“独裁者”たち

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トランプ大統領がついにティラーソン国務長官を解任した。後任は、強硬派と目されるポンペオCIA長官だ。

ティラーソン氏の解任話はずっと取りざたされていた。しかし、米朝首脳会談が決まったこの時期に外交のトップをすげ替えるとは流石に驚きだ。これは、金正恩委員長にとってもサプライズだっただろう。これぞ、トランプ大統領の恐ろしさ。何をしでかすか、まったく予断を許さないのだ。

大統領就任当初は、側近をクビにするたびに「政権の混迷」とメディアが伝え、政権の崩壊も近いと噂されたものだが、周りのスタッフをどんどんクビにしても支持率にも株価にも影響しなくなってしまった。これこそが、トランプ時代の日常なのだ。

側近を次々にクビにするたびに、トランプ氏の独裁ぶりが強化されている。すべての政策は自らの直感で決める。交渉相手に手の内を読まれないよう、様々な奇手を繰り出し翻弄する。主張に一貫性がないので、次の一手が読めないのだ。まさにビジネスマンとして様々な交渉を手がけてきたトランプ氏が身につけた特技なのだろう。

そしてこうしたトランプ流が大方の予想に反して効果を上げている。北朝鮮もまさにそのケースだが、一番はあの中国を制裁の輪に加えたことだ。これは歴代大統領の誰もなし得なかったことだ。

ホワイトハウスには、大統領に近づこうとする輩が次々にやってくる。良さそうな奴を見つけたら、前任者はお払い箱にしてコロコロとスタッフを替える。それでも政権はなんとか回っていくものなのだ。

そうしてトランプ大統領に楯突く者は誰もいなくなる。立派な独裁者の誕生だ。

独裁者といえば、ロシアのプーチン大統領。

イギリスのメイ首相は、今月4日に起きたロシアの元スパイ親子に対する殺人未遂事件に、「かなりの確率で」ロシアが関わっていたと指摘した。犯行には、ロシアで開発された軍用レベルの神経剤「ノビチョク」が使用されたことが明らかになった。

「ノビチョク」とは何か? BBCの記事には以下のような特徴が書かれている。

  • ノビチョクはロシア語で「新参者」を意味し、1970年代から80年代にかけてソビエト連邦が秘密裏に作った神経剤グループを指す
  • そのうちのひとつ「A230」はVXガスの5~8倍の殺傷能力を持ち、数分で人を死に至らしめる
  • ノビチョ剤は液体あるいは固体だとみられる。ノビチョク剤のいくつかは、毒性の低い2種類の化学物質の状態で保存され、混ぜ合わせて殺傷性を高める「バイナリー兵器」だと考えられている
  • ノビチョク剤のうち1種は化学兵器としてロシア軍での使用が許可されているという
  • こうした情報はロシアからの亡命者によって明らかにされた

あのVXよりもはるかに強力な毒物が存在していることも初めて知った。やはり、ロシアのヤバさは北朝鮮の比ではない。

当然のことながら、ロシアは関与を否定している。しかし、誰が考えてもロシアの犯行であることは間違いないだろう。

間違いないと言えば、日本も負けていない。

森友学園の疑惑は、安倍夫妻がその中心にいることは誰の目にも明らかだ。最初から犯人がわかっているという意味では、「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」のようなドラマなのだ。

籠池氏は安倍昭恵さんとのパイプを利用し、官僚たちが政権への影響を避けようと右往左往した。

個人的には先週辞任した佐川氏は、気の毒だと思っている。佐川氏が理財局長に就任したのは2016年の6月、そして森友学園に国有地が払い下げられたのも同じ6月なのだ。佐川さんはすべてが終わった後に理財局長に就任し、国会での意味不明な答弁を担当させられた。安倍さんが関与を全否定し、「もし関わっていたら総理も国会議員も辞める」と見得を切った。佐川さんは完全に退路を絶たれた形で野党の矢面に立たされたのだ。

理財局で問題があるとすると、佐川さんの前任者である迫田元理財局長だろう。迫田氏は安倍総理の地元山口の出身。1年の在任期間中、総理官邸にも頻繁に出入りしていたという。そして迫田理財局長時代に国有地の大幅値引きと売却が行われた。

迫田氏は佐川さんに理財局長を譲って国税庁長官におさまった。森友問題について追及を受けることもなく退職し、今は三井不動産の顧問に就任しているという。

メディアや野党もなぜ迫田氏に取材しないのだろうか?

