<きちたび>旅のアルバムから〜アフリカゾウにテントを襲われた!私がケニアで体験した恐怖の夜

🔶「旅したい.com」から転載

<ケニア>アフリカゾウにテントを襲われた!私がケニアで体験した恐怖の夜

🇰🇪ケニア/アンボセリ 1982年2月

私が大学を卒業する年の忘れられない旅の話をします。

私は一人の女性を誘ってアフリカに旅立ちました。ケニアの首都ナイロビでレンタカーとキャンプ道具一式をレンタルし、私たちはキリマンジャロの麓に広がるアンボセリ国立公園に向かいました。

事件は、アンボセリでのキャンプ2日目の真夜中に起きました。

サファリでの忘れがたい夜

ガサガサッ … ガサガサッ … ガサガサッ …。

闇夜が、とつぜん、揺れ出しました。

ガサガサッ … ガサガサッ … ガサガサッ …。

その耳障りなノイズは、とぎれとぎれに、深い眠りの底から、
私の意識を、むりやり引きずり出します。

ガサガサッ … ガサガサッ … ガサガサッ …。

私は、仕方なく薄目をあけ、おぼつかない意識のまま闇を見つめました。
真っ暗な天井が、なぜか大きく波打っています。

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「なんだ?」

一瞬、事態が飲み込めず ……。

「ここは、どこ?」

次の瞬間、ひとつの記憶が、脳裏に浮かびます。

「ここは ……、テントの中 ……」

横になったまま、脳みそがゆっくりと、回転をはじめます。

「揺れているのは、テントだ」

「何かが、私たちのテントを揺らしている」

「・・・猿だ」

そうだ、猿に違いない。

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きのうの夕暮れ、近づいてくる猿たちに小石を投げて、撃退した。

きっと夜陰に乗じて、復讐に来たんだ。

そうだ、猿だ。
復讐に来たんだ。

そんな結論に達した私は、横になったまま、揺れるテントを内側から手で叩いて、猿たちを追い払おうとしました。
ナイロン製のテントは、夜の外気に冷やされてひんやりと感じます。

ガサガサッ、ガサガサッ、ガサガサガサッ。

テントの揺れは、一段と激しさを増します。

私は、すっかり目を覚まし、上体をすこし起こして、手で猿たちを追い払おうと、必死でテントを内側から叩きつづけました。

その、時でした。

ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガー。

突然、テントの屋根がふわっと空中に舞い上がりました。
そして、満点の星空が突如、目の前に広がったのです。

一体何が起こったのか、その時はまったくわかりませんでした。

ただ、それまで格闘していたテントが、いきなり目の前から消えた ……
まるで悪夢から醒めたような ……錯覚。
空には無数の星たちが、この世のものとは思えないほど美しくきらめきます。

その時、隣で、小さな悲鳴のような声が聞こえた気がしました。

「そうだ、彼女は? …… 大丈夫か?」

私は、とっさに横に寝ていた彼女を見て、さらに後ろを振り返りました。

その時の「衝撃」 ……、 私は、一生、わすれません。

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そこにいたのは・・・

ゾウ … です。

そこには、1頭の大きな象がいたのです。

夜の闇の中でも、象の巨大な頭部ははっきりと見えました。

こいつが、私たちのテントを揺すり、破壊した犯人でした。
奴は、今も、すぐそこにいます。
手を伸ばせば触れるような、至近距離。

私の視野角いっぱいに、象の巨体が広がります。

「ゾウだ!! ゾウだ!! 逃げろ!!」

そう言って、私はとっさに寝袋を脱ぎ捨て、這うように逃げ出しました。

数メートル先に止めてある私たちの車のところまでたどり着き、 そして…

後ろを振り向いた時 ……

全身の血の気が、ひいていくのがわかりました。

大きな象の鼻先に、寝袋から出られず身悶えする、人影があったのです。

「何してる。早く来い」
私は、そう叫んだと思います。

「チャックが開かない」
彼女は、そう答えたような記憶があります。

おそらくは一瞬のことだったのだと思いますが、彼女が逃げ出してくるまでの時間は、まるでスーパースローモーションでも見ているように感じられました。

あの時、もしも、象が一歩前に、脚を踏み出していたら……、

彼女の命は、おそらくなかったでしょう。

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一生忘れ得ぬ、鮮烈な記憶。

ゾウに踏みつぶされそうになったその時の彼女と私は、その年の夏、結婚しました。

アンボセリでの出来事は、私たち夫婦の力関係を今でも決定づけています。

私たちは、こうしてゾウに襲われた!

以上が、私が学生時代、アフリカ・ケニアのアンボセリ国立公園でキャンプ中に、深夜ゾウにテントを襲われ、危うく死にそうになったという体験談です。

なぜ、こんな危ない目にあったのか?

それは私が無知だったからです。サバンナでキャンプする際、絶対に守るべきことを行なっていなかったことが原因でした。

それは、何か?

