今日は春分の日。東京はこの三連休、ずっと天気がいい。気温は18度まで上がり、4月上旬から中旬の気候だという。
花粉が飛び、黄砂も飛んでいる。快晴にもかかわらず空は真っ白だ。そういえば今年はPM2.5の話がニュースにならなくなった。もう慣れっこになったのか、他のニュースが賑やかなせいか・・・。
図書館で暦の本を借りて来た。旧暦の「七十二候」に関する本だ。しかも3冊。
詩人の白井明大さんの「日本の七十二候を楽しむ」、俳人の森乃おとさんの「七十二候のゆうるり歳時記手帖」、そして文筆家・広田千悦子さんの「くらしを楽しむ七十二候」の3冊だ。
そもそも私は旧暦に対する知識がまったくない。もちろん七十二候の何たるかも知らずに生きて来た。若い時にはまったく興味がなかったし、特に不便もなかった。
しかし、少し時間にゆとりができ、公園を歩くことが増え、さらにこうしてブログなどを書き始めると、季節の変化の細部が気になるようになった。その結果として、暦の本を手に取ることとなったのだ。
年をとったといえばそれまでだが、こうした自分の変化は好ましい変化だと勝手に喜んでいる。
四季の移ろいと一体となって歳を重ね、人生の後半戦を穏やかに過ごす。その中で、自分が何を感じ、何を発見するのか、知らない自分との出会いが楽しみである。
それでは3冊の本から、旧暦の説明を引用させていただく。
まずは白井さんの著書から。男性らしい簡潔な記述でわかりやすい。
『人は昔から、太陽や月のめぐるリズムを、季節や月日などを知る手がかりにしてきました。地球が太陽のまわりを一周する時間の長さを一年とするのが、太陽暦。月が新月から次の新月になるまでを一ヶ月とするのが、太陰暦です。 旧暦というのは、太陽暦と太陰暦を組み合わせた太陰太陽暦のことで、明治五年に「改暦の詔書」が出されるまで長い間親しまれてきた、昔ながらの日本の暮らしの暦です。』
ここから森乃さんの著作にうつる。
『突然、旧暦明治5年12月3日が、新暦明治6年1月1日となったわけですから、当時はさぞ混乱したことでしょう。 それまで日本では、月と太陽の運行を取り入れた「太陰太陽暦」を、千年以上も使っていました。その暦は古代中国で生まれたものです。より季節を正確に知るために、二十四節気と七十二候といった季節の指標も発達しました。江戸時代に、天文暦学者の渋川春海が、日本人によるはじめての暦、「貞享暦」を編纂します。その後、三度改定され、改暦直前まで使われていた「天保暦」が狭義での旧暦です。』
『太陰暦では、夜空を見上げれば、月の形で日付がわかり、とても便利です。けれども、3年に1ヶ月ほど暦と季節がずれていきます。 太陰太陽暦では、暦と季節のずれを調整するために、閏月をおきます。その時期は、およそ19年に7回。例えば、4月の次に入った閏月は「閏四月」と呼ばれ、1年が13ヶ月となります。』
そしていよいよ二十四節気と七十二候の説明へ。引き続き森乃さんの著書からの引用だ。
『古代中国の黄河流域、現代の華北地方で生まれた「二十四節気」は、太陽の運行を基準にした太陽暦です。「太陽の季節点」ともいえます。 地球は、太陽のまわりを365日かけて公転します。「春分点」をスタート地点とし、地球が一周する360度を、15度ごとに24等分します。 ひとつの区切りは約15日間。それぞれの期間に「清明」「穀雨」などの名前をつけ、自然現象の変化を示しています。』
『ひとつの節気をさらに三つに分け、約5日ごとに1年を72等分した暦が、「七十二候」です。“気候”という言葉も、「節気」と「候」から生まれました。 七十二候は、気象や動植物の移ろいを短い言葉で表します。季節の兆しを感じられる暦であり、農耕時期の目安ともなりました。 やはり中国から伝わりましたが、日本の気候風土に合わせて、何度か改定されています。有名なものは渋川春海編の「本朝七十二候」。現在は、明治7年の「略本暦」に掲載されている七十二候が、主に使われています。』