強行突破を図ろうとする安倍さんと麻生さん。野党やメディアはこれからも連日追及することになるのだろうが、個人的には見通しが暗い気がしている。

一つは、昨日決済文書の改ざんを取り上げたテレビ番組の視聴率が高くなかったこと。これは国民の怒りが政権を倒すほど強くないという印象を受ける。

そしてもう一つは株価だ。安倍政権最大のピンチにも関わらず日経平均は昨日も今日も値上がりした。私は政府が年金資金を投入して意図的に株価操作を行ったと疑っている。このタイミングで株が暴落すると一気に世の中の空気が変わる。そのことを事前に検討して、週明け公的資金を使って株を買い支えたのではないか?

テレビでは安倍三選にも影響が出るという報道もあるが、まだまだ安倍さんは死んでいない。まずは耐え抜いて、世論が静まってくるのを待つだろう。月曜に文書を一気に公表したことにより、続報を出すのが難しくなった。同じような報道を続けていると、世論はすぐに冷めてしまうのだ。ここはメディアの存在理由が問われる局面だろう。

メディアということで言えば、今日一つ面白い記事を読んだ。もう一人の独裁者、習近平氏に関する記事だ。

国家主席の任期の上限を撤廃し無期限の権力を手に入れた習近平氏だが、そこにあるのは単なる権力欲ではなく報復の恐怖ではないかとの指摘だ。

日経新聞の中沢編集委員の記事の一部を引用する。

『 一見、北京の政界は静かだが、市井では様々な声が飛び交った。

これまでも任期に制限がなかった共産党トップの総書記と(党・国家)軍事委員会主席に、2期10年までと規定してきた国家主席の任期の方をそろえる意義ある改革を断行する――。これが、なぜ任期制限撤廃のため憲法を改正するのか、の公式説明だ。

記者会見を含む一連の公式説明には、キリスト教世界の教義を思わせる「三位一体」論まで持ち出された。党、軍、国家のトップは一体だという。浙江省に根がある王陽明の陽明学、そして仏教にも詳しい習近平が誘う中国的な「新時代」とはかなりニュアンスが違う。違和感を感じざるを得ない。

そもそも「三位一体」論は全く理由になっていない。今後の「習一強」の政治体制、法体系を説明しているにすぎないのだ。なぜ、3つを合わせなければならないか。習の本当の心を推し量る様々な臆測が北京では流布されている。

「きっと3、4年後が怖いのだ。このまま国家主席の2期10年の任期制限が残っていれば、2022年の次期共産党大会の前に習主席は敗勢(『死に体』の意味)になりかねない」

「もし市民生活に関わる経済が良くなければ、きっと欧米でいう『レームダック』になる」

習は超大物の政敵を次々に打ち倒してきた。苛烈な「反腐敗」によってである。かなり恨みを買っている。仮に4、5年後に党総書記、軍事委員会主席、国家主席から降り、完全引退するなら、その後、自らに災厄が降りかかる恐れがある。政敵らからの報復である。

裸で最高指導者の地位から降りればどうなるかは、この5年の歴史が証明している。前国家主席の胡は、側近だった令計画(無期懲役)ら手足をもぎ取られた。実力者、李源潮は中央委員にも再任されず、国家副主席を最後に引退に追い込まれた。習自身が、胡の基盤だった共産主義青年団(共青団)を改革の名の下に徹底的にたたいてきた。

レームダック化と報復が怖くて降りようにも降りられない――。

厳しい現実が透けて見える。この危険な芽を早期に摘んだのが今回の憲法改正だ。任期制限のない党と軍のトップに合わせるという理屈は、ある意味、急にひねり出された弥縫(びほう)策である。 全人代の担当者は3月11日の採決後、今回の突然の任期制限撤廃について、内部で反対の声はなかったと説明した。個人崇拝の復活で毛による文化大革命のような惨禍が再び起きるのでは、という懸念の声についても「まったくない」と言い切った。

本当にそうなのか。それは今後5年、10年、いや20年たたないと分からない。』

この中沢氏の指摘が正しいのかどうか、それはわからない。

しかし、私たちとはまったく違う権力の中枢にいる人には、庶民にはわからない苦労や恐怖もあるのだろう。習近平氏ほどの実力者でも、いつかは権力を失う時が来るかもしれない。毛沢東のように、死ぬまで権力を握っていれば生前に辛い目に会わずにすむのだ。

“独裁者”というポジションも、庶民が考えるほど楽しくはないのかもしれない。

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