MMT

最近テレビで「MMT」という言葉を聞くようになった。

MMTとはModern Monetary Theoryの略で、「現代貨幣理論」と訳される経済理論である。

ウィキペディアを見ると、こう書いてある。

『 現代経済の貨幣が借用書により成立していることを捉え、政府は税収に制約される必要はなく、任意の自国通貨建て国債発行により財政支出量を調整することで、望ましいインフレレベルを目指す経済政策を行うことを理論的主柱としている。』

よくわからないが、政府の財政赤字が拡大すれば同時に金利上昇と景気悪化を招くとして、財政赤字に警鐘を鳴らしてきた従来の経済理論に挑戦する非常識なものだ。

この理論は、「自国民が国債のほとんどを保有している国」のみで成り立つとされ、その具体的な例が日本だと言うのである。

アメリカ民主党29歳の新星で、将来の女性初大統領ともいわれているオカシオコルテス下院議員がMMTに支持を表明したことで、アメリカで激しい論争を巻き起こしている。オカシオコルテス氏は、社会主義者であり、弱者救済のために国債の大量発行を認めるべきとの立場だ。小さな政府を志向する共和党の主張とは絶対に相容れないものだが、トランプ政権下で財政赤字が急拡大しているので、事情は複雑化している。

これがアメリカ国内の論争だけであれば、さほど気にすることはないのだが、ここに来てにわかに日本国内でMMT論争が活発化しているのが気になる。

昨夜BS-TBSの「報道1930」に出演した自民党の西田昌司参院議員も、MMTへの支持を表明した。西田氏は元税理士で、稲田朋美氏と近く、いわば安倍シンパである。つまり、安倍さんの周囲でMMTを利用しようと言う勢力がいることを知ったのだ。

日本は世界的に見ても、圧倒的な借金国である。消費税引き上げをしようとしているのも、これ以上財政赤字を増やさないためだ。

ところが、安倍さんの周辺にはまたもや消費税引き上げ延期の動きが顕在化している。安倍さん周辺の思惑は、消費税延期で選挙に勝利し、憲法改正を実現することだ。これまでも二度、消費税延期で選挙に勝ってきた。今回は野党がますます脆弱なため、衆参ダブル選挙で自民党の破壊的な圧勝も予想される。

令和のお祭り騒ぎと来年の東京五輪を巧みに利用して、悲願だった憲法改正を実現するために、消費税を利用することは容易に想像できる。だから、マスコミも事あるごとにその点を質しているのだ。

それにしても、MMT。やはり危険な匂いがする。

確かに、これまでの経済理論が時代遅れになりつつあることは事実なのだろう。工業生産を中心とする経済を図るためのものであり、IT時代には必ずしも当てはまらない部分もある。

例えば、GDP。昨日発表された日本の1−3月期のGDPは年率2.1%のプラスとなったが、これは輸入が減ったことが主な原因で、経済の現状を正確に反映しているのか疑問が持たれている。GDPに変わる経済指標が使われるようになる日も近いかもしれない。

それでも、MMTは危険だ。政治家の足かせを外し、経済対策や高齢者対策名目で際限なく財政赤字が膨らむ可能性が高い。それは未来世代の借金であり、もし将来金利が上昇した時に、とんでもないツケを子や孫に残すことになる。

BSフジの「PRIME NEWS」には、自民党の伊吹文明氏と経済学者が出演していて、消費税の問題は経済状況で議論されるべきものではなく、世代間格差という観点が重要だと語っていた。こちらの議論の方がずっと正論だろうと私は思う。

誰しも、税金を払いたくない。それじゃなくても、今の生活が苦しいという。これは、自分が我慢するのは嫌だと言っているのと言っているのと同じだ。

このまま放置していると、将来国債が紙くずになるか、将来世代がとんでもない負担を負うことなるだけだ。それ以外の痛みを伴わない解決法がないから、これまでみんな苦労してきたのだ。

MMTが、それを解決してくれる魔法理論だとは私には到底思えない。

極左のオカシオコルテス氏と、保守の西田氏が共に支持するあたり、ポピュリズムの色彩が濃い。

安倍さんが、それを言い出さないことを祈りたい。

3件のコメント 追加

  1. dalichoko より:

    世界経済が極めて難しい局面に立っていることを示します。(=^ェ^=)

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