税所篤快

社会起業家・税所篤快(さいしょあつよし)という若者に興味を持った。

図書館でたまたま手にした「ゆとり世代の愛国心」という本を読んだためだ。

彼は早稲田大学在学中、バングラデシュに渡り、DVDを使った映像授業「eEducation」というNGOを立ち上げた。ヒントは彼が通った「東進ハイスクール」だった。

活動を始めた最初の年、1人をダッカ大学に合格させた。ここから彼の活動はバングラデシュ政府、世界銀行などを巻き込み急拡大して行く。彼は活動の拠点をルワンダ、ヨルダン、ハンガリーなど世界各地に広げ、五大陸での教育革命(なぜか「五大陸ドラゴン桜」と呼んでいる)を掲げている。

ものすごい行動力だ。

ただ、昔の私と重なる面も感じるが、私のような横着者とは突破力が違う。

そんな彼の活動拠点の一つがアフリカの未承認国家「ソマリランド」だという。

私はこの本を読むまで、ソマリランドという名前を聞いたことがなかった。ソマリランドは内戦が続くソマリアの北西部、旧イギリス領ソマリランドのエリアをさし、1991年にソマリアからの独立を宣言したのだという。

私は1984年、飢餓の取材でソマリアを訪れたことがある。ひどい取材だった。

エチオピアとの国境に近い内陸部。見渡す限りの不毛の大地に枯れ枝で作った粗末な掘っ立て小屋が並んでいた。国連が入ったエリアではブルーシートで作った難民キャンプもできていたが、毎日多くの子供たちが死んでいった。

何の食料も育たない干ばつの恐ろしさ。さらには統治機構の崩壊した国家の恐ろしさを知った。当時のソマリアは独裁国家で、支援物資は闇市に横流しされ被災者に十分な食料は届かない。それでも、今のソマリアよりは当時の方がましだった。

1980年代に始まったソマリアの内戦。1991年に独裁政権が崩壊すると、数十の武装集団が割拠し国中が内戦状態に陥った。

誰と誰が戦っているのかもわからないような無政府状態。国連PKOも多くの犠牲者を出して撤退した。世界から見捨てられた国で不毛な戦いが続き、テロリストたちが生産されていく。外国人は拉致され人質とされる。ジャーナリストも入ることのできない世界だ。

そんなソマリアの中で、ソマリランドの治安は比較的安定しているという。すでに独立宣言から四半世紀、安定した統治が行われている。そこに税所氏は単身乗り込み、教育支援を提案、なんとソマリランド初の大学院を立ち上げた。文字通りクレージーな若者である。

彼に一度会ってみたいと思った。

ネットでその後の彼の活動を調べてみた。どうもはっきりしない。リクルートに入ったという情報もある。米ハーバードを目指して猛勉強中という情報もある。

どうやら「eEducation」の活動は他の人に任せ、新たな展開を模索しているようなのだ。

彼の本には、彼が尊敬する様々な先輩や仲間が登場する。

一橋大学の米倉誠一郎教授(当時)、バングラデシュでミドリムシビジネスを成功させたユーグレナの出雲充社長、慶応大学在学中にクラウドファンディングサイト「READYFOR?」を立ち上げた米良はるか社長。

『この「READYFOR?」のサービスが面白いのは、目標金額が期限内に達成できなかった場合、出資者に全額が返金され、資金調達を目指す人には1円も入らない点だ。つまり、オールオアナッシングなのだ。

米良さんは「READYFOR?」を立ち上げる前、パラリンピックへの出場を目指すアスリートの支援活動をしていた。その時「目標と期限が明確でない限り、人間の寄付行動は盛り上がらない」という教訓を得た。一見シビアにも見える「READYFOR?」の仕組みは、そこから考え出されたそうだ。』

なるほど、面白い。

もう一人、中竹竜二さんという人が登場する。彼はカリスマ指導者・清宮克幸氏の後任として早稲田大学ラグビー部の監督をやった人だ。清宮氏と違い、中竹氏は「日本一オーラのない監督」というスタイルを貫き、チームを二度、全日本優勝に導いた。

『そんな彼が提唱する「期待の外し方」には、大きく分けて次の二つがある。

①ゴールを相手とすり合わせる。

②「相手の期待には応えない」と決意する。

いずれもいたってシンプルなものだ。』

税所氏は、ワタミの「みんなの夢アワード」を受賞したが、ワタミから求められる社会起業家としての成功と自らが本当にやりたいことの間で苦しんでいた。

『結局、相手がなってほしいと期待している姿にも僕はなれず、自分がなりたい姿も忘れ、しまいにはエネルギーを失った亡霊となってしまったのだ。そうした経験があったことから、中竹さんの言葉は一層僕の心に重く響いた。』

自分の課題を抱えながら行動していると、人のアドバイスが我が事として染み入ってくるものだ。

素直な感性とピュアな目標、そして尋常ならざる行動力を身につけた税所篤快という若者に今後も注目していきたいと思う。

日本の「ゆとり世代」、世界を舞台に活躍してもらいたいものだ。

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