<吉祥寺残日録>やはりアパホテル #200404

厚労省が、軽症者も無症状者も入院という方針を変えた。

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やっと、である。

ずっと以前から多くの医療関係者が重症者のためにベッドを空ける必要性を訴え、ずっと以前から海外では軽症者は別の施設か自宅隔離が常識となっており、最近では大阪府や東京都の知事や医師会からも方針の見直しが要望されていたにも関わらず、一向に重い腰を上げようとしなかったのはどういう了見だろうか?

唯一考えられることは、当初の方針の過ちを認めないという役人の保身、それとも厚労省ではなく官邸からの指示があったのだろうか?

そういえば最近、加藤厚労大臣の影が薄い気がする。

とにかく、理解不能である。

どんなに間違った政策でも、誰が何の目的で行っているのかが理解できれば、こちらも対処のしようがある。しかし今回のコロナ対応については、誰が何の目的で頑なに「日本方式」のおかしなルールにこだわっているのか理解できないので大きなストレスになっているのだ。

それでもひとまず、方針変更が行われた。小池都知事は来週にも軽症者の移動を始めると言明した。すでにモデルケースとなる施設は確保したとしている。

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気になるのは、軽症者を隔離するための施設である。

厚労省の方針転換が行われた直後、アパホテルが受け入れに応じるというニュースが流れた。政府から要請があったという。

ネット上では、「これぞ国士!」などとアパホテルを賞賛する書き込みが登場し、高須クリニック院長は「武漢肺炎が終息したら必ず泊まりに行きます」とツイート。安倍応援団は盛り上がっている。

まずは、日本のコロナ対応が一歩前進することは歓迎した。

ただし、である。

やはり、なのだ。

アパホテルというのは、私にとってあまりに想定内だった。

軽症者を収容するホテルを借り上げるなら、真っ先に候補となるのがアパホテルだと予想していたからだ。

なぜなら安倍さんのお友達だからだ。

しかも、膨大な借金をしてものすごい勢いでホテルを建設した。今回のコロナショックで最も甚大な被害を被り破綻しても不思議ではない。

コロナ対策として国が借りあげれば、これ以上ない安定収入がアパに流れる。緊急時なので野党も反対しにくい。他にも経営の厳しいホテルはたくさんあるので、協力するホテルを募集すれば、名乗りを上げるホテルも多いのではないかと思うのだが・・・。

ただ、どこの施設を利用するかを決めるのは政府ではない。各自治体の仕事だ。

もし政府がホテルに協力を求めるとしても、それは官邸ではなく国交省が動くのが普通だろう。

その辺り小池知事もしたたかで、どこの施設を使うかを明言していない。アパホテルを使うとは言っていないのだ。

大阪府の吉村知事は、アパホテルに限定せず、協力してくれるホテルを募集すると発言した。

アパホテルというのは、いかにも見え透いているからだろう。

もちろん風評被害の懸念もある。協力要請しても躊躇するホテルが多いのかもしれない。その意味では、とりあえずアパホテルがいち早く全面協力の姿勢を見せてくれたのは、朗報だと私も思う。全国にたくさんのホテルを有するアパホテルなら、予約客を近くの別のホテルに移ってもらい、一棟全部をコロナ患者の受け入れに使うことも可能だろう。

しかし、アパホテルの室内には同グループ代表である元谷外志雄氏の著書『本当の日本の歴史 理論近現代史』が常備されていることで有名だ。

この著書は、南京大虐殺を否定しているとして中国などで問題となった。しかし、アパホテルはこの著書を撤去せず公式サイトに「客室設置の書籍について」とわざわざその内容を掲げて反論している。元谷氏はそうしたゴリゴリの右派の歴史認識の持ち主であり、安倍総理とも近い人物でなのだ。

さらにタイミングよく、日本財団もコロナ患者の受け入れに名乗りを上げた。お台場にある船の科学館の駐車場に大型テントを立てて患者を受け入れるというのである。

これまた笹川良一氏から繋がる保守の本丸である。

今、国の総力をあげて乗り越えなければならない難局であることに異論を挟む人はいないだろうが、どうしてこうも安倍さんに近い人たちばかりが目立つのだろう?

