国際的な交渉ごとというものは、いつも土壇場になるとまとまることが多い。
あれほど妥協点がなさそうだったイギリスとEUの離脱案が、意外なほどあっさり合意された。
一体どちらがどのような妥協をしたのか?
ロイターが合意内容をまとめていたので、引用しておく。
<関税>
英自治領北アイルランドは、英国の関税区域にとどまるが、引き続きEU単一市場への入り口となるため、北アイルランドに到着する貿易品にはEUの手続きが適用される。
アイルランド島で通関検査はなくなる。検査は港湾で実施される。英当局は、北アイルランドでEUの関税ルール施行を代行する。これはEU側の譲歩だ。EUは以前の協議の場では、第3国に関税徴収を任せればそれは主権の放棄だと主張していた。
第3国から北アイルランドに入ってくる貿易品のみ、英国の関税制度が適用される。そこからEU市場に向かうとみなされる場合、英当局がEUの関税を徴収する。
アイルランド国境を通過する旅行者の個人的な所持品にはEUの関税は課されない。免税品のいわゆる「第2カテゴリー」は、即座に消費されるモノだけに適用される見通し。詳細はEUと英国の「共同委員会」がブレグジット後に定義する。
英国には、EUの補助金ルールに抵触しないという条件で、北アイルランドの企業への消費税還付が認められる。
北アイルランドは、英国が将来締結する貿易協定の恩恵を享受することができる。アイルランドとEUの単一市場に貿易品が入らない限り、英国の関税だけが適用される。
<北アイルランドの同意>
北アイルランド議会はブレグジット後、EUの規制体系にとどまり続けることに同意を与えなければならない。
まずブレグジットから4年経過した時点で、同議会において有効投票の過半数が同意すれば、さらに4年間はEUの規制が適用される。ただしアイルランドへの併合を求める分離派と、英国との統合維持を望むプロテスタント系グループの双方の過半数の同意を得れば、EU規制は8年間継続される。
逆に過半数の同意が得られない場合、2年間の「冷却期間」を設けてその間に双方がアイルランドとの厳格な国境制度を復活させないための新たな解決策を見出す必要がある。
従来の協定案に盛り込まれていた「安全策」とは異なり、この仕組みは英国とEUの新たな自由貿易協定によって置き換えられない。これもEU側の大幅な譲歩と言える。
<将来の貿易協定と公平な土俵>
EUと英国はブレグジット後に、関税や無制限の輸出入枠がない野心的な自由貿易協定の締結を目指す。環境、気候変動の問題や労働者の権利などに関する高い基準も維持すると共同で表明している。
<従来案から残された部分>
従来案で合意されていたブレグジット後の市民の権利に関する部分はそのままとなった。2020年末までの移行期間と、それが1年ないし2年延長される可能性も残された。
ロイター

今年の夏、私はブレグジットで焦点となっている北アイルランドに行った。
北アイルランドは、アイルランド島にあるが、イギリス領だ。
中心都市のベルファスト。
長年流血の抗争が続いたこの街では、今もカトリック住民とプロテスタント住民の居住エリアがはっきりと分けられ、「ピースライン」と呼ばれる高い壁が2つの地区を分断していた。

元を正せば、イギリスがアイルランドを侵略し、プロテスタントを大量移住させたことから生じた北アリルランド紛争。
イギリスのEU離脱が、まだ不安定さを残している北アイルランド紛争に火をつけないことを祈る。
まずは、その前にイギリス議会を通さなければならない。
でも合意なき離脱は誰も望んでいないので、最終的には今回の合意案で離脱することになるのではないかと私は予測している。
さて、どうなるだろう?
北アイルランドの現在については、こちらの記事をどうぞ。
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