<吉祥寺残日録>イージス•アショアと河井夫妻とポスト安倍 #200616

唐突が爆破だった。

北朝鮮は今日午後、開城(ケソン)にある南北共同連絡事務所を爆破した。

この事務所は、文在寅政権が推し進める南北融和政策を象徴する建物だったが、金正恩委員長の妹である金与正朝鮮労働党第1副部長がその爆破を予告していた。

正恩氏の後継者として与正への権力集中が進んでいて、今回もその一環とみられるが、文在寅さんとしては面目丸潰れであり、南北政策の再構築を迫られることとなった。

そんな中で、日本側でもちょっと唐突な発表があった。

河野防衛大臣が昨日、新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の秋田と山口への配備計画を停止すると表明した。

その理由として、河野さんは「迎撃ミサイルを発射する際に使う「ブースター」と呼ばれる推進補助装置を、演習場内に落下させると説明していたものの、確実に落下させるためには、ソフトウェアの改修だけでは不十分だと分かった」からだと説明した。

「ソフトに加えて、ハードの改修が必要になってくることが明確になった。これまで、イージスアショアで使うミサイルの開発に、日本側が1100億円、アメリカ側も同額以上を負担し、12年の歳月がかかった。新しいミサイルを開発するとなると、同じような期間、コストがかかることになろうかと思う」

「コストと時期に鑑みて、イージス・アショアの配備のプロセスを停止する」

出典:NHK

河野大臣は、こうした方針をNSC=国家安全保障会議に報告して、政府として今後の対応を議論するとともに、北朝鮮の弾道ミサイルには当面、イージス艦で対応する考えを示したとされるが、私が気になったのは、NSCで結論を得る前に防衛大臣が方向性を示したという点だ。

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「イージス・アショア」は文字通り、安倍=トランプ関係のシンボルのような存在だった。

北朝鮮カードを政権浮揚に利用してきた安倍さんが、軍需産業にいい顔をしたいトランプさんの要請に応じてトップダウンで決めた。そのため、防衛省は地元の反対派に対し苦しい説明を続けてきた経緯がある。

揺るぎない「安倍一強」体制が続く中、専門家の合理的判断は政治的な圧力によって押し殺され、ズルズルとここまで来てしまった。すでに計画の一部は走り始めていて、かなりの金額が動いていると聞く。

これまでの安倍政権であれば、一度安倍さんが決めたことは、周囲が無理を通して推し進めたものだ。

どうもこのところ、様子が変わった感じがする。

そこで気になるのが、ポスト安倍の動き。河野さんもポスト安倍をうかがう有力候補の一人だ。

入閣前は安倍さんと一定の距離があると思って河野さんだが、政権入りしてからは予想外に大人しく一貫して安倍さんに歩調を合わせてきた。その河野さんが今回安倍さん肝いりのプロジェクトを停止する判断をした背景が気になっている。

今日夕方、記者団の取材に応じた安倍総理は、「河野大臣の決断を承認した」と述べて、河野さんとの齟齬はないと強調した。

しかし、自民党内では、今回の唐突な計画停止の表明に異論が噴出しているという。なぜこれほど重要な軍事的な決定が、与党への根回しも行わないままに発表されたのか?

どうも解せない。

コロナ対応のまずさや黒川検事長の強引な人事が災いして、安倍総理の支持率は政権発足以来最低水準に落ち込んでいる。

そうして安倍一強に陰りが見え始めると、それまで静まり返っていた自民党内がにわかにざわつき始めたように見える。

産経新聞には「ポスト安倍に異変 1強崩れ、鍵握る二階氏」という記事が載った。

新型コロナウイルスの災禍で長らく続いた「安倍1強」の構図がほころびを見せ、「ポスト安倍」レースにも異変が生じている。首相からの禅譲を狙う岸田文雄政調会長も目算が狂い、首相と距離を置く石破茂元幹事長が党内の支持獲得に動き出した。党役員人事で続投かが焦点となる二階俊博幹事長の思惑も錯綜(さくそう)し、今国会が閉会する17日以降、政局は激しさを増しそうだ。

出典:産経新聞

国会が閉まる時のお決まりの記事といえば、その通りだが、「寝業師」二階さんの動きはやはり気になる。

自民党内では今、「73歳定年制」を巡ってベテラン議員と中堅議員の間でバトルが起きているという。

ちなみに二階さんはもう81歳。噂される党人事で、二階さんが幹事長に留まるかそれとも交替か、激しい駆け引きが始まっているようだ。

二階さんは、石破さんに接近するそぶりを見せて安倍サイドを牽制する。

私は政治取材の経験が全くないので、一般読者と同じレベルで記事を読むだけだが、安倍さんを支えてきた麻生・菅・二階の3人のうち、二階さんと菅さんが少し距離を取り始め、それが安倍一強を揺るがし始めているように見える。

とはいえ、絶対的なポスト安倍が存在しない以上、安倍4選も含めてまったく予断を許さない。

さらに状況をややこしくしているのが、河井克行・案里夫妻の選挙法違反事件だ。

今日、案里議員の元秘書に執行猶予付きの有罪判決がされてた。このまま刑が確定すると、連座制が適用されて案里議員の当選が無効となる可能性がある。

さらに夫・克行前法相は買収の容疑で捜査中で逮捕は避けられないとの見方も強まっている。

河井前法相は菅官房長官に近いとされるが、本当は安倍総理に近い。

黒川人事で検察にケンカを売った安倍さんは、河井夫妻の逮捕で大きな傷を負う可能性も出てきた。

河野さんの決断も、そうした党内状況の一つの表れではないかと、私の目には興味深く映ったのである。

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さらに言えば、アメリカでトランプさんの再選が危ぶまれ始めたことも、イージス・アショアに影響した可能性もある。

コロナ対応のデタラメぶりや、黒人差別デモへの対応などで失政に失政を重ねている。これでまだ多くの人が支持する方がむしろ不思議なほどだが、トランプ政権の命綱である株価が大きく値を戻したので、まだまだ大統領選の行方は見通せない。

トランプさんの再選がないとなれば、安倍さんもイージス・アショアの約束から自由になれるだろう。

イージス・アショアの配備については、中国やロシアも反発しているため、これをやめることができれば、安倍さんにとって別の世界戦略を描くことができる。

河野さんと安倍さんの間でどんな話がなされたのか?

2人の距離感がどうなっているのか?

いろんな意味で、ちょっと気になるニュースである。

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