<吉祥寺残日録>怖いけれど面白い!中国という国の圧倒的なダイナミズム #210419

日米首脳会談を終えて菅総理が帰国した。

半世紀ぶりに共同声明に「台湾問題」を明記し、アメリカを中心とする中国包囲網に大きくコミットすることとなった。

日本としては大きな転換なのだが、欧米メディアでは菅総理の訪米はほとんどニュースになっていない。

欧米のジャーナリストから見ると、台湾はまだ遠いテーマであり、日本の動向はそれほど重要なファクターではないという判断なのだろう。

中国側の反応が気になって、人民日報の日本語版「人民網」を見てみると、予想したよりもあっさりとした扱いだった。

記事のタイトルは、『外交部、米日共同声明の中国に関する否定的内容についてコメント』。

外交部報道官が記者の質問に答える形で、次のように反論した。

【報道官】台湾地区も釣魚島も中国の領土だ。香港地区、新疆関連の事は完全に中国の内政だ。中国は南中国海諸島及びその周辺海域に対して争う余地のない主権を有している。米日共同声明は中国の内政に乱暴にも干渉し、国際関係の基本準則への重大な違反を犯している。中国側はこれに強い不満と断固たる反対を表明する。すでに外交ルートを通じて米日に厳正な立場を表明した。

米日は口先では「自由で開かれた」ことを鼓吹しながら、実際には徒党を組んで「小さなグループ」を作り、集団的対立を煽動している。これは完全に時代の潮流に逆行する動きであり、この地域と世界の圧倒的多数の国々の期待と相反しており、地域の平和と安定を脅かす「米日同盟」の本質と企てを一層明確に世界の人々に認識させるだけだ。我々は米日に対して、中国側の懸念を真剣に受け止め、「一つの中国」原則を厳守し、中国への内政干渉を直ちに止め、中国の利益を損なうことを直ちに止めるよう要求する。中国側は必要なあらゆる措置を講じて、国家の主権・安全・発展上の利益を断固として守っていく。

引用:人民網 日本語版

「人民網」のサイトには、対立の火種となっている「新疆綿」に関する記事が出ていた。

上の写真は「人民網」に掲載されていた綿花畑の写真だ。

大地に整然と引かれた無数のライン、これは一体何だと思ったら・・・

トラクターが大地に敷いている農業シートの列だった。

12日、アクス地区沙雅(シャヤール)県の畑では、自動運転の種まき機が作業をしていた。その様子は壮大というのにふさわしい眺めで、種まき機は精密な種まき作業を行い、その効率は大幅に向上し、農業のテクノロジー化が進んでいることを感じ取ることができた。

アクス市の綿花畑約6万ヘクタールでも種まきが次々と始まっている。精確な種まきとマルドリ方式が採用された畑での種まきなどの技術が導入され、それら技術が単位面積当たりの生産量を増加させ、病害を減らし、生態を調整する役割を担うほか、土壌内部の構造が保護され、綿の種の発芽率が効果的に保証され、病虫害の拡散も避けることができるようになっている。同時に、土壌の改善にもつながっている。

アクス市農業農村局農機科の張田幸・科長は、「種まきから、畑の管理、収穫まで、7割以上の作業が機械化されている。それにより、労働力が大幅に削減され、栽培コストも低減したほか、綿花の品質も大幅に向上した。当科は、綿の栽培の全プロセスの技術指導を行っており、綿花の高い品質を保っている」と説明した。

引用:人民網 日本語版

広大な大地に綿花を育てる種まき機は「自動運転」だという。

一昔前までは労働集約型の象徴だった中国農業が激変し、日本の農業よりもずっと近代化が進んでいるということかもしれない。

「自動運転」ということで言えば、こんな記事も出ていた。

中国の複数の都市では、すでに「無人路線バス」の運行が始まっているそうだ。

現在、中国、米国、フィンランド、ドイツの4カ国が開放的な道路で無人路線バスを運営している。うち中国の路線の全長は世界一で、2位の米国の8.6倍となっている。データによると、中国の全長は54.6キロメートルで、世界全体の路線全長の約85%を占めている。

