケヤキ」の花言葉は、「幸運」。

「ケヤキ」
分類:ニレ科ケヤキ属
特徴:落葉広葉樹・高木
花が咲く時期:4〜5月
実がなる時期:9〜11月

井の頭公園の「ケヤキ」はここ!

<吉祥寺ライフ>井の頭公園の植物【2月】「イヌシデ」&「クヌギ」

井の頭公園の植物2021

  1. 【1月】「オトメツバキ」&「トウカエデ」
  2. 【1月】「カツラ」&「サルノコシカケ」
  3. 【1月】「ケヤキ」&「クスノキ」
  4. 【1月】「コブシ」&「ハゼノキ」
  5. 【2月】「スギ」&「ヒマラヤスギ」
  6. 【2月】「ヒノキ」&「サワラ」
  7. 【2月】「コナラ」&「エノキ」
  8. 【2月】「フクジュソウ」&「マンサク」
  9. 【2月】「ムクノキ」&「トチノキ」
  10. 【2月】「スダジイ」&「シラカシ」
  11. 【2月】「イヌシデ」&「クヌギ」
  12. 【3月】「カワヅザクラ」&「オオカンザクラ」&「カンヒザクラ」
  13. 【3月】「サンシュユ」&「アセビ」
  14. 【3月】「トサミズキ」&「ヒサカキ」
  15. 【3月】「アズマイチゲ」&「ウラシマソウ」
  16. 【3月】「オオシマザクラ」&「コヒガン」
  17. 【3月】「メタセコイア」&「ラクウショウ」
  18. 【3月】「シダレヤナギ」&「ユキヤナギ」
  19. 【3月】「カタクリ」&「ヤブレガサ」
  20. 【3月】「ヤマブキ」&「オウゴンマサキ」
  21. 【3月】「ヒトリシズカ」&「マルバスミレ」
  22. 【3月】「イロハモミジ」と新緑の主人公たち