553 vs 254

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安倍さんが自民党総裁選で三選を果たした。

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しかし安倍陣営が目論んだ圧倒的大差による大勝利とはならなかった。

安倍晋三 553票  VS  石破茂 254票

地方の党員票だけを比べると、安倍224票(55%)vs 石破181票(45%)と予想外の接戦となった。山形、茨城、群馬、富山、三重、鳥取、島根、徳島、高知、宮崎の10県では石破さんの得票が安倍さんを上回った。

私は以前このブログで、石破さんと稀勢の里の顔が似ていて、どちらも土俵際に追い詰められていると書いたが、その時に予想していたよりも二人とも頑張った。

さらに言えば、判官贔屓の日本人らしい結果とも言えるだろう。

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これまで態度を明らかにしてこなかった小泉進次郎氏も、石破さんに投票することを表明した。自民党内の広がる異論を許さない空気への反発を投票行動で示した形だ。

安倍さんは、あえて冷静さを装ったが、今後の3年間の求心力に黄色信号が灯ったとも言えるかもしれない。来月初めの内閣改造で、進次郎の取り込みなどを狙うのだろうがこれがうまくいかないとポスト安倍をにらんだ党内の動きが活発化することも考えられる。

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安倍さん的なるものが、あまり好きではない私だが、関西と北海道を襲った災害対策では安倍政権の実務能力を高く評価している。

あの関西空港の甚大な被害はどんな大きな影響を及ぼすかと心配したが、無傷だった第2滑走路を直ちに再開させ、鉄道も2週間で復旧させた。かなりのプレッシャーを現場にかけたと想像できるが、一般の人々の予想より早いペースで一つずつ復旧させることによって、不安を振り払っていった手法は災害対策のお手本だったと言える。

北海道でも、「ブラックアウト」という予想外の事態が起きたが、直ちに水力発電所を稼働させそれによって休止していた火力発電所を無理やり動かして、短期間で札幌や函館など都市部の停電を解消した。もしこれらの都市での停電が続いていたら、きっと政権批判に繋がっただろう。地震直後から世耕経産相がスポークスマンとなり、どのような対策を取ろうとしているのか、節電のメドはどのくらいなのかという情報を細かく発表した。こちらも野党に批判する隙を与えない見事なオペレーションだった。

今回の災害とはレベルがまったく違うが、東日本大震災がもし安倍政権下で起きていたら、どのように対応しただろうかと考えてしまう。

政治は、ただの能書きではなく、政策であり、実行力である。その意味では、今回の災害対策はきちんと評価しなければならない。

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就任当時冷え切っていた日中関係も随分と改善した。これも辛抱強く時を待った安倍さんにとっては良い兆候だ。今年は日中平和友好条約締結40周年、来月には安倍さんの訪中も計画されている。「地球儀を俯瞰する外交」を標榜する安倍総理にとって、念願の訪中は安倍外交の新たなページを開く重要な舞台となる。

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これで安倍さんは、総理在任期間歴代最長となる権利を手にした。平成を見送り新たな時代の幕をあける総理ともなる。そして安倍さん自身が誘致に活躍した2020年の東京五輪を自らの政権の下で開催することも可能になった。

ただ安倍さんを待ち受けるのは、難題ばかりだ。

まずは、トランプ大統領による貿易赤字削減要求だ。安倍さんは間もなくトランプさんとの首脳会談を行う予定だが、とんでもない弾が飛んでくるかもしれない。

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プーチンさんとの北方領土交渉も重要な局面を迎えている。

先日のウラジオストクでのフォーラムで、プーチンさんは「前提条件なしで年内に平和条約を締結しよう」というクセ球を投げてきた。国内では安倍さんがその場で反論しなかったことに批判が起きていたが、そんなケツの穴の小さな考えではこの問題は解決しない。聞き流した安倍さんの対応で問題はないと私は考える。北方領土はそもそも日本固有の領土ではない。もちろんロシアの領土でもない。どこの国のものでもなかったのだから、それを取られたとか、返せとか言っても、国際的な支持は得られない。そもそも戦争で負けた代償なのだ。返してもらえない方が、国際標準である。

冷戦時代の政治家たちが、ソ連を悪者にするために「北方領土問題」を国民に刷り込みすぎた。だから、多くの日本人は北方領土は返還されるのが当たり前だと思っているが、日本が北方四島を領有したのはせいぜい明治以降の話なのだ。そもそも4島が絶対に必要だと思っている日本人が果たしてどれほどいるのだろう? ロシアにとって北方四島は、太平洋に直接出られる港を手に入れるという意味で軍事的価値が極めて高い。日本よりロシアの方がずっと北方四島、特に択捉・国後島を必要としているのだ。

この厄介な問題に執念を燃やす安倍総理にはぜひこの問題を前進させてもらいたい。この問題こそ、安倍さんでなければ解決できないと思うからだ。つまり日本側もある程度妥協しない限りこの問題は解決しないと私は思っている。もし日本が妥協した場合に予想される世論の反発、特に暴れるであろう右翼陣営を抑えられるとすれば安倍さんしかいないのだ。

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もう一つ、安倍さんを待ち受けるのが、北朝鮮問題だ。

3日間にわたる平壌での南北首脳会談が終わり、文在寅大統領が今日ソウルに戻った。南北の首脳はすっかり運命共同体、二人の利害は一致している。何とかアメリカを説得して、終戦宣言に持ち込みたいのだ。金正恩委員長の体制を保証し、南北融和の時代を強固なものとして、時間をかけて統一を進めるというのが双方が描くシナリオだろう。それは同床異夢かもしれない。各論に入ると、利害の対立が表面化するため、あくまで総論で南北融和を演出し、それぞれの国内基盤を強化するのが両首脳の思惑だ。

トランプさんも特段のポリシーはないので、自らの損得だけで判断するだろう。目の前の中間選挙に得になると思えば、北に思わぬ譲歩をする可能性は十分ある。そうなれば拉致問題にこだわる日本が一人置いてきぼりにされるリスクが強い。その時、安倍さんはどんな手を打つのか?

そもそも北朝鮮にとって、安倍さんは敵である。小泉訪朝で帰国した5人の拉致被害者は北朝鮮に戻る約束だったが、それを阻止した急先鋒が安倍さんだった。安倍さんは金委員長との直接交渉に意欲を示しているが、果たしてうまく相手を土俵に上がらせることができるか、その手腕に注目したい。

そして、憲法改正。これが安倍さんの本丸だ。

これは何が何でも実現させようとするだろう。今の国会の状況を考えると、3年の任期中に実現する可能性は高いと思っている。今の野党では、それを阻止することは難しい。憲法改正に反対する陣営に新たなスターが出てこない限り、この流れは止まらないだろう。

いよいよ悲願の憲法改正に近づいた安倍さんにとって、一番のリスクは経済だと私は思う。

世界経済はそろそろ曲がり角にくると考えるべきで、政権発足以来右肩上がりできた安倍政権が経済面での試練に晒されるかもしれない。経済が良ければ七難隠す。日銀が買い支えてきた株価がどうなるか、出口戦略をどのようにやり遂げるのか、そして来年の消費税率引き上げもある。

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来年は天皇の交代、再来年はオリンピックだ。

そうしたビッグイベントに国民の意識を向けさせてするりと難局を乗り切れるかどうか、安倍さんの綱渡りはまだまだ続いていく。

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