日ソ共同宣言

安倍総理が、重大な決断を下したようだ。

戦後70年、歴代総理が解決できなかった北方領土問題を「2島返還」で決着させる腹を決めたようだ。

シンガポールで、プーチン大統領との23回目の首脳会談を終えた安倍総理は記者団に対し「1956年の日ソ共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることでプーチン大統領と合意した」と語った。

まだ興奮していたのか、安倍さんにしては珍しく言葉を流れるようには出てこず、フレーズを選びながら話していたのが印象的だった。

日ソ共同宣言から、すでに62年が過ぎ去った。

鳩山一郎首相とソ連のフルシチョフ第一書記の間で合意された日ソ首脳会談とは、どういうものだったのか? 主な内容は、以下の通りだった。

  • 日ソ両国は戦争状態を終結し、外交関係を回復する。
  • 日ソ両国はそれぞれの自衛権を尊重し、相互不干渉を確認する。
  • ソ連は日本の国際連合加盟を支持する。
  • ソ連は戦争犯罪容疑で有罪を宣告された日本人を釈放し、日本に帰還させる。
  • ソ連は日本国に対し一切の賠償請求権を放棄する。
  • 日ソ両国は千九百四十五年八月九日以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。
  • 日ソ両国は通商関係の交渉を開始する。(同日に日ソ通商航海条約を締結)
  • 日ソ両国は漁業分野での協力を行う。
  • 日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡し(譲渡)する。

注目は一番最後の部分である。

平和条約締結後に、歯舞・色丹の2島を譲渡する。

「返還」ではなく「譲渡」なのだ。日本人は、北方領土は日本固有の領土であり、「返還」されるのが当然だと考えているが、世界の常識としては敗戦により失った領土が話し合いによって返還されることはほとんどない。ロシア人から見れば、北方4島はすでにロシアの領土であり、2島を日本に引き渡す場合でも、それは返還するのではなく他のメリットと引き換えに譲渡するのでなければ納得はできないだろう。

日ソ共同宣言の締結によって日本は国連に加盟が認められ、損害賠償も求められなかった。しかしその後日本政府は主張を変えて4島返還を求め、平和条約交渉は頓挫した。さらに日米安保条約締結に反発したソ連は、2島の返還も撤回して「問題は解決済み」との姿勢を撮り続けた。

こうした経緯を踏まえ、就任以来安倍総理は、北方領土問題の解決に並々ならぬ意欲を見せてきた。そして今日、「信頼の積み重ねのうえに領土問題を解決して平和条約を締結する。戦後70年以上残されてきた課題を次の世代に先送りすることなく、私とプーチン大統領の手で終止符を打つ」とはっきり宣言した。

憲法改正が思い通りに進まない中で、北方領土問題解決をまずは優先することを決断したのだろう。

この決断を私は評価したいと思う。

歴代政権は、ソ連やロシアへの反感を煽ることを国内対策に利用してきた。国内世論、特に右翼陣営の反発を恐れて、4島返還に固執した。ただ戦後70年が経過し、旧島民の多くは亡くなった。逆に、北方4島に移住したロシア人はすでに島で代を重ねている。島で生まれ育ったロシア人を追放して、果たしてそこに住みたいと言う日本人がどれほどいるのか?

心配なのは安全保障上の問題だが、ロシアはすでに基地を建設しており、それを日本に引き渡すことは考えられない。千島列島は、ロシア艦隊が自由に太平洋に出入りするために絶対に押さえておきたい戦略的な島々なのだ。

日本にとっては、喉元にナイフを突きつけられた状態ではあるが、国境が画定し自由に行き来ができるようになり、両国関係が改善するならば、いずれ緊張状態は緩和するだろう。

サハリンを抜けて、シベリア鉄道と日本列島が鉄道や道路で繋がる日も来るかもしれない

この決断は、安倍総理でなければできなかったものだ。自民党内で異論を抑え込む力を持ち、しかも安倍さん自身が右翼だからだ。リベラルな総理が決断しても、右翼陣営によって潰される公算が極めて高い。またロシア国内の政情が不安定になれば、これまた譲歩は引き出せないだろう。

今、解決しなければ、この問題はまた何十年も先送りされる。領土問題は、自ら譲る決断をするのが、一番早い解決策なのだ。そして領土問題が解決することで、得られる利益は決して小さくない。

安倍総理は、来年初めにもロシアに乗り込み、いよいよ決着をつける覚悟だ。3期に及んだ長い首相在任期間も、仕上げの段階に入った。

平和条約が結ばれ、北方4島に行けるようになれば、多くの日本人が手付かずの自然と歴史を味わうため島を訪れることになるだろう。そして島に住むロシア人たちも、北海道に買い物に来るようになり、きっと日本のことが好きになる。その相互訪問が、新たな両国関係を生み出していくのだ。それは日本にとって、プラスになると私は確信している。

安倍さんには、憲法ではなく、この問題に集中していただきたい。それはきっと政権への支持率を上げ、安倍さんの名前を歴史に刻む成果となるだろう。

世論やメディアが、安倍さんの決断を暖かく見守ることを望む。

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