国内の都市別で見ると、蘇州は全長15.3キロメートルで1位になり、2位の重慶市を53%上回っている。3位は深セン。

中国初の常態化運営5G無人バス路線「蘇州Q1」番は常態化運営を始めてから5カ月以上になる。早鳥計画の利用者2924人を募集し、延べ1万1000人以上が「低炭素移動」を行っている。蘇州移動集団顧客部副マネージャーの周俊氏によると、この路線には130台以上のスマートコネクテッド感知設備が設置されており、12カ所の交差点をカバーしている。エリア内の中国移動の5Gネットワークの通信速度は500Mbps、遅延は15ミリ秒以内。5Gネットワークにより信号放送、5Gによる視距離外の感知、車両同士の協同などの各種応用が実現されている。

引用:人民網 日本語版

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一方、「人民網」にはこんな記事も載っていた。

『割れた腹筋、安い家賃、国産品、人気ブランド 上海の青年が今後5年に期待することは?』

今時の中国の若者に関する記事だ。

調査・研究によると、新興職業に従事する青年が急速に増加している。従事する新興職業で最も多いのは、ネット注文配達員(35.32%)、IT(12.70%)、公式アカウントや微博(ウェイボー)などオムニメディア運営者(9.26%)などだった。

上海の青年は副業に高い関心を示しており、最も人気の副業トップ5は、ショート動画コンテンツ創作者(31.13%)、公式アカウントや微博などオムニメディア運営者(29.74%)、リアル脱出ゲームのシナリオライター、ペットグラファー、旅行写真の企画など(26.68%)、ライブ配信パーソナリティー(24.80%)、ネット文学執筆者(21.77%)だった。

しっかりお金を稼いで、それを思いっきり使うというのが上海の青年の際立った特徴となっている。

引用:人民網 日本語版

「ネット注文配達員」が35%というのも驚く数字だし、「ショート動画コンテンツ創作者」などの副業で金を稼ごうとする若者たちの姿には、日本の若者とは違う物欲と生存競争を感じる。

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その一方で・・・

上海の青年は、国産品や流行ブランドが大好きで、消費がさらに促進する方法として、「さらに多くの国産品ブランドの老舗ショップ・専売店を設置する」(63.56%)、「さらに多くの海外の人気ブランドの体験ショップや旗艦店を設置する」(60.02%)を挙げた。

引用:人民網 日本語版

世界中の企業を魅了する中国の巨大市場。

しかし中国の若者たちは「国産品」嗜好を強めているようで、戦後の日本と同じ道を辿っている。

こうした中、日本の輸出に占める中国向けの割合が初めて2割を超え22.9%となったことが発表された。

日本企業の中国依存がますます強まっているのだが、肝心の中国の消費者たちは米中対立の激化によって今後「メイドインチャイナ」嗜好をますます強めるだろう。

実際に、かつての日本がそうだったように、実際にモノを生産している国の技術力は高まる。

「メイドインチャイナ」イコール「品質が良い商品」の代名詞となる日もいずれ来ると考えておいた方がいい。

その時になって慌てないよう日本企業は慎重に中国依存の比率をコントロールする必要がある。

そんな中国で今年話題になっているドラマがあるという。

タイトルは『山海情』。

 中国共産党は創立100周年に向けた計画を一段と本格化させ、新たな成果を祝っている。それは、愛国的な人気テレビドラマの制作だ。 

 党の貧困対策を描いた23話シリーズのドラマ『山海情』は今年に入って放映され、中国のレビューサイト「Douban.com(豆瓣)」で10点満点中9.4点のスコアを獲得。米動画配信大手ネットフリックスのオリジナルシリーズ『クイーンズ・ギャンビット』などを超える人気を博した。海外版の制作も予定されているが、英語字幕付きのオリジナル版はすでに動画共有サイト「ユーチューブ」で公開され、何百万回も再生されている。

引用:ウォール・ストリートジャーナル「中国プロパガンダさらに洗練、TVドラマに大反響」

「人民網」にもこのドラマに関する記事が出ていた。

「山海情」は主に、1990年代、寧夏回族自治区の西海固地区の貧困者たちが、中国政府の貧困者支援政策の呼びかけに応じ、山奥から首府・銀川市に近い黄河の水を用水路で耕地まで引いた灌漑農業が行われる地域に移転し、福建省のペアリング支援の下、苦労を乗り越えて起業し、勤勉に働いて豊かな生活ができるようになるまでの様子を描いている。草木も生えないようなゴビ砂漠を、快適な生活ができ、繁栄した「金灘村」へと変化させるような発展が描かれている。長々と続くドラマと異なり、「山海情」は全23話で完結。時代の変化を生き生きと、かつリアルに描き出している。

