参院選2019

盛り上がらない選挙だった。

野党が予想外に善戦したが、まずは想定内の結果で大きな波乱はなかった。

自民党は若干議席を減らしたが、「安倍一強」の流れは変わらない。

アウトドアウェアの「パタゴニア」は、選挙当日すべての店舗を閉めた。

『家族や友人、大切な人たちと誘い合い、投票に行くパタゴニア従業員のために、7月21日(日)は全直営店、閉店します。』

こうした意識の高い企業もあるものの、最終的な投票率は48.80%。戦後2番目の低さとなった。

投票率が低かった一番の理由は、やはり野党側が魅力的でなかったということだろう。自民党の揚げ足取りをして批判するだけで、自民党に変わる説得力のある構想を打ち出せていない。

超高齢化が進む日本の未来を明るくすることは誰がやってもやさしいことではない。安倍さんは課題をすべて先送りしながら、当座の景気対策や愛国心醸成に注力することで、暗い未来を隠すことに成功した。でも、それがいつまでも続くことはない。多くの国民が抱く漠然とした不安の正体はそれだ。

それに対して野党が打ち出したのは消費税の凍結や低所得者への支援強化。自民党以上に目先のごまかしであり、そんなことで不安のない未来が作れないことは多くの有権者に見抜かれていた。福祉の充実、老後の安心を訴えるなら、企業や国民全体にさらなる負担を求め欧州型の「大きな政府」を打ち出さなければならない。しかし、「大企業優遇」と野党が批判する安倍政権の方がどんどん予算を膨らませ「大きな政府」に邁進しているのに対し、野党はすべて中途半端。政策の整合性が取れていない。

そうした野党の弱体化は、選挙後の各代表の発言にも表れた。みんなそれなりの手応えがあったと満足げだ。もともとの目標が低いのだ。

そんな低調な選挙でも、いくつか目を引く動きがあった。

その一つが、山本太郎氏が立ち上げた「れいわ新選組」。

比例で2議席を獲得し、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後靖彦氏と重度障害者の木村英子氏を国会に送り込んだ。

これだけの障害を持つ国会議員は過去におらず、国会の施設や制度に一石を投じることになるだろう。エリート男性中心だった国会に多様性を持たせるという意味では、今後彼らがどのような活動をし、永田町がどのように彼らに対応するのか興味がある。

ネットを中心に熱狂的な支持者を作っていった「れいわ新選組」。山本氏にはヨーロッパで台頭するいわゆるポピュリスト政党のカリスマ党首の匂いがある。次の選挙では、今回以上の大躍進があるかもしれない。

もう一つ気になったのは、全国に候補者を擁立した「NHKから国民を守る党」が比例で1議席を獲得したことだ。

選挙の歴史を振り返ると、「サラリーマン新党」とか「税金党」とか、その時々の時流に乗って登場するぽっと出の政党があった。

でもこうした「おもしろ政党」は主にテレビや雑誌などのメディアが追いかけ回して知名度を上げ、一部の有権者が票を投じたものだ。

ただ最近では、与野党ともにメディア露出の公平性を厳しくチェックし、昔のような恣意的に特定の候補者を取材することができなくなった。選挙期間中にある候補者を取材放送しようと思えば、同じ選挙区の他の候補者も扱わざるを得ない。そのため、民放の報道情報番組では選挙ネタが極端に減ってしまった。

もちろん昔のようにメディアがタレント候補などを連日取り上げるのは問題があると思う。しかし全候補者を平等に扱った番組は面白くならない。よって選挙のネタそのものがテレビから消える。いいような悪いような難しい問題だ。

そんな中で、NHKは報道番組で注目の選挙区を丁寧に放送した。そのすべての選挙区に、「NHKから国民を守る党」は候補者を立てているため、NHKが連日「NHKから国民を守る党」の主張を紹介することになった。これはなんとも言えずシュールだ。

法律でテレビ局に義務付けられている政見放送でも彼らは目立つパフォーマンスを行い、それがネットで話題となった。結果的には、そんな彼らの存在を面白がって投票した有権者が全国に一定数いて、それを足しあげると比例の1議席獲得という結果を生んだのだ。

あの「幸福の科学」でさえ、なかなか実現できないでいる国政での議席獲得を、そのネーミングとテレビ放送の盲点をついて実現したことはとても印象的だった。

もう一つ興味深かったのが、広島選挙区の自民党バトル。

岸田派の現職、溝手氏が安泰と思われていたところに、自民党執行部は新人の河井案里氏を押し込んだ。菅官房長官がプッシュしたと言われているが、安倍さんが絡んでいないとは思えない。

結果的には、野党候補が早々と当確を決め、自民党同士で残りの1議席を争う展開となった。そして、新人の河井氏が当選。岸田さんは自らの地盤である広島で思わぬ苦杯をなめた。

次期総裁候補と呼ばれて久しい岸田政調会長だが、今回の参院選で岸田氏は大きく後退した印象だ。岸田派の候補者は、広島だけでなく秋田、山形、滋賀でも負けた。「ポスト安倍」としては致命的だろう。

岸田さんは安倍さんに比べ良識派でおそらく平和を愛するいい人なのだろうと思うが、いい人は基本的に弱いのだ。

自民党内では、今後「安倍4選」の動きも出てくるだろう。「ポスト安倍」としては菅さんの存在感が増しそうだ。フジテレビが特番で菅さんを取材していて、女子高生たちが菅さんを「カワイイ」と言っていたのが印象的だった。

「令和おじさん」は果たして総理になれるか?

安倍さんと菅さんの関係も、これからの注目ポイントになるだろう。

Embed from Getty Images

選挙が終わり、外交の季節がやってくる。

トランプ政権が求めているホルムズ海峡での「有志連合」への参加問題。早速ボルトン補佐官が来日する。

安倍さんはどう答えるのか?

私はすでにトランプさんに参加の意思を伝えているのではないか?

何の根拠もない。ただ勝手に妄想を広げていうならば、安倍さんの方からトランプさんに「有志連合」のアイデアを提案した可能性すらあるのではないかと疑ってしまう。トランプさんが作り出したイラン危機を安倍さんは自らの悲願である憲法改正に利用するのではないか?

「ホルムズ海峡は日本の生命線である。日本が輸入する原油を守るためには、自衛隊を国際的な枠組みの中でホルムズ海峡に派遣する必要がある。貿易をめぐるアメリカからの圧力をかわすためにも、有志連合への参加は止むを得ないと判断した。」

妄想の中で、そんな発表が聞こえてくる。

国内法の問題はあるが、世論を説得するためのロジックは作りやすい状況なのではないか?

そしてこの「国難」を煽りながら、憲法改正の流れを作っていく。

想像したくないけれど、いかにもありそうなシナリオだ。

選挙が終わり、いよいよ憲法改正に向けた動きが始まる予感がする。

広告

コメントを残す