<吉祥寺残日録>アメリカの民主党と日本の民主党 #200820

「民主党」という名前に聞いて心が踊らないのはなぜなのだろう?

民主主義というのは圧政と戦った先人たちが多くの犠牲のもとに勝ち取った価値、一般庶民が主権を行使できる人類史上画期的な政治システムである。

しかし今、その民主主義は危機に瀕している。

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共産党の一党独裁が続き、個人崇拝的な全体主義の色彩を強めている中国の台頭がその一つの原因である。

香港では、その本性を隠そうともしなかった。

ソ連の崩壊によって、戦後世界を二分してきた社会主義陣営が崩れ去ったのは、もう30年も前の話だ。

一時は世界各地に広がっていた社会主義国は、その特徴である計画経済が著しい非効率を生み、構造的に独裁と腐敗の蔓延を招いて多くの国が自滅の道を辿っていった。

しかし、鄧小平氏により改革開放路線を採用した中国はそれまでの社会主義国とは全く異質な中央集権的統治機構を作り出した。

「世界の工場」として今や世界のサプライチェーンの中核をなし、短期間のうちに世界第2位の経済大国に躍り出ただけでなく、ITと社会監視が一体となった独特な全体主義社会に成長したのだ。

新型コロナウィルス対策においては、その徹底した上意下達の社会システムが功を奏し、現時点では世界で最も感染の押さえ込みに成功した国とも見做されるようになっている(私個人は疑っているが・・・)。

その一方で、欧米を中心とする民主主義国家は、政府の方針が二転三転して混乱を招き、結果的に感染爆発に今も苦しんでいる。

与野党がお互いの足を引っ張りあって物事がなかなか決められない。

民主主義というシステムには、宿命的にそうした弱点がつきまとう。

今回のコロナ対策でも、その弱点を曝け出している。

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コロナによって民主主義の危機が一段とクローズアップされる時代にあって、本来なら民主主義のリーダーであるはずのアメリカではトランプ大統領の非民主的な政治が続いている。

そんなトランプ政治にストップをかける大役を期待されているのが、民主党のバイデン候補だ。

異例のオンライン形式で行われているアメリカ民主党大会。昨日、バイデンさんが正式に民主党の大統領候補に選出された。

しかし、アメリカからの報道を見ていても、湧き立つような高揚感は感じられない。

アメリカの有権者の心を反映するように、民主党大会を伝えるテレビの視聴率も前回のヒラリーさんの時よりずっと低かったという。

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もちろんオンラインによる前代未聞の党大会ということで、派手な演出もなく、ショーとしての魅力に欠けただけかもしれないが、日本から眺めているとやはりバイデンさんに多くの人々を熱狂させるような魅力がないことが大いに関係しているように思う。

バイデンさんは苦労人であり、支持者たちが言うようにきっと「いい人」なんだろう。

でも、面白くない。

何が飛び出すかわからないトランプさんを見慣れた目には、とても退屈に見えるのだ。

「トランプさんではヤバい」と言うアメリカ人の常識が、かろうじてバイデンさんをリードさせているが、果たして退屈な常識が投票日まで維持できるのか、個人的には甚だ心配である。

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やっぱり、トランプ大統領というキャラクターは、はちゃめちゃだが面白い。

理屈っぽいよりも、明るく面白いものを好むアメリカ人が退屈な「スリーピージョー」に本当に投票するのか、世論調査の数字など何かあればころっと変わってしまうものだ。

さらに、株価が上昇しているのもトランプさんに有利に働きそうな気がする。

巨大IT企業に世界中のマネーが流れ込んでいるため、ナスダック市場に続き、S&Pも史上最高値を更新しV字回復を果たした。それに引っ張られるようにダウもじりじりと上昇していて、このまま秋まで株高が続けば、個人資産を株式で運用している高齢者を中心に「株高=トランプ」の流れは無視できない影響を及ぼしそうな気がする。

バイデンさんが主張している民主主義的な常識を、どこまでアメリカの有権者が大切に思っているのか、個人的には今回の選挙結果とても気になっている。

一方、日本の「民主党」でも大きな動きがあった。

野党第一党の立憲民主党と第二党の国民民主党の合流が正式に決まったのだ。

昨日開かれた国民民主党の両院議員総会で、党を解党し立憲民主党と合流することを賛成多数で決めた。

合流新党には野田前総理など無所属で活動していた旧民主党の議員たちも参加して衆参合わせて150人以上の議員が所属する最大野党が誕生することになる。

とはいえ、中心メンバーはかつての民主党とほとんど変わっておらず、国民民主党の玉木代表や前原氏、山尾氏らは不参加を表明している。

目玉になりそうな顔が見当たらないのだ。

今野党に必要なのは、安倍政権に不満を持つ国民の期待を集めるような新しい顔である。

それが、見つからない。

おそらく枝野さんがそのまま新党の党首に就任するのだろう。

でも、枝野さんも与党を追及する弁舌は鋭いが、決して人気が出るタイプはない。

いつもながら、両党の合流の裏に小沢さんの影がチラつくのも、過去何度も同じようなシーンを見せられた気がして白けてしまう。

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話し合いと多数決によって問題を解決しようという民主主義は、確かに効率が悪い。

しかし、たとえ非効率であっても国民が政治に参加する民主主義は、絶対に守るべき政治システムだと私は信じている。

事実、かつて民主党には熱狂的な希望があった。

良し悪しは別として、ケネディがいた。オバマがいた。ルーズベルトもいた。

民主党イコール鳩山さんや菅さんだけではないのだ。

幾多の戦争を乗り越えて人類がようやく掴んだ民主主義という宝物。

世界中に独裁的な指導者が割拠する今だからこそ、「民主主義」という言葉に再び光を当てて、国民に新たな希望を感じさせるようなキラキラした「民主党」が誕生することを心の底から期待している。

1件のコメント 追加

  1. wildsum より:

    大賛成です。民主主義の欠点はあっても、決して、全体主義になってはいけないと思います。

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