華為の王女

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ファーウェイ事件の行方が気になっている。

突然カナダで拘束されたファーウェイの副会長。彼女は絶対的な権力を握る創業者の娘であり、ファーウェイの「王女」と呼ばれる次期後継者だった。

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ネットメディア「JPpress」に、ジャーナリストの近藤大介氏が書いた記事がとても面白いので引用させていただく。

中国最大の通信機器メーカーであるファーウェイについて、近藤氏は次のように書いている。

『 華為は、人民解放軍の技師だった任正非(74歳)が、1987年に深圳で創業し、軍や国有企業の通信システムなどを担って急成長した。任正非はこれまで3回、結婚しているが、今回逮捕された孟晩舟は、最初の妻・孟軍と間の長女である。

華為の社名の由来は「中華有為」で、中国が意義のあることを為すという意味だ。この社名からも分かるように、民営企業ではあるが、決して上場せず、国策企業的要素を持った組織である。中国中央テレビ(CCTV)が今年春から宣伝番組を放映している「中国ブランド18社」にも選ばれている。

任正非は、習近平主席の「朋友」としても知られる。それはひとえに、2人の「宗教」が同じだからだ。すなわち両者とも、建国の父・毛沢東元主席の崇拝者なのである。毛沢東思想を政治的に実践しているのが習近平主席で、「毛沢東思想を商業化する」としてビジネス界に乗り込んだのが任正非だった。

任正非氏は1997年に、全6章103条からなる「華為基本法」を定めた。「中学為体、西学為用」(中国の教えを身体とし、西洋の教えを道具とする)を旨とし、「軍人規律」と「狼性文化」(狼のように激しく市場を取りにいくカルチャー)が社風である。』

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「華為」という社名が「中華有為」という言葉から来ているというのは、なかなか興味深い。「毛沢東思想を商業化する」という初心も、「中学為体、西学為用」というスローガンもとても面白い。

中国の有名企業について、私たちももっと知る必要がありそうだ。

今回の逮捕劇では、カナダもアメリカも逮捕容疑について詳細を明らかにしていない。ただ、報道によれば、アメリカが制裁を課しているイランがらみの不正行為に関与したとされている。

近藤氏の記事には、ファーウェイとイランの関係についても書かれていた。

『 華為は今世紀に入って、積極的に海外進出に乗り出した。その際、モットーにしたのも、「農村から都市を包囲する」(農村包囲城市)という毛沢東語録だった。すなわち、まずはアジア、アフリカ、中東、南米など、発展途上国の通信システムを制覇し、その余勢でもって先進国に乗り込む戦略を取ったのだ。

中東に関しては、2007年にサウジアラビアと包括的提携を行い、UAE、カタール・・・と触手を伸ばしていった。アフガニスタン戦争、イラク戦争というアメリカが主導した2つの戦争で荒廃した中東の復興を、華為が担ったのである。

イランに関しては、中国はシルクロードが全面開通した漢の時代からの貿易相手である。特に、中国はガラス製品が作れなかったため、イランからガラス製品を高値で買った。ササン朝ペルシャが崩壊した時(西暦651年)には、王族がごっそり唐の都・長安に亡命している。そうした2000年以上にわたるイランとの友好関係を、アメリカにつべこべ言われる筋合いはないというのが、中国の言い分だ。』

スマホの販売台数で今年アップルを抜いて世界第2位となったファーウェイだが、その主戦場は発展途上国。ファーウェイの強みは何と言ってもその圧倒的な安さだ。

アメリカと対立している国は、紛れもなくファーウェイにとってドル箱となる。

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そして今後、報道が過熱すると考えられるのが、逮捕された孟晩舟副会長がどんな人物で何をやっていたのかという点だろう。

一報段階では、ほとんど伝えられていない創業者の娘の素顔について、近藤氏の記事ではこのように紹介されていた。

『 今回、カナダで逮捕された孟晩舟副会長について、今年初めに深圳に行った時、現地のIT企業幹部に聞いたら、「人当たりこそソフトだが、任正非の生き写しのような後継者」と評していた。

1972年生まれで、「大学は理系に進むように」との父親の命を受けて、湖北省の省都・武漢にある華中理工大学(現在の華中科学技術大学)を卒業後、1993年に華為に入社した。入社後数年は、機械工やタイピストなどの下積みを行い、1998年に財務部門に移った。その後、財務のIT化戦略の推進役となり、2003年には全世界統一の財務システムを構築。「父・任正非の後継者」として頭角を現していった。

孟晩舟は、2011年に常務董事(CFO)となり、今年3月23日に、副董事長(副会長)に就任した。2017年には、『フォーブス』誌の「中国女傑経営者ランキング」で8位に選ばれている。

前出の深圳のIT企業幹部は、次のようにも述べていた。

「華為は、任正非の意向で、絶対に株式を上場せず、任が経営の第一線を退いた後も、経営者は5年の輪番制としている。これは、長女の孟晩舟に滞りなく経営権を移行させるための措置と思える。彼女の他にも、任正非の弟の任樹録、妹の鄭黎、息子の任平も華為の幹部を務めており、華為は現在でも、任正非とその一族の会社だ」

任正非と孟晩舟は、大のマスコミ嫌いとして知られるが、孟は過去に一度だけ、中国メディアのインタビューに応じ、自分のことを次のように語っている。

「任正非は、仕事上ではCEOであり、自宅では父親です。経営幹部会で、父や他の幹部たちと、挑戦的なビジネスに取り組むことを決める時は快感です。しかし自宅では、父とはあまり仕事の話はしません。彼は慈父であり、母が厳母でした。

父は華為を創業して以来、厳しい企業経営を強いられたことで、厳父に変わっていったのでしょう。その分、母が慈母になりました。いまでもある時には、母親にまず話して、母から父に説得してもらうようにしています。

最近は、父と会う時間も減りました。父は、毎月の最後の一週は、会社の定例会議のため、深圳にいますが、残りは出張ばかりだからです。

私の夫は、まったく業界外の人で、10歳の息子と4歳の娘がいます。

華為が上場しないのは、個人的見解ですが、上場した方が華為が開放的になり、経営が透明になることは確かです。しかし上場には壁があります。中国の上場規定によれば、上場前の最大株主数は200ですが、華為ではすでに6万人以上の社員が株式を保有しているのです。そのため、株式上場の話は、経営会議の議題には上ってきていません」』

これだけでは、まだ彼女の素顔は見えない。

一代で世界的な巨大企業を築き上げた父親の下、彼女がどんな人生を歩んできたのか?

巨万の富を手にした一族の生活ぶりはどうだったのか?

そして何より、彼女はどんな仕事をしていたのか?

興味は尽きない。

さらに、中国潰しに本腰を入れるアメリカが次にどのような手を打ってくるのか?

それに対して中国政府はどのような対抗策を嵩じるのか?

ひょっとすると、アメリカ企業の大物が中国に拘束されるかもしれない。何が起きるか、まったく予断を許さない。これはもう、事実上の戦争なのだ。

ただ、現段階では中国の技術力はアメリカに及ばない。西側各国が中国製品の締め出しを始めると、中国経済への打撃は避けられないだろう。

しかし、中国の巨大市場から締め出されると、西側諸国のダメージも計り知れない。中国には世界中が欲しがる巨大市場がある。したたかに制裁を加える国を選び、包囲網の分断を図ってくるに違いない。

お互いどこまでのダメージを許容できるか。恐怖のチキンレースが始まろうとしている。

 

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