米朝首脳会談

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アメリカと北朝鮮のトップが直接顔をあわせるのは史上初めて。その意味では間違いなく歴史的な会談である。

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シンガポールのセントーサ島で開かれた米朝首脳会談。午前10時、両首脳が左右の通路から登場しカメラの前で握手を交わした。金正恩氏はとても緊張していた。やはり初めて対面するトランプ大統領は何を言いだすかわからない怖い人物なのだろう。

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まずは、通訳を交えただけの2人だけの会談。予定より少し短い35分間だった。

期待したサプライズもなく、スケジュール通り淡々と進む。

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その後、双方の政権幹部を交えた拡大会合に移行。こちらは予定の90分を少しオーバーした。

金正恩委員長の表情が朝よりは落ち着いてきた。

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キム・ヨジョン氏など実務者も交えたワーキングランチを終え、トランプ大統領と金正恩委員長は通訳も連れず2人だけでホテルの庭を歩いて見せた。

4月の南北首脳会談での演出が、金正恩氏の好感度を上げたことはまだ記憶に新しい。北朝鮮側が求めた演出かもしれないが、トランプ陣営も交渉の成果よりも歴史的会談の演出に熱心だったように見える。双方の利害が一致したのだろう。

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そして事前のスケジュールにはなかった共同声明への調印。これが両国が用意したサプライズだった。しかし、その中身はかなりぼんやりしたものだった。

韓国・連合通信から共同声明の全文を引用しておく。

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『 トランプ大統領と金正恩委員長は米国と北朝鮮の新たな関係樹立や朝鮮半島の持続的で強固な平和体制の構築に関連した問題を議題とし、包括的かつ深く、真摯(しんし)に意見を交換した。トランプ大統領は朝鮮民主主義人民共和国の安全を保証することを約束し、金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化に向けた確固たる変わらない約束を再確認した。

新しい朝米関係を樹立することが朝鮮半島や世界の平和、繁栄に寄与するという点を確信し、相互信頼を構築することが朝鮮半島の非核化を進めることを確認し、トランプ大統領と金委員長は次のような合意事項を宣言する。

1.米国と北朝鮮は平和と繁栄に向けた両国国民の願いを踏まえ、米国と北朝鮮の新たな関係を築くことを約束する。

2.両国は朝鮮半島の持続的かつ安定的な平和を構築するため、共に努力する。

3.2018年4月27日の板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向け、努力することを約束する。

4.米国と北朝鮮は身元の確認ができた戦争捕虜、行方不明者の遺骨を直ちに送還することを含め、戦争捕虜、行方不明者の遺骨収集を約束する。

歴史上初めて行われた朝米首脳会談が大きな重要性を持つ画期的な事件だという点、朝米間の数十年にわたる緊張と敵対行為を克服するという点を確認し、新たな未来を開いていくためトランプ大統領と金委員長は共同声明に明記された事項を完全かつ迅速に履行することを約束する。米国と北朝鮮は朝米首脳会談の結果を履行するため、ポンペオ米国務長官、北朝鮮の高官が主導する後続交渉を可能な限り最も早い時期に開催することを約束する。

ドナルド・トランプ米合衆国大統領と金正恩朝鮮民主主義人民共和国国務委員長は朝米関係の発展、平和と繁栄の促進、朝鮮半島と世界の安定のため協力することを約束する。

2018年6月12日

シンガポール・セントーサ島にて 』

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アメリカは北朝鮮の体制を保証し、北朝鮮は非核化に取り組む。

このディールが、両首脳によって文書に残されたことは一定の前進であると、とりあえず前向きに評価しておきたい。何も始まらず威嚇し合うだけよりは、ましだ。

ただ、「歴史的偉業」を何としても手に入れたいトランプさんの本音が丸見えで、具体的な文言は驚くほどなかった。やはり北朝鮮はしぶとい。

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午後5時、記者会見はトランプさん一人で行われた。会見に先立って、トランプさんと金正恩さんを主演とするビデオが朝鮮語と英語で流された。この映像は、ワーキングディナーの際、金委員長にも見せてプレゼントしたという。この映像を作るのに、トランプ政権はかなり力を入れたことが伺えた。

今回の首脳会談を巡る演出過多の印象。会見の中身の薄さとの対比で、その演出ばかりが目についた。

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会見の中でトランプ大統領は、拉致問題について金委員長に提起したと述べた。

安倍総理はこれを高く評価し、トランプ大統領に感謝の意を表明した。

ただ、これに対して金委員長がどのように反応したのかは明らかになっていない。

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いずれにせよ、拉致問題は日朝でやる以外ない。安倍さんも本気でそれを模索するだろう。

日朝の動きが本格化した場合、私には一つの懸念がある。というか、日本の報道ぶりに決定的に欠けている部分が気になっている。それは戦後賠償の話だ。

日本では政治家もメディアも、拉致問題こそが日朝問題の核心だと伝えているが、北朝鮮側から見れば日本による植民地支配と慰安婦や強制連行などの人権問題、さらにそれに対する謝罪と戦後賠償こそが未解決の大問題なのだ。

日本人拉致と比べてははるかに規模の大きな日本による人権侵害がまったく補償されないまま70年以上が経過しているのだ。

小泉元総理が訪朝して締結した日朝平壌合意では、諸問題が解決した後に日本は北朝鮮への「経済支援」を行うとしている。これは日本人向けの表現であり、正しくは戦後賠償である。韓国や中国との間ではあいまいな形で処理したため責任問題が今も残る。北朝鮮への経済支援問題は韓国、中国へ飛び火する可能性も強い。

何より、日本人はそのことを自覚した上で、日朝問題に取り組むべきだろう。

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長年こう着状態が続いた東アジア情勢は、この会談で大きく動き始める。結果はわからない。

しかし、私たちも予断や偏見を捨て、柔軟に構えて新しい平和な時代を築いていきたいと思う。

 

 

 

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