「90後」、「00後」の視聴者の多くから、「このドラマを見て泣いた」といったコメントが寄せられている。実際には、涙を誘っているのは、「お涙頂戴」のシーンではなく、村民が移転したばかりの時は砂地を堀り下げて作った粗末な家に住み、女性が風や砂ぼこりが舞う中、歯を食いしばって体が不自由な夫と、幼い子供を連れて荷車を引く姿、そして、キノコがなかなか売れないという難題を解決するために、村党支部の書記が村民のために頭を下げる姿などだ。

引用:人民網 日本語版

日本で言うところの「北の国から」や「おしん」といったドラマなのだろう。

ただ、日本と中国の大きな違いは、このドラマが中国共産党創立100周年に向けたプロパガンダだという点だ。

中国共産党によって少数民族が暮らす辺境の自治区にも開発の手が差し伸べられているというメッセージが込められている。

プロパガンダのターゲットとなるのが中国の若者たちだ。

あるネットユーザーは、「とてもいいドラマ。子供にリアルな中国、リアルな中国の農村、リアルな歴史の発展の過程を知ってもらうことができる。そして、どんなものも、簡単に手に入れられるものではなく、多くの人が重責を負い、一歩ずつ前に進んだ結果であることを伝えることができる」と綴っている。

引用:人民網 日本語版

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若者たちに関しては、「人民網」でこんな記事も目についた。

『中国、85.5%「青少年はたくましさを養うべき」 最新調査』

「青少年がたくましさを養うよう導くにはどうすれば良いか」というのは、中国の社会で関心が高まっている問題だ。中国青年報社社会調査センターは問巻網(wenjuan.com)と共同でこのほど1519人を対象とした調査を行ったところ、「今の青少年はたくましさを養う必要があるか?」との質問に、回答者の85.5%が「ある」と答えた。「ない」という回答は4.6%にとどまった。

中国青少年研究センター少年児童研究所の孫宏艷所長は、「90後(1990年代生まれ)と00後(2000年以降生まれ)を比較する研究を行ったことがある。00後のほうが、エゴが強かった。時代が発展するにつれて、人々はますます自分自身やルックスに注目するようになってきているが、その一部は積極的であったり正しい方向とは言い難い。例えば、性格的に苦労することができなかったり、しばしば泣き、家に引きこもってしまうといった点などだ。青少年が憧れるようなアイドルたちが、青少年に与える影響は大きく、性格や気質を養う基礎段階となる小学生から中学生くらいにかけての時期、女性と一緒に時間を過ごすことが多くなっている。男性が子供と一緒に時間を過ごす場合、女性が一緒の場合と異なり、何かを探求したり、冒険したりすることが多くなる。大人が子供を過度に保護すると、子供は苦労したり、冒険したりすることを知ることなく育ち、性格も弱々しくなってしまう」との見方を示す。

引用:人民網 日本語版

「00後」世代というのは、20歳前後の若者だ。

経済発展を担ってきた上の世代から見ると、豊かさの中で育った頼りなく見えるのはどの国でも同じことだ。

こうした中国の若者たちの間では「草食系」の男性アイドルが人気だという。

「草食系」の男性アイドルが人気となっている原因について、調査では、回答者の65.7%が「日本や韓国の文化やエンタメの影響」、61.4%が「インターネットで注目を集めているため」、38.2%が「家庭における教育において父親の影が薄いことと関係がある」、37.9%が「有名人の影響」、30.7%が「女性がますます強くなっていることに原因がある」と答えた。

浙江省寧波市のある中学教師の馮耀威(仮名)さんは、「たくましさを養う教育というのは、主に、青少年がたくましく、毅然とした態度を養い、勇敢に責任を果たし、健康的でポジティブに、他の人と協力しながら学習する生活態度を育て、高い目標を持って、積極的に向上心を抱いて、人生を歩むようサポートする教育だ」と説明する。

引用:人民網 日本語版

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「中国の夢」を掲げ、大中華帝国の復活に邁進するおっかない習近平政権の下で着実に育つ「草食系」の新世代。

10年後の中国がどんな国になっているのか、怖いけれど面白い。

習近平の中国①

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