欧州議会選挙 国別議席数を調べる

日本人にはあまり馴染みのない欧州議会。EUの国会のようなものだ。

先週EU各国でその選挙が行われたのだが、日本ではトランプさんの来日やら、川崎での殺傷事件があったため、あまり大きくは報じられなかった。

だが、個人的にはEUという人類史上でも画期的な多国間連合の試みにはとても興味がある。国と国が武力ではなく、ルールと話し合いによって共同体を運営していくことが本当に可能なのか。壮大な実験である。

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選挙の結果を簡単に総括すると、これまで欧州議会で多数派をずっと維持してきた中道右派と中道左派が大幅に議席を減らし、両派を足しても過半数に届かなかった。一方で、選挙前には大躍進が予想されていた極右・ポピュリスト勢力は議席を増やしたものの、事前の予想ほどの勢いはなく、むしろ緑の党などこれまでのEU主流派とは一線を画すEU支持派が議席を大きく伸ばした。

これは何を意味するのか?

イギリスのEU離脱をめぐる混乱が反面教師となり、EUを離脱したり壊したりするのではなく、EUを作り変えようという民意が示されたのではないかと評価されているようだ。

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ただ、個人的に面白いと思ったのは、国ごとで投票の傾向がバラバラだということだ。これこそ国家連合体であるEUの真骨頂。ある国が極端な方向にブレても、別の国がそれに危機感を感じバランスを取ろうとする。

それぞれにリーダーがいて、それぞれの国のメディアが別々の見方を国民に提供することによって、EU全体が一気にある方向に傾いていかないのだ。

これぞいい意味での民主主義ではないだろうか?

そこで、私は国別の議席数の傾向を見たいと思った。ところが検索してもさっぱりヒットしない。どのメディアも主要国の動向ばかりに注目していて、私が欲しいデータが見つからない。

私のようなことに関心を持つ人はあまりいないのだろう。

それなら、自分で調べるしかない。幸い「European elections 2019」というサイトを見つけた。EU加盟国の言語で構成され、日本語はないが、それでも国別の獲得議席数を見ることができる。

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欧州議会選挙2019 国別議席獲得数


GU SD GR AL EP EC EF EN NI
EU 38 153 69 105 179 63 54 58 8 24 751

-14
-32
+17
+36
-37
-14
+12
+22
-12



5 2 1 7

3

18
1 3 3 4 4 3
3

21

5
3 7 2



17

3
1 4 1



11
2 2

2




6
1

6 5 4
2
3 21
1 3 2 5 1 1



13

2
3




1 6
1 2 2 3 3 2



13
6 5 12 21 8

22

74
5 16 22 7 29
11
2 4 96
6 2

8


4 1 21

5
2 13


1
21
2
2
5



2 11

19

7 5 14 28

73

2 1
2 2


1 8

2 2 2 3 1


1 11

1 1 2 2




6

4

2




6
1 6 3 6 4 5


1 26

8

17 26



51
4 9 1
7




21

9
8 14 1



32

3
2 3 3


2 13

2
2 4




8
西 6 20 3 8 12



5 54
1 5 2 3 6 3



20
1 10 11 16
4 29
1 1 73

<注釈>

国は上から、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、イギリスの順。

欧州議会の政治会派の略称は以下の通り。

  • GU 欧州統一左派・北方の緑の左派問題グループ(GUE-NGL)
  • SD 社会民主進歩同盟グループ(S&D)
  • GR 欧州緑グループ・欧州自由連盟(Greens-EFA)
  • AL 欧州自由民主同盟グループ(ALDE&R)
  • EP 欧州人民党グループ(EPP)
  • EC 欧州保守改革グループ(ECR)
  • EF 自由と直接民主主義のヨーロッパ(EFDD)
  • EN 国家と自由の欧州(ENL)
  • NI 無所属(NI)

欧州議会の会派は、左に行くほど左派で、右に行くほど右派となり、真ん中よりが親EUで、両端は反EUといった構図だ。

この中で、EU支持派は伝統的に欧州統合を推進してきた中道左派のS&Dと中道右派のEPPが議席を減らしたが、自由主義的なALDE&Rや環境政党Greens-EFAが大きく議席を伸ばした。

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一方で、EU懐疑派は、今回の選挙でイタリアの同盟やフランスの国民連合を中心とするENLやイギリスのブレグジット党を中心とするEFDDが議席を伸ばす一方で、左派連合のGUE-NGLやイギリス保守等を中心とするECRが議席を減らし、事前の予想ほどの躍進とはならなかった。

日本のニュースではイタリアの同盟やフランスの国民連合、イギリスのブレグジット党といった極右・ポピュリズム政党ばかりが注目されるが、結果的に一番議席を伸ばしたのは自由主義の中道会派ALDE&Rだったということは知っておきたいところだ。

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移民排斥を訴える人たちは確かに増えているが、EUの人たちの過半数は今もEUを支持しているということがわかる。ただ、今のEUを手放しで支持しているわけではなく、改革が必要だと考えていて、既存の政治家にはノーを突きつけたと言えるだろう。

国別で見てみると、イギリス、イタリア、フランス、ポーランド、チェコあたりにEU懐疑派が多い。ドイツやベルギー、オランダでも多少目立つものの、北欧や東欧の国々では基本的に極右は少ない。むしろスペイン、ポルトガル、ギリシャといった南欧諸国では極左のEU懐疑派が多いということにも注意を払っておきたい。

それぞれの国で、それぞれの傾向がある。ただ、議席数は少ないが北欧やバルト諸国など中道勢力がしっかりしている国がまだたくさんあることは、EUの安定性を守っている気がする。メルケルさんも弱体化したとは言っても、まだドイツの中道は盤石のようだ。

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新しく選ばれた欧州議会は7月2日に召集され、新しい委員長を選出する。

秋にはイギリスが新首相の下でEU離脱に向けた正念場を迎える。トランプさんのアメリカが世界を引っ掻き回す中で、ヨーロッパには是非良識ある世界として世界に安定をもたらしてもらいたいと願っている。

今年の夏、私はフィンランド、アイルランド、ルクセンブルクを回って、EUについて考えてみたいと思っている。

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