ブドウも終わり、11月に収穫できる果物といえば柿だ。
我が家にも何本かの柿の木があり、その多くは「甘柿の王様」とも呼ばれる富有柿らしい。

果樹栽培の本によれば、「実をつけたままにしておくと木の養分が失われてしまい、翌年に花や実がつきにくくなるので、落葉前には収穫するようにしましょう」と書いてある。
とても我が家だけでは消費し切れないほどの実がついているが、せっかく授かった実なので全部収穫して余ればまたこども食堂などに寄付しようと考えた。

脚立を持ち出して手の届く枝についた柿をまず採っていく。
なかなか立派な柿で、これならばひと様に差し上げても恥ずかしくはなさそうだ。

とりあえず味見と、皮をむいて食べてみる。
自分で皮をむいて柿を食べたのは初めてかもしれない。
伯母から時々柿が届いたことはあったが、店で売られている柿に比べて小ぶりでタネが多かった印象があり、ブドウに比べて岡山の柿の評価は私の中で高くなかったからだ。
ところが、今回食べた富有柿は実が大きくてタネがほとんどなく、しかも甘い。
あれ、こんなに美味しかったっけ?・・・正直そう思った。

残念ながら我が家の息子たちは全員柿が嫌いなので、ブドウのように収穫した柿を贈る先がない。
そこでまず吉祥寺の妻宛に送り、弟の家に送り、岡山市内で一人暮らしをしている母のマンションに届けた。
これで最初に採った柿のほとんどは納屋から消えたのだが、まだ木にはたくさんの柿の実が残っている。
しかも高いところにあり、取りにくいのだ。

そんな時、ホームセンターでいいものを見つけた。
愛用している小型の電動チェーンソーと同じ「工進」というメーカーの製品で、充電式のポールチェーンソー。
高枝バサミと同じ要領で最長2.3メートルまで伸縮がきく優れものだ。
値段は2万680円。
脚立の上での作業にいささか不安を感じていたので、妻に相談することもなく独断で購入した。

家に戻り早速組み立てる。
このメーカーのチェーンソーは特別の道具を使うことなく簡単に組み立てられる。
おまけに充電式なので、面倒な給油も必要なく、バッテリーを充電するだけで使える。
さらにいいのは、すでに使っている小型のチェーンソーと同じバッテリーを使い回せるのだ。

その日のうちにポールチェーンソーを持ってお墓のところに行き、手の届かない場所にある柿を枝ごと切り落とし始める。
果樹栽培の本によれば、プロ農家は果樹の高さを抑えて作業しやすい高さにコントロールするのだという。
我が家の柿の木はどれも上に伸びる枝を放置したままなので、手が届かない場所に実ができてしまうことがわかった。
柿の木の剪定は冬にやるのが一般的らしいが、秋に収穫とともに高く伸びすぎた枝を切ることはやっていいと書いてあった。

上に伸びた枝の根元にポールチェーンソーを押し当ててハンドルを握るとあっという間に枝が切れる。
これはいい!
先月裏庭の柿の木を切ってもらったシルバーさんはノコギリで一生懸命切っていたが、柿の木は硬いので結構骨が折れる。
それに比べてさすがチェーンソーは威力が違う。
しかも切った枝は他の枝に引っかかって地面に落ちることはほとんどないので、柿の実が潰れることもなくあっという間に高い場所にあった枝を引き下ろすことに成功した。
高い枝がなくなり見た目もだいぶスッキリした。

地上にさえ降りてくれば、あとはハサミで1個ずつ実を枝から切り離すだけだ。
脚立のグラつきを心配することなく、地に足をつけたまま作業は短時間で終了した。

最後は高枝バサミを使って、残った実を全て収穫する。
収穫した柿は墓の回りの2本だけで、ショッピングかご2個学生時代いっぱいになるほどだ。
こうしてお墓のまわりに植えられた柿の木は全ての実がなくなってスッキリし、樹高も少し低くなった。

最終的に収穫した柿の数は200個ぐらいになったので、岡山市内の宇野小学校で今日開かれるこども食堂に60個、北長瀬にあるコミュニティーフリッジに60個を寄付することにした。
コミュニティフリッジ用の柿は、分けやすいように5個ずつ小袋に詰めて持っていった。
今年の夏、余ったブドウの有効活用ということで始めた寄付だが、柿もとても喜んでもらえ満足感を覚える。

お店ではどのくらいで売られているんだろうと、帰りにスーパーで確認してみると、5〜6個の富有柿が入った袋が500円ほどで売られていた。
買えばそれなりの値段がするので、困窮家庭の中には喜んでくれる人もいるだろう。
放ったらかし栽培なので、柿の表面が黒くなっていたり、大きさがまちまちだったりするが、完全無農薬であることは保証できる。
来年以降も、柿はブドウと並ぶ大事な寄付商品となりそうである。

柿の木の剪定で味をしめた私は、ポールチェーンソーを持って今度は柚子の木がある畑に向かった。
今年の夏、クズの蔓が周辺から伸びてきて、柚子も栗の木も完全にクズの葉に覆い隠されてしまったのをなんとかしたいと思ったからだ。
先月、栗の木を救出するために格闘したが、まだ柚子の木までは手が回っていなかった。

そこでポールチェーンソーを使って、まずクズの通り道になっていた柿の木を切ってみる。
隣の耕作放棄地で発生したクズはこの柿の木に蔓を伸ばしてよじ登り、さらに隣接する柚子の木に覆いかぶさっていたのだ。
ここでもポールチェーンソーの実力は想像以上だった。
そこそこ太い枝も難なく切ることができた。
見かけによらずパワーがある。

絡まりついたクズの太い蔓も簡単に切断でき、隣の柿の木はだいぶ小さくなった。
クズに頭上を覆われ鬱蒼としていた空間に太陽の光が差し込む。
またクズに隠れてどのような樹形かもわからなかった柚子の木が全貌を表した。
柚子の実も少ないながら何個かできていた。

果樹栽培の本によれば、柚子のよくある失敗は木が高くなりすぎ、実が高いところばかりにつくことだと書かれていた。
あまりに高木になってしまうと収穫ができません。このような時は、思い切って、主幹を手の届く位置で切りましょう。1〜2年は実をつけないことが多いですが、その後伸びた新しい枝に実がつき始めます。こうなってしまう前に、早めに主幹を切って、横に広げるようにしておくことが大切です。
引用:おいしい果樹の育て方
私もこの指導に従って、柚子の中心部にある高く伸びた幹を3本ほど切った。
柚子というのは物凄い鋭い棘がたくさんついていて、切断した枝が少しも落ちてこないのだが、それをなんとか高枝バサミでつまんでひっぱり力づくで地上に下ろした。

ポールチェーンソーの活躍により、柚子救出作戦は意外なほど呆気なく終わった。
これで来月の冬至には、また柚子湯が楽しめそうだ。
そして来年には、クズの大群が攻めてくる前に、先手先手で柚子と栗を守る決意を固める。
ポールチェーンソーは、クズとの戦いに登場した私の秘密兵器となるだろう。

妻からはこの冬、庭木の剪定も求められていて、ブックオフで剪定に関する本も買ってきた。
少し読んでみると、切るべき枝がなんとなくわかってきた気がする。
来月はこの本の教えに従って、庭木や果樹の剪定を始めてみるつもりだ。
充電式伸縮ポールチェーンソー。
これぞまさに今、私に必要な武器なのである。
徐々に道具が充実し、私の農業ライフも少しずつ本格的になりつつあるようだ。
1件のコメント 追加