最低1兆円

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昨日のブログで日朝交渉の懸念として戦後賠償について書いたが、期せずして日経新聞が同じような話をより詳しく書いてくれた。

日朝交渉が始まった場合、北朝鮮が日本に求める金額は最低1兆円だという。

その記事を引用させていただく。

 

『 12日の米朝首脳会談でトランプ米大統領は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長に日本人拉致問題を提起した。金正恩氏の反応は明らかになっていない。米朝に押される形で日朝が近く動きだすとの観測も出ているが、拉致問題に加えて「過去の清算」のハードルが待ち受けている。

今年に入って北朝鮮は米国や韓国に対話攻勢を仕掛けた。一方、日本には厳しい態度がめだつ。「既に解決した『拉致問題』を再び持ちだして世論化するのは稚拙で愚かな醜態」「朝鮮人民に与えた人的、物質・文化的、精神・道徳的損失は、日本という国を丸ごとささげても到底賠償することはできない」(いずれも朝鮮中央通信)。

2002年9月の初の日朝首脳会談の開催まで水面下の秘密折衝は約1年間、計25回に及んだ。両首脳が署名した「平壌宣言」のとりまとめで最後まで難航したのが「過去の清算」の扱いだ。平壌宣言は経済協力に関する記述が最も多い。

「日本側が北朝鮮側に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援などの経済協力を実施し……」(平壌宣言第2項)

北朝鮮は「賠償」や「補償」を求めてきた従来の態度を転換。途中から経済協力方式を受け入れる代わりに金額にこだわった。日本側は国会の承認が必要な金額の明示を拒みつつ、経済協力の手法を詳しく説明した。現実性をアピールする狙いだった。経済協力の規模と内容については「国交正常化交渉で誠実に協議する」との表現で北朝鮮側と折り合った。

北朝鮮への経済協力をめぐり、02年当時は「100億ドル(約1兆円)」との数字が飛び交った。

根拠となったのは「日韓」の前例だ。1965年の日韓国交正常化の際、韓国側が財産請求権を放棄する代わりに、日本は韓国への5億ドルの経済協力(無償3億ドル、有償2億ドル)を約束。その後の物価や為替の変動を考慮すると、02年の時点では100億ドル程度になるとの推計が飛び交った。日朝国交正常化交渉が進んでいた00年8月時点には67億2000万ドルという試算があった。

16年に韓国に亡命した北朝鮮元駐英公使の太永浩(テ・ヨンホ)氏によると、金正日(キム・ジョンイル)総書記の側近の姜錫柱(カン・ソクチュ)氏が日朝首脳会談後、「少なくとも100億ドルが入ってくるだろう。道路や鉄道を新しくできる」と発言した。北朝鮮の名目国民総生産(16年)の約4~約6割に相当する莫大な金額で、北朝鮮外務省内に興奮が広がったという。

拉致問題が進展したとしても、北朝鮮への経済協力が日本国内で理解を得られるかは不透明だ。

北朝鮮専門家は「北朝鮮にとって日韓の金額は最低ライン。要求を上乗せする可能性がある」と懸念する。

政府・自民党には苦い記憶がある。90年9月に自民党の金丸信元副総理、社会党の田辺誠副委員長らが訪朝した際、自社両党と朝鮮労働党3党は、戦前の植民地時代だけでなく「戦後45年間、朝鮮人民が受けた損失」についても「謝罪し、償うべきだ」とする3党共同宣言で合意した。交戦していない国の戦後賠償には応じられないのが日本の立場のため、後に自民党は同宣言を否定した。

それから12年後に署名された平壌宣言は「45年8月15日以前」を過去の清算の対象にした。北朝鮮指導部はいまも平壌宣言を否定していない。05年9月にまとめた6カ国協議の共同声明も、日朝間で平壌宣言に従った国交正常化への措置を約束することを盛りこんでいる。

金正恩氏の号令のもとで経済の立て直しをめざす北朝鮮にとって日本から流れ込む経済協力資金は魅力だ。拉致問題解決のテコにもなりうる。金正恩氏は4月27日に韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と会談した際に「いつでも日本と対話する用意がある」と述べた。

02年の日朝首脳会談で北朝鮮が通告した拉致被害者「8人死亡」という調査結果を受けて日朝関係は再び悪化し、現在に至る。拉致問題をめぐり、北朝鮮は「既に解決した」と表明しながらも「過去の清算だけが日本の未来を保証する」と繰り返すなど日本マネーへの期待をにじませる。

「北朝鮮が正しい道を歩むのであれば、日朝平壌宣言に基づき不幸な過去を清算し、国交正常化をめざす」。朝鮮半島の急進展を受け、安倍晋三首相は北朝鮮との国交正常化に言及するようになった。日本の外交力が試されている。』

 

「朝鮮人民に与えた人的、物質・文化的、精神・道徳的損失は、日本という国を丸ごとささげても到底賠償することはできない」という北朝鮮側の主張は、決して誇張と見るべきではない。

被害者の数、被害の規模、いずれも日本がこだわる拉致問題の比ではない。日本が逆の立場だったら、同じことを主張するのではないか?

1兆円で決着すれば安いと考えなければならない。

日本の政治家とメディアは、このことをもっと国民に伝えて心の準備を促しておく必要がある。。

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