気候の語源は、「節気」と「候」でしたか・・・。
『二十四節気と七十二候のほか、日本独自のものとして、「雑節」があります。二十四節気を補い、より日本人の暮らしや風土に寄り添った、重要な季節の目印です。 一般的に次の9つが、雑節とされています。 節分、彼岸、社日、八十八夜、入梅、半夏生、土用、二百十日、二百二十日。』
『大昔、農耕をはじめた人類は、太陽の運行によって日を数え、暦を作りました。その中で「特別な日」とされたのは、もっとも昼の長い夏至と短い冬至。そして昼夜同じ長さの春分と秋分です。暦の基礎となったのは、この「二至二分」でした。その4等分の中心に立春、立夏、立秋、立冬の「四立」を置き、8等分したものが「八節」です。その期間は45日。これをさらに3等分したのが二十四節気です。』
なるほど。日頃使っている季節の用語が整理できた。天気予報やニュースでごく普通に使ってきた用語には古代中国から繋がる人類普遍の知恵があったということだ。
ということで、「七十二候」とは以下の通り。
【春】
立春 りっしゅん 2月4日頃
・初候 東風凍を解く はるかぜこおりをとく (ふきのとう、白魚、春一番)
・次候 黄鶯睍睆 うぐいすなく (梅の開花、さやえんどう、にしん)
・末候 魚氷を上る うおこおりをいずる (あしたば、いわな、めじろ)
雨水 うすい 2月19日頃
・初候 土脉潤い起こる つちのしょううるおいおこる (春キャベツ、とびうお、ワカメ)
・次候 霞始めて靆く かすみはじめてたなびく (菜の花、おぼろ月、しろうお)
・末候 草木萌え動る そうもくめばえいずる (ひな祭り、ひしもち、はまぐり)
啓蟄 けいちつ 3月5日頃
・初候 蟄虫戸を啓く すごもりむしとをひらく (わらび、さわら、すみれ)
・次候 桃始めて笑く ももはじめてさく (新たまねぎ、さより、桃の開花)
・末候 菜虫蝶と化る なむしちょうとなる (あおやぎ、葉わさび、かたばみ)
春分 しゅんぶん 3月20日頃
・初候 雀始めて巣くう すずめはじめてすくう (ふき、ほたてがい、たんぽぽ)
・次候 桜始めて開く さくらはじめてひらく (さくらえび、桜餅、こぶし)
・末候 雷乃ち声を発す かみなりすなわちこえをはっす (うど、真鯛、もくれん)
清明 せいめい 4月4日頃
・初候 玄鳥至る つばめきたる (初がつお、つばめ、お花まつり)
・次候 鴻雁北 こうがんかえる (たらのめ、ほたるいか、雁風呂)
・末候 虹始めて見る にじはじめてあらわる (めばる、みつば、小楢)
穀雨 こくう 4月20日頃
・初候 葭始めて生ず あしはじめてしょうず (チューリップ、アジ、新ごぼう)
・次候 霜止みて苗出ずる しもやみてなえいずる (よもぎ、草餅、いとより)
・末候 牡丹華さく ぼたんはなさく (八十八夜、牡丹、さざえ)
【夏】
立夏 りっか 5月5日頃
・初候 蛙始めて鳴く かわずはじめてなく (端午の節句、金目鯛、人参、藤)
・次候 蚯蚓出ずる みみずいずる (鵜飼い開き、いさき、いちご)
・末候 竹笋生ず たけのこしょうず (葵祭、たけのこ、あさり)
小満 しょうまん 5月20日頃
・初候 蚕起きて桑を食む かいこおきてくわをはむ (三社祭、きす、そらまめ)
・次候 紅花栄う べにはなさかう (潮干狩り、車海老、しそ)
・末候 麦秋至る むぎのときいたる (衣替え、べら、びわ)
芒種 ぼうしゅ 6月5日頃
・初候 螳螂生ず かまきりしょうず (稽古始め、あいなめ、らっきょう)
・次候 腐草蛍と為る くされたるくさほたるとなる (田植え、スルメイカ、蛍)
・末候 梅子黄ばむ うめのみきばむ (入梅、梅、すずき)
夏至 げし 6月21日頃
・初候 乃東枯るる なつかれくさかるる (鮎、夏みかん、うつぼぐさ)
・次候 菖蒲華さく あやめはなさく (晴耕雨読、かんぱち、みょうが)
・末候 半夏生ず はんげしょうず (祇園祭、はも、おくら)
小暑 しょうしょ 7月7日頃
