<吉祥寺残日録>超大国アメリカとアイヌの世界 #201023

午前10時から行われたアメリカ大統領選の候補者討論会を見た。

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世界一の超大国アメリカのトップを決める選挙にしては、どうも内容が乏しい。

トランプさんは、いつものように自分の自慢話をするか、嘘も交えつつ相手を攻撃するか。

バイデンさんも夢のある未来を語ることもなく、トランプさんの失政を攻撃するばかりだ。

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このテレビ討論を見つめるアメリカの有権者も、その主張を聞いて投票先を決める人はもうほとんどいないのではないかと思えるほど分断されている。

トランプさんとバイデンさんの主張は明確に異なっていて、有権者はそれぞれの立場によって自ずとどちらの候補に投票するかあらかじめ予想される選挙だ。

全米の支持率など、もはやあまり関係はない。

大半の州では、もう結果は見えているのだ。

今後重要になってくるのはマイノリティーの人たちの投票率、特に激戦州の有権者の投票行動が大きく勝敗に影響するだろう。

トランプさんは嫌だが、バイデンさんにも魅力を感じないという有権者が増えれば、劣勢を伝えられるトランプさんにも大逆転のチャンスはまだ残されている。

さらに、コロナ感染を恐れて投票に行かない人も民主党支持者の方が多いはずだ。

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さらに今回の大統領選挙が異常なのは、トランプさんが負けを認めず法廷闘争に持ち込む可能性が囁かれていることだ。

トランプ陣営は意図的に「郵便投票で不正が行われる」というデマを流し、支援者に投票所での監視活動を行うようにけしかけている。

投票日に何か事件が起きるかもしれないという、まるで独裁国家のような異常事態が心配されるのが、民主主義国のリーダーだったアメリカの現実なのだ。

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そうした中、トランプ大統領が指名した保守派の最高裁判事を承認する手続きが進んでいる。

これによって、連邦最高裁の判事の構成が、保守派6対リベラル派3と、かつてないほど保守寄りとなる。

トランプ大統領が敗北を認めず最高裁に判断を委ねた時、世界一の超大国アメリカは、民主主義の成れの果てのような惨状を呈することになるだろう。

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どうしてトランプさんのような不見識な人物がリーダーに選ばれるのか?

そこには、民主主義の限界が表れているように思う。

民主政治と衆愚政治はどう違うのか、そんな疑問を今回の米大統領選挙は私たちに突きつけているように感じる。

私は昨日、「ウポポイ」という新しいアイヌの博物館に行ったばかりなので、今日の討論会を聞きながら「幸せな社会」とは何かについて考えた。

アイヌのような狩猟採集民族は、自然と共存するしか生きることができない。

そのため、動物や植物、山や川、身の回りにある全てのものを「カムイ」として敬いながら自然と共存していた。

「カムイ」とは何か?

私にも定かには理解できなかったが、「アイヌ=人間」とは別の世界に暮らす神のような霊的な存在で、人間のことを常に気にかけていて、アイヌの食料となる動物や植物に姿を変えて地上に現れるという。

人間は、狩りをすることで「カムイ」を家に招いて丁重に祭り、その命をいただく。

「アイヌ」と「カムイ」の間には、共存共栄のような関係が成り立っていたのだという。

しかし、そうしたアイヌの文化は、「征服者」である日本人によって禁止され、強制的に日本社会に組み込まれていった。

明治政府が一方的に北海道を日本の領土に統合したのは明治2年のことだった。

琉球王国を併合した「琉球処分」よりも前の話だ。

そして多くの日本人が北海道へと移り住み、アイヌの時代は完全に終わった。

北海道や沖縄を統合した日本は、そのノウハウを朝鮮半島や台湾、さらには中国大陸へと広げていったように感じる。

欧米列強が世界を分割統治した帝国主義の時代、アイヌ同様、自然と共生して生きていた各地の少数民族社会がこの世界からほとんど消えてしまった。

「ウポポイ」の中にある「国立アイヌ民族博物館」で目にした一枚の地図。

こんな地図、世界史でも一度も見たことがなかった。

「19世紀の民族分布」と書かれたその地図には、かつて北海道から樺太、シベリアからアラスカにかけて暮らしていた少数民族の分布が示されていて、彼らは互いに交流しながら独自の経済圏を作っていたそうだ。

当時、アイヌの勢力圏は、北海道と樺太、千島列島。

ロシア極東からシベリアにかけては、オロチ、ウデヘ、ウリチ、ニヴフ、ナーナイ、ネギダール、エヴェンキ、エヴェン、サハ、チュクチ、コリヤーク、イテリメンなど、実に多くの民族がそれぞれの勢力圏で暮らしていた。

しかしこれらの諸民族は、毛皮を求めてシベリアに進出したロシア帝国によって、一気に呑み込まれていった。

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アメリカでも、先住民であるインディアン=ネイティブ・アメリカンズたちを制服した歴史がある。

一神教であるキリスト教は、歴史上たびたび異教徒の征服に大義を与えて来た。

穀物を栽培し、家畜を飼って、人間の力によって豊かさを手に入れた民族が、人口を増やし、武力を整え、周辺の他民族を征服する、それが人間の歴史である。

そうした社会では、権力と豊かさが追求され、勝者と敗者が常に生まれていく。

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トランプ的なるものが世界中に拡散している今、アメリカがどこに向かうのか、今後どのようなメッセージが発信されるのか、それは世界的な関心事だ。

高齢のバイデンさんにはまったく魅力を感じないが、まずはトランプさんに表舞台から消えてもらわねばならない。

憎悪が渦巻く強欲な社会ではなく、自然と共生した謙虚な社会へ。

アイヌの世界に戻ることはできないが、力によって消滅させられた少数民族の文化の中にも我々が学ぶべきものはたくさんある気がする。

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