起業家

サイバーエージェントの藤田晋社長が書いた「起業家」という本を読んだ。

ITバブルを生き延びて日本を代表するIT企業に成長したサイバーエージェントの舞台裏を正直に書いたものだ。

img_5744

この中で、意外なことが書かれていた。サイバーエージェントはインターネット広告代理店というイメージが強いが、本当はメディア事業を柱にしたいと思っていたというのだ。藤田社長は「21世紀を代表する会社を創る」ことを標榜している。そのためにこだわったのがブランド力のあるメディア事業を立ち上げることだった。

ライブドアや楽天がマスコミを騒がせていた頃、我々テレビの人間はインターネットに飲み込まれることを恐れた。猛烈な勢いで急成長するIT企業は、テレビ局の買収に動いた。テレビで働く人間たちは、テレビが時代遅れのメディアになってしまったと感じた。

img_1607

ところがIT企業の側から見ると、自らメディアを立ち上げることは困難で、失敗を重ねていたのだ。クライアントのニーズに合わせることは得意でも、目に見えない一般大衆のニーズをつかむメディア事業は、まったく違うノウハウがいるのだ。

しかもネットメディア界は、yahooの一人勝ち。インターネットの世界では、勝者がすべてを総取りする。いろいろなサービスを作ることは容易だが、利用者を増やし収益を上げられるようなメディアはなかなか育たない。だから広告や金融といった既存の企業を買収し、売り上げを増やすしかなかった。成長が止まれば投資家が一斉に逃げ出し、たちまち会社は立ち行かなくなるのだ。

期待値だけで巨額の資金を集めた起業家たちは、その要求に応えるため無理に無理を重ねていたのだ。その代表がホリエモン。もともとは麻雀でも慎重なタイプだったという。それが近鉄球団の買収に名乗りを上げたことをきっかけに、金をかけずに会社の知名度を上げる方法を発見した。そしてフジテレビの買収を仕掛ける。ライブドアの株価は急上昇する。実態とは関係なく。

ホリエモンもメディアが欲しかったのだ。ブランド力のあるメディアがあればインターネットを使っていくらでも稼げる。メディアで文化を創造するという発想ではなく、ただ自らの企業を大きくするために必要なことだった。

img_1669

一方、サイバーエージェントは買収ではなく、地道に社員を育てる道を選んだ。一時はライブドアに大きく水をあけられた。しかし、ホリエモンは逮捕され、藤田はアメーバを立ち上げた。ホリエモンが保釈された翌日、藤田は纏寿司の握りを用意し、ヒルズの部屋で2人で食事をしたという。そしてメディア事業を追い求めた藤田はついに、テレ朝と組んで映像メディアにも進出を果たした。AbemaTVは、順調に視聴者を増やしているという。しかし最終的にはコンテンツだ。私も最初だけ試しで見てみたが、もう観ることはない。果たして一般の人たちはどうなのだろうか。

10年後、メディアの形はどのようになっているだろうか。想像もつかない。

コメントを残す