真の豊かさとは?

夏休みのヨーロッパ旅行から帰国した。

今回は、まだ行ったことのないフィンランド、エストニア、アイルランド、ルクセンブルクの4カ国を回った。

いずれもEUに加盟する“小国”。

でも、それぞれに個性的な魅力的な国々だった。

フィンランドは、人口550万人。

一人当たりGDPのランキングは、世界15位だ。

最近日本でも注目されている「 MaaS」の先進国として知られる。MaaSは「モビリティ・アズ・ア・サービス」の略、ICTを活用して様々な交通手段をシームレスにつなぎ「移動」を効率的に行おうという概念だ。

ヘルシンキで生まれた「Whim」というアプリサービスがその代表例で、現在地から目的地までの最も効率的な移動手段を提示してくれて、決済も一括して行うことができる。

所有から利用に重点を移した交通の概念が、近い将来日本でも実用化されるだろう。

フィンランドから日帰りで訪れたエストニアは、人口134万人。

一人当たりGDPは、世界42位。旧ソ連諸国の中では最も豊かな国だ。

エストニアといえば、スカイプを生んだ国。IT立国を目指し、行政サービスを全てITで行う「電子政府」の先進国として有名だ。

ただ、そんなIT先進国というイメージを持ってエストニアを訪れると、拍子抜けするほどのどかな街並みが待ち構えている。

ハンザ同盟の最も北の町として発展した首都タリン。旧市街は世界遺産に認定されているだけあって、とても魅力的な中世の街並みだ。こんな街でITベンチャーが次々に立ち上がっているというのも、とても興味深い。

イギリスの西に浮かぶ島国アイルランドは、人口457万人。

かつてはヨーロッパの最貧国で多くの移民がアメリカに渡ったアイルランドだが、最近ではEU諸国でも有数の経済成長を続けており、一人当たりのGDPは世界5位となっている。

グーグルをはじめとする多くの多国籍企業がアイルランドに拠点を構える。海外企業を優遇する独自の税制と英語圏であることがこの国の強みだが、イギリスのEU離脱によって大きな影響を受けることも心配されている。

ブレグジットの最大の懸念である北アイルランド問題も気がかりだが、アイルランドの税制を利用して合法的な節税を行なっている多国籍企業の実態も知った。イギリスのEU離脱に備えてシティの金融機関がダブリンに拠点を移す動きも伝えられ、アイルランドへの国際的な関心が高まりそうだ。

そして最後に訪れたのがルクセンブルク、人口はわずか57万人。しかも、その4割以上が移民だ。

だが、ただの小国ではない。

一人当たりのGDPは、なんと世界1位。世界26位の日本と比べて、3倍も稼いでいるのだ。

100年ほど前までは、ヨーロッパの辺境と呼ばれ最も貧しい地域だった。そこから製鉄業で国を起こし、ドイツとフランスの戦争で国を荒らされてもそこから這い上がった。計画的に国の多角化を進め、金融業や通信業、さらには宇宙産業でも世界で存在感を示している。

日本人にとってルクセンブルクという国はほとんど馴染みがないが、驚くほど美しい落ち着いた街であり、国づくりに対する意識が極めて高いという点で、日本がお手本とすべき国だと思った。

ルクセンブルクは、ベルギーのブリュッセル、フランスのストラスブールと並んでEUの首都機能を担っている。ドイツとフランスに挟まれた立地条件を最大限に生かして、EUの調整役を果たしてきた。自国第一主義が蔓延する今の世界にあって、ルクセンブルクの存在は貴重であり、もっと私たちも知るべきことが多いと感じた。

人口減少時代を迎える日本人にとって、今後考えるべきは国全体のGDPではなく、一人一人の豊かさだろう。

今回訪問した4カ国のうち3カ国は、一人当たりGDPで日本を上回る国だ。

世界1位のルクセンブルクは、確かに国中が豊かな印象を受けた。街を離れ田舎町に行っても、個々の家はきれいで、荒んだ印象は一切受けなかった。でも、アイルランドやフィンランドは、日本よりも全体的に素朴な印象で、街の景色や人々の服装にも金持ち風なところは一切感じなかった。

中国やアジア諸国のような高層ビル群や金儲けの熱気は全く感じられない。どこまでも静かで、穏やかな印象だ。人が少ないということは、否が応でもこういう街になっていくということなのだろう。

人口が減っていくことを必要以上に恐れるのではなく、そうした未来像を正確に予想した上で、私たちの進むべき道を考えたい。

大切なのは一人一人の豊かさ、むしろ「幸福度」と呼ぶべきかもしれない。

本当の豊かさとは何なのか?

今回の旅は、それを考えるきっかけとなりそうだ。

旅の模様は、おいおい私の旅ブログ「旅したい.com」に書いていきたいと思っている。

乞うご期待。

コメントを残す