サファリでゾウに襲われないため必ず守るべきことをお教えしようと思います。「そんな情報いらない」と言われそうですが、まあ読んでみてください。

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もう一度、事件の経緯をおさらいしておきます。

私が大学6年生(2年留年した)の時、アフリカ旅行を計画しました。
テレビ局への就職も決まり、学生時代最後の冒険旅行です。

当初は一人旅のつもりでしたが、ひょうんなことから、一人の女性が勤めていた会社を辞めてついてくることになりました。
初めての二人旅。

彼女は、昔付き合っていた彼女、つまり元カノです。

私たちは、ケニヤの首都ナイロビでレンタカーとキャンプ道具一式を借り、無謀にも2人だけでサファリ旅行に出かけたのです。

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アフリカ最高峰、キリマンジャロ山の麓に広がる「アンボセリ国立公園」。

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絵に描いたようなサバンナの風景が広がり、動物園でしか見たことのない様々な野生動物たちがそこら中にいます。

地図に書かれたキャンプ場に到着して驚きました。
キャンプ場とは言っても、水道とトイレがあるだけで、ガードマンはおろかケモノよけの囲いさえも一切ないのです。
おまけに、キャンプをしている人は私たちのほかに誰もいません。

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日が暮れると、あたりは真っ暗。
いたるところから恐ろしい動物のうめき声が聞こえてきます。
それでも、彼女は一切文句を言いませんでした。

最初の夜は二人とも寝られず、夜通し、得体の知れぬ動物の鳴き声を聞きながらすごしました。

知ってますか? あのおとなしいシマウマだって、何とも不気味な鳴き声を発するんです。外に何がいるかわからない恐怖。

マジで怖い……。

目を閉じても、開けても変わらぬ漆黒の闇。

テントのすぐ外をけたたましく走り抜ける動物たちの足音。

ライオンとおぼしき、低く不気味なうなり声も時折聞こえます。

それでもどうにか何事もなく最初の夜が明け、二日目の夜は少し安心して二人とも眠りに落ちました。

ゾウに襲われた理由

ゾウがやって来たのは、その夜の明け方5時ごろのことです。

後で知ったのですが、ゾウは、私たちの食料を狙ってテントを襲ったのでした。
動物の嗅覚はすばらしく、人間が持っている食べ物を嗅ぎ分けるのです。

そう言えば、キャンプ道具を借りる時、鍵のかかる木製の食料箱を渡され、「この中に食料を入れろ」と指示されました。
本当は、その箱に鍵をかけ、テントから離れた場所に置いておかねばならないのだそうですが、私たちはそんなことは思いもせず、大事にテントの中に隠していたのです。

私たちのテントを襲ったゾウは、すぐに食料箱をみつけ、中をあさり始めました。

缶詰が多かったので、闇夜に「カラ〜ンカラ〜ン」と、金属音が響きます。
逃げ遅れた元カノが、ゾウの前で転がっていた瞬間も、「カラ〜ンカラ〜ン」と、不気味でちょっと場違いな音が、ずっと鳴っていた、そんな記憶があります。

いずれにせよ、気が動転していて記憶は定かでありません。
すべては、一瞬の悪夢のようでした。

後日、彼女は「ゾウの鼻が身体に触れた」と、ぞっとするような証言をしました。
そして、「助けにきてくれなかった」と、事あるごとに私を非難します。

でも、あのシチュエーションでは、「てんでんこ」で逃げるしかなかった。
そう、自分の身は、自分で守るしか……。
津波に対する三陸の教えは、ゾウにも当てはまるべきだ……。

などと自分に言い訳しつつも、一人で逃げたことは私の負い目となり、その後の人生に大きな影響を与えることになったのです。

それでも今思うのは、ただただ、彼女が無事だったことに対する「感謝」です。

そうでなければ、私は、彼女の両親のもとにいき、「娘さんは、ゾウに踏みつぶされました」と、あまりに非現実的な報告をしなければならなかったのですから……。

そんなことにならなくて、本当によかった。

そして、彼女と私は、その年の8月、結婚しました。

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食料はテントから離れた場所に

事件の経緯を読んでいただければ明らかなように、私がお伝えしたい教訓はただ一つです。

食料は夜間、箱に入れて鍵をかけ、テントから離れた屋外に置く

町から遠く離れたサバンナのど真ん中では食料は容易に買えません。貴重品です。だからと言って、私たちのようにテントの中に隠していると、ゾウに襲われるかもしれません。

ゾウは、視野が狭いそうです。特に夜間はよく目が見えないようです。ただただ、食べ物の匂いがする方向に進んできます。

もし、そこに人が寝ていても、ゾウは御構いなしです。

缶詰だから匂いがしないだろうと、高をくくらない方が良さそうです。

実際には缶詰から匂いは出ないと思いますが、他の食料に引きつけられたゾウは缶詰も潰して食べていました。

アフリカでキャンプをしようと計画している方がどれほどいらっしゃるかわかりませんが、安全第一なら多少お金が高くてもツアーに参加することをお勧めします。

もし自分たちだけでキャンプしようという勇気ある方は、くれぐれも食料を屋外に置いてお休みください。

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