<吉祥寺残日録>言論統制の気配? #200307

日本アカデミー賞の最優秀作品賞に「新聞記者」が選ばれた。

このニュースを聞いた時、かなり意外に感じた。

通称「内調」、内閣情報調査室を舞台にした組織的な世論操作を描いたかなり政治的な映画である。内調の権限を強化し、世論操作の道具に変えたのは安倍政権であり、文科省事務次官のスキャンダルやTBS記者の強姦事件もみ消しなど記憶に新しい出来事の背後で内調が動いたことをこの映画は描いている。

安倍政権を批判するこの映画公開にあたっては、事前の宣伝活動も行えず、メジャーな映画館での配給も行われなかった。しかし、口コミで評判が広がり、異例のロングラン上映となった。私も観に行った際には、リベラルな中高年の観客で映画館はいっぱいだった。

「どんな人たちが審査員をやっているのだろう?」

そんな疑問が湧いて、日本アカデミー賞について調べてみたら、日本アカデミー賞協会の協会員全員の投票で決まることになっている。日本アカデミー賞協会の入会資格は「わが国の映画事業に現在も含め3年以上従事していることを前提として、運営・実行委員会、又は賛助法人より推薦され認められたもの」となっている。つまり、広範な映画関係者の投票によって選ばれる賞なのだ。

昨今、至る所で政権への「忖度」が目に付く中で、映画関係者の決定には妙な驚きを感じたのだ。

案の定、ネット上では、激しい批判の声が舞い上がった。「ネトウヨ」と呼ばれる強固な政権サポーターは、自民党が強化してきたネット戦略の成果でもある。

今、自民党の公式ツイッターを見ると、「日本の感染者数にクルーズ船での感染者数を含めるのはおかしい」としてテレビでの扱いを批判する意見がたくさん寄せられている。そのせいか、最近NHKのニュースでは、「日本国内の感染者数」としてクルーズ船を除いた数字を伝えるようになった。

検疫中のクルーズ船は「日本国外」とし、感染者数を少しでも小さくしたい政府の気持ちもわかるが、国際的にはクルーズ船も含め日本の感染者数は1000人以上と理解されている。日本国内でだけ感染者数を小さく見せたところで、実態を見えにくくするだけだろう。

自民党の公式ツイッターでは、テレ朝の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」を名指しで反論する書き込みも目立つ。特定の番組にいちいち反論するのは、普通はあまり目にしないが、確かにこの番組は、この新型コロナに関しては当初から一番詳しく対応の問題点を指摘していた。PCR検査の問題にもいち早く注目し、連日報道してきた。

私も1月の段階で検査体制がボトルネックになっているということをこのブログでも指摘してきたが、この番組でも早い段階で問題提起をしていたので、私も連日この番組は見るようになった。

だから、安倍政権にとっては面白くなかったのだろう。

新型コロナ対策では安倍政権の対応は「後手後手」であり、世論の批判が高まり支持率が低下する中で、個別の番組にも反論するようになった。最近の官邸主導の突然の発表にも、安倍さんの焦りを感じるのだ。

今進めている特措法が施行され、非常事態宣言が出せるようになった時、検査や医療体制の強化ではなく、言論統制の強化にこの法律が使われるリスクも心配される。

緊急事態に「政治判断」は必要だと思うが、批判を許さない空気を作り上げ、悪意のある間違った政治判断を行うようになると、戦前の過ちを繰り返してしまうことになる。

映画「新聞記者」の受賞は、そうした危機意識を抱く国民が少なくないことを示しているようにも感じた。

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