・初候 温風至る あつかぜいたる (七夕、ほおずき市、こち)
・次候 蓮始めて開く はすはじめてひらく (迎え火、かれい、とうもろこし)
・末候 鷹乃ち学を習う たかすなわちわざをならう (土用入り、うなぎ、やませ)
大暑 たいしょ 7月22日頃
・初候 桐始めて花を結ぶ きりはじめてはなをむすぶ (うに、きゅうり、そうめん)
・次候 土潤うて溽し暑し つちうるおうてむしあつし (あなご、枝豆、蛍狩り)
・末候 大雨時行る たいうときどきにふる (蝉時雨、たちうお、すいか)
【秋】
立秋 りっしゅう 8月7日頃
・初候 涼風至る すずかぜいたる (桃、しじみ、つゆくさ)
・次候 寒蝉鳴く ひぐらしなく (灯籠流し、ひぐらし、ほおずき)
・末候 蒙き霧升降う ふかききりまとう (まだこ、新ショウガ、おんぶばった)
処暑 しょしょ 8月23日頃
・初候 綿柎開く わたのはなしべひらく (綿花、すだち、かさご)
・次候 天地始めて粛し てんちはじめてさむし (二百十日、ぶどう、野分)
・末候 禾乃登る こくものすなわちみのる (いわし、いちじく、まつむし)
白露 はくろ 9月7日頃
・初候 草露白し くさのつゆしろし (重陽の節句、秋の七草、しまあじ)
・次候 鶺鴒鳴く せきれいなく (あわび、梨、オシロイバナ)
・末候 玄鳥去る つばめさる (けいとう、昆布、なす)
秋分 しゅうぶん 9月22日頃
・初候 雷乃ち声を収む かみなりすなわちこえをおさむ (おはぎ、松茸、彼岸花)
・次候 虫蟄れて戸を坏ぐ むしかくれてとをふさぐ (中秋の名月、さんま、里芋)
・末候 水始めて涸るる みずはじめてかるる (稲刈り、銀杏、きんもくせい)
寒露 かんろ 10月8日頃
・初候 鴻雁来る こうがんきたる (菊、ししゃも、しめじ)
・次候 菊花開く きくのはなひらく (神嘗祭、はたはた、栗)
・末候 蟋蟀戸に在り きりぎりすとにあり (さば、かき、真鶴)
霜降 そうこう 10月23日頃
・初候 霜始めて降る しもはじめてふる (十三夜、ほっけ、紫式部)
・次候 霎時施る こさめときどきふる (初時雨、きんき、山芋)
・末候 楓蔦黄ばむ もみじつたきばむ (紅葉、かわはぎ、サツマイモ)
【冬】
立冬 りっとう 11月7日頃
・初候 山茶始めて開く つばきはじめてひらく (落ち葉だき、ひらめ、みかん)
・次候 地始めて凍る ちはじめてこおる (七五三、毛ガニ、ほうれん草)
・末候 金盞香 きんせんかさく (水仙、甲烏賊、れんこん)
小雪 しょうせつ 11月22日頃
・初候 虹蔵れて見えず にじかくれてみえず (新嘗祭、くえ、りんご)
・次候 朔風葉を払う きたかぜこのはをはらう (木枯らし、白菜、やつで)
・末候 橘始めて黄ばむ たちばなはじめてきばむ (橘、ぼら、セロリ)
大雪 たいせつ 12月7日頃
・初候 閉塞く冬と成る そらさむくふゆとなる (雪吊り、針供養、ぶり)
・次候 熊穴に蟄る くまあなにこもる (正月の事始め、牡蠣、ねぎ、椿)
・末候 鱖魚群がる さけのうおむらがる (鮭、にら、羽子板市)
冬至 とうじ 12月21日頃
・初候 乃東生ず なつかれくさしょうず (柚子湯、まぐろ、千両・万両)
・次候 麋角解つる さわしかのつのおつる (歳の市、かぼちゃ、鯉)
・末候 雪下りて麦出ずる ゆきわたりてむぎいずる (正月、伊勢海老、雀)
小寒 しょうかん 1月5日頃
・初候 芹乃ち栄う せりすなわちさかう (春の七草、どんど焼き、たら)
・次候 水泉動 しみずあたたかをふくむ (鏡開き、春菊、ひいらぎ)
・末候 雉始めて雊く きじはじめてなく (あんこう、かぶ、きじ)
大寒 たいかん 1月20日頃
・初候 款冬華さく ふきのはなさく (赤貝、小松菜、なんてん)
・次候 沢水腹堅める さわみずこおりつめる (わかさぎ、みずな、福寿草)
・末候 鶏始乳 にわとりはじめてとやにつく (節分、キンカン、恵方巻き)
今日は本当に勉強になった。