「皇帝」習近平

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日本は森友問題で「安倍一強」が大揺れだが、お隣中国ではますます「習近平一強体制」が強化された。国家主席の3選を禁じた憲法が改正されたのだ。

賛成2958票、反対2票、棄権3票。

果たしてどんな人が反対票を投じたのだろう?

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トップに登りつめて5年で盤石な独裁体制を築いた習近平氏。目指すのは「中華民族の偉大な復興」だ。習近平氏が掲げる「中国の夢」。今、中国に行くと、「中国の夢」のプロパガンダ広告が地下鉄の駅などあちらこちらで見ることができる。

2012年、習近平氏はこのように「中国の夢」構想について語った。

「誰しも理想や追い求めるもの、そして自らの夢がある。現在みなが中国の夢について語っている。私は中華民族の偉大な復興の実現が、近代以降の中華民族の最も偉大な夢だと思う。この夢には数世代の中国人の宿願が凝集され、中華民族と中国人民全体の利益が具体的に現れており、中華民族一人ひとりが共通して待ち望んでいる。」

ウィキペディアによると、この構想の元となったのは「中国夢」という書籍だという。こんな風に書いてある。

『書籍『中国夢』は、中国人民解放軍国防大学教授(当時)の劉明福(Liu Mingfu)により2010年に出版された。同書は21世紀において中国が「世界ナンバーワンの強国になること」を構想し、目的達成のために中国が取るべき手段や戦略について描いている。』

アヘン戦争以降の屈辱の歴史から復権し、再び強く輝かしい「大中華帝国」を作り上げることを目指す。そして自らは、任期に縛られることのない「皇帝」のような存在になろうとしている。

あんなヌーボーとした外見にも関わらず、習近平氏のどこにそれほどの力があるのだろう?

日本人としては、「習近平一強」の中国が今後どこに向かうのか、重大な関心を持って監視していく必要がある。

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さて、そんな中国に関連して、興味深い記事が出ていた。

「ニューズウィーク日本版」に東京福祉大学の遠藤誉国際交流センター長が執筆した記事だ。

そのタイトルは「王毅外相、「精日(精神的日本人)」に激怒」。この「精日」とは何かと興味が沸いたので読んでみた。

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『  3月8日、王毅外相は全人代における外交関係の記者会見を行なった。記者から出た「精日をどう思うか」という質問に声を荒げて「中国人の堕落者だ!」と激怒。精日とは何か、中国ではいったい何が起きているのか?

「精日」とは「精神的日本人」のことで、日本を礼賛し、日中戦争(中国では「抗日戦争」)時代の日本軍の軍服などを着て楽しむ中国の一部の若者たちのことを指す。

たとえば日本軍の軍服をまとった2名の男子が、愛国教育基地の一つである南京事件(中国では南京大虐殺)記念館の前で写真を撮り、警察に捕まって15日間拘留されたことがある。

2017年8月7日には、1937年10月の「四行(しこう)倉庫の戦い」(第二次上海事変における最後の戦い)の跡地で日本軍の軍服を着て撮った写真をネットに流して大問題になったこともある。

なぜ、このような現象が起きたかに関しては、いくつかの理由が考えられる。

1.拙著『中国動漫新人類――日本のアニメと漫画が中国を動かす』(2008年)で詳述したように、「80后(バーリンホウ)」(1980年以降に生まれた若者)たちは皆、日本のアニメと漫画を見て育ってきた。中でもコスプレが大好きで、侍姿などの歴史ものにも深い興味を持っている。その中から日本軍の姿も真似してみようという者が現れるようになった。

2.というのは、抗日戦争のドラマが粗製乱造され過ぎて、中には非現実的な場面などがあり、視聴者に媚びて娯楽性を持たせるものが多い。また、日本軍が中国人女性を犯す場面などは、女性が苦しむ場面を異様なほどエロチックにクローズアップして、抗日ドラマとはほど遠い画面になっている。結果、抗日を一種の娯楽とみなして、コスプレの対象に入れるような若者が現れはじめた

なぜ抗日ドラマが多いかというと、ドラマや映画は全て国家による許可制だからだ。内容が抗日だとして申請すると、すぐに許可が下りる。制作者側としては興行的に儲けるために、勢い視聴者の興味をくすぐる「エロ、グロ、ナンセンス」に走り、過当競争を生き抜こうとするようになった。慌てた中国政府は抗日ドラマに対する制限を設けたが、時すでに遅し。DVDなどで出回ってしまった。

3.学校教育において愛国主義教育を過剰に行ない、抗日戦争の跡地である愛国主義教育基地を参観することが義務付けられていることに対して、嫌気がさす若者が現れはじめた。

4.本当に中国共産党が言うように、日中戦争時代に中国共産党軍は勇猛果敢に日本軍と戦ったのかを疑問視する者が現れ始めた。それは最初のうちは抗日ドラマと現実との非整合性から発せられた疑問だったが、やがて拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』の中国語版が出版され、Great Fire Wall(万里の防火壁)の「壁越え」をして情報を入手する者が現れるようになった。これは「精日」現象とは異なる、深刻な問題を習近平政権にもたらすようになっている。

今年の全人代で「英雄烈士保護法」という法律が新たに制定されることになる。これは日中戦争時代に日本軍と「勇猛果敢に戦った」とされている中国共産党軍の「抗日神話」に対して、「それは事実に反する」といった批判をすることを絶対に許さないという法律だ。批判した者は犯罪者になり逮捕される。英雄烈士を愚弄し、中国共産党を侮辱した罪である。

習近平氏の国家主席終身制を可能ならしめる憲法改正の目的は「中国共産党による一党支配体制の維持」にあるが、この「英雄烈士保護法」も、その一環とみなしていいだろう。

反日戦略と習近平の国家主席終身制は同一線上にある。

それでいていま中国が日本に対して、あたかも友好的であるかのような顔を見せているのは、米中関係が悪化した時の担保として日本を必要とするからであって、決して友好的感情からではないことを、日本人および日本政府は肝に銘じておかねばなるまい。

ことここに至ってもなお、日本の報道や研究者には、憲法改正による国家主席の任期撤廃を「権力闘争」の結果と分析しているものが散見される。それは中国を見る視点を誤らせ、日本の国民にいかなる利益ももたらさない。まさに視聴者や読者の興味をそそることに重点が置かれた姿勢ではないかと憂う。』

 

この遠藤さんの見方が当たっているかどうかはともかく、「精日」と呼ばれるような若者が出現しているのは面白い。どんな強権的な政権でも、すべての国民を意のままにすることはできない。豊かな中国で育った若者たちが、共産党の一律的な価値観の押し付けに反発する日は必ず訪れるだろう。

ゴールデンウィークには、大連に行こうと思う。

今の中国はとにかく面白い。初めての大連で何を感じるのか、このブログで書くつもりだ。

 

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