結局この問題で、総理官邸しか動いていないのではないのかと、疑いたくなってしまう。

世界の失笑を買った「アベノマスク」についても然り。こんなサザエさん一家のイラストが世界で配信されているという。

全世帯に2枚の布マスクを配るというアイデアは、官邸に出向している経産省官僚の発案ということになっている。総理周辺にいる一部の人間だけで決めているから、こんな奇妙なことが起きるのではないか?

以前にも書いたが、本来なら総理が経産大臣に指示をして、経産省が中心となって産業界の英知を集めてマスクの国産化を進めるというのが筋だと私は思う。

どこの企業が国内生産しているのか知らないが、ユニチャームなど既存メーカーに国が設備投資の資金を渡し新たに生産ラインを作り全量買い上げることを2月初めにやっていれば、今頃にはもう少し事態は改善していただろう。

もし既存メーカーの力では不十分であれば、旭化成とか東レとか日本には世界に誇る素材メーカーがたくさんある。「ものづくり日本」といつも自慢している日本の技術者の能力をどうして使おうとしないのか?

アメリカがGMに人工呼吸器の製造を命令したように、トヨタやパナソニックに人工呼吸器を作ってもらってもいい。かつての日本なら、通産省が旗を振って日本中の技術者が我も我もとすごいアイデアを生み出していただろう。

今の日本でも、やろうと思えばできるはずだ。

それを行わず、いたずらに身内だけに声をかける安倍政治の姿勢が、森友加計問題や桜を見る会、検察人事などの疑惑を生んでいるのだ。

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ただ、私は安倍政権の対策をすべて否定しているのではない。

消費税減税の圧力に屈しなかったのは正しいと思う。

昨日安倍総理は、自民党の岸田政務会長と会談しコロナショックで収入が減った世帯に対して30万円の現金支給を決めた。これについても、いろいろ批判する声があるが、今困っている人に絞って現金を支給するという方向については支持したい。

自然災害で被害を受けた人たちの支援に準ずるのが一番フェアだと思っている。そうするとまずは自己申告ということになる。「罹災証明」のようなものを素早く発行してとにかく早く現金を受け取れるようにすることが肝要だ。不正受給の心配は後からすればいい。警察が働けるような仕組みを仕込んでおけばいいのだ。

今回のコロナショックで収入が減る人というのは、実は限られている。

公務員の給料が減るわけではないし、高齢者の年金も変わらない。民間企業のサラリーマンについては、給料が減る可能性はあるが、これは雇用調整助成金マターだろう。

今救うべきなのは、自営業者やフリーランス、派遣切りにあったり会社が倒産した人たち。その数は相当多いだろうが、低所得の人という分け方とも違う気がする。年金暮らしの高齢者も現金支給が欲しいと思うかもしれないが、この際、年金が減らない人は除外して考えるべきだと思う。

そうして急場をしのいだ後で、景気浮揚の大盤振る舞いをすればいい。

テレビなどでは、何でもかんでも補償すべきと言った耳障りのいい発言が幅を利かせているが、原資は国民が納める税金である。嵐が去った後、私たちは赤字国債の利払いをしなければいけないことに気づく。それでなくても国家予算の23%が借金の返済で消えていくのが日本の財政なのだ。

「自粛要請と補償はセットだ」と言われてその通りだと思う人は多いだろうが、「増税してでも、困っている人に補償しますか?」と質問を変えたら、果たしてどれだけの人が賛成するだろう?

国にしても都にしても、そのお金も出元は税金なのだ。

消費税減税どころではない。

高齢者福祉を切り下げるか、子孫にツケを残すか、自分たちが応分に負担するか。我々の選択肢は他にはない。

ウィルス被害は誰のせいにもできない。それぞれが己の努力で乗り切るしかないのだ。それでも特に大きな被害を受ける人たちをみんなで支えて、共に乗り切るためにベストな道を選ぶしかない。

そのためにも、被害を最小限に抑え、1日でも早く正常な生活に戻れる適切な対策を安倍総理には選択していただきたい。

先が見えない難局に立ち向かうのは大変だ。

すでに相当お疲れなのかもしれない。

でも参考になる事例は海外にいくらでもある。

国内にもまだ活用していない多くの人材がいる。

自衛隊もいる。警察や消防もいる。全国の公務員や様々な技能を持ったプロフェッショナルたちもいる。

とにかく、官邸周辺の一部の知恵だけではなく、日本の総力を結集して世界に誇れるような日本モデルを作り上げることを、安倍総理には期待したい。

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