アーダーン首相

トランプさんを筆頭に、最近世界のリーダーたちが語る言葉にがっかりさせられることばかりだ。そんな時代だからこそ、ニュージーランドのアーダーン首相の議会演説がとても新鮮に聞こえた。

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白人至上主義者による銃乱射事件を受けて、アーダーン首相は議会でこのように語った。

「男はこのテロ行為を通じて色々なことを手に入れようとした。そのひとつが、悪名だ。だからこそ、私は今後一切、この男の名前を口にしない」

今回の犯行は売名が目的だったと断じた。だから、男の名前は呼ばないという。法廷に現れた男の映像にぼかしが入っているのも、そういう意味なのだろう。

報道によると、モスクで銃を乱射し50人の命を奪ったブレントン・タラント容疑者は、事件の10分前に白人至上主義的な“犯行声明文”をアーダーン首相を含む70人ほどにメールで送りつけていたという。

しかも逮捕後に法廷に現れた男は、カメラに向かって指でOKマークを作って見せた。男は計画通りにテロを実行し、自分を英雄だと思っているような男なのだ。

そんな男に対して、アーダーン首相が発したメッセージは胸がすくようなものだった。

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「かれはテロリストであり、犯罪者であり、過激主義者だが、私が話す時は名前で呼ばない。皆さんも命を奪った者ではなく、奪われた人々の名前を語ってほしい。あの男は悪名をはせようとしたのかもしれないが、我々ニュージーランド人はかれに何ひとつ与えない。名前さえも」

首相は、さらにニュージーランドとはどういう国かを語った。

「私たち国民は200の民族と160の言語で構成されている。私たちはいつでも外にドアを開いている。しかし、事件で変わったのは民族差別意識や恐怖をもたらす相手には、決してドアは開かれないということだ。今週金曜日には再びイスラム教徒が集まる。彼らが再び礼拝を行えるようみんなで支えよう」

移民に対して、これほどまでにポジティブなメッセージを聞いたのは、最近では覚えがない。オバマ時代には、アメリカでも語られていただろう。しかしトランプさんの出現で、こうした声は世界中から姿を消していた。

ニュージーランドは移民の国。アメリカも本来、移民の国であった。

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アーダーン首相は、まだ38歳。

首相就任後女の子を出産し、産休を取得したことで世界的なニュースとなった。

彼女は、自らを社会民主主義者であり、進歩主義者であり、共和主義者であり、フェミニストだと称している。戦後の西ヨーロッパで勢力を持った社会民主主義は、今ではすっかり弱体化しているように見える。

そうした古き良きヨーロッパの理想主義が、遠く南半球のニュージーランドに生き残っていることが興味深い。

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アーダーン首相は、「事件から10日以内に、この国をより安全にする改革を発表する」と宣言した。

その中には、惨劇を生中継する道具に使われたSNSの規制も含まれる模様だ。

そして今、ニュージーランドでは銃の自主返納の動きが活発になっている。

トランプ大統領のアンチテーゼとして、アーダーン首相の改革を世界が注目することを望みたい。

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