2020年の年末年始/ゴーンとイラン

年末年始の休暇を使って、タイとニュージーランドに旅行してきた。

ニュージーランド最大の都市オークランドからバンコク経由で成田まで、長時間フライトに耐えて今朝帰宅した。オークランドの宿をチェックアウトしてから我が家にたどり着くまで約27時間もかかったが、時差ボケもないので思いの外、旅の疲れはなくこうしてブログを書いている。

年越しの瞬間はオークランドで迎えた。

南半球のニュージーランドでは年越しイベントも真夏の夜。

日本よりも4時間早く新年を迎え、オークランドのシンボルである「スカイタワー」から花火が打ち上げられた。

花火の規模としては大きくないが、大勢の人たちが通りを埋め、何事も控えめなこの国らしいいいカウントダウンだった。

そんな旅の記録はおいおい書くとして、年末年始にあった出来事について簡単に書き留めておきたい。

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年末のニュースとして驚いたのは、やはりゴーン被告が秘密裏に出国しレバノン入りしたことだろう。

まだ全容がわかったわけではないようなので、ここでは東洋経済オンラインの記事を引用させていただく。

報道によると、昨年12月29日に、TCTSRと呼ばれるプライベートジェット機のボンバルディア グローバル・エクスプレスが、トルコの会社であるジェット航空ASによる運航で、関西国際空港のプライベートジェット機専用施設「玉響(たまゆら)」から、楽器ケースに入ったゴーン氏を乗せてイスタンブールへと飛んだ。

 米ウォールストリート・ジャーナル紙によれば、機内には乗客2人しかいなかった。そのうち1人は、「民間警備業界という小さな狭い世界では知られた男」と同じ、マイケル・テイラーという名であったという。ジョージ・ザイクと名乗るもう1人は、テイラー氏とのつながりを持つ警備会社の従業員と同名だった。

 この2人がおそらくゴーン氏を運んだのだろう。この一行は数個の非常に大きな荷物を携行しており、そのなかにはゴーン氏を入れていた楽器ケースも含まれていたという。

 航空機をリアルタイムで追跡するFlightradar24で入手できるデータによると、TCTSR機は関空を飛び立つ前日、28日にマダガスカルのアンタナナリボを出発、ドバイに立ち寄り、関空に到着した。

 アンタナナリボはこの一連の出来事で重要な役割を果たしたかもしれない。その理由はマダガスカルの立地にある。アンタナナリボにあるイヴァト空港は多くの航空機が利用する重要な航空ルートから離れた場所にあり、保安管理が緩いことでも知られているのだ。アフリカに近いことから、この地域で紛争があった場合など、警備会社が要人の脱出を図る際にも利用されている。

 つまり、ゴーン氏を「解放」するミッションを受けた警備会社にとって、アンタナナリボは絶好のスタート地点であった。ドバイに立ち寄ったのは、おそらく航空機に給油するためだろう。関空の玉響ゲートを通って前述の2人が29日、日本に入国したのだとしたら、彼らは入国後すぐにゴーン氏と落ち合い、彼を楽器ケースの中に入れ、税関を通って日本を出国したということになる。

出典:東洋経済オンライン「ゴーン逃亡に沈黙し続ける日本政府の「無責任」」

日本ではあまり馴染みはないが、国際的には紛争地から誰かを救い出したりするニーズは結構あって、それを請け負う専門の民間企業がある。

映画に登場するような戦場のプロたちが金でミッションを請け負う。金額はもちろん高いが、彼らにかかれば日本の役人を欺くことなど容易いことだろう。

東洋経済の記事は、沈黙を守る日本政府の姿勢を批判する内容だが、私の受け止めは日本の多くのメディアとは少し違う。

ゴーンさんの事件にはもともと違和感を持っているからだ。あの事件は、日産の権力闘争に検察が乗っかったあまり気持ちのいいものではなかった。

日産を倒産の危機から救ったゴーン氏の報酬は日本の水準からすると高いが、国際的に見れば安いぐらいだとも言える。その他、権力乱用と言える事象もあるが、それを言えばワンマン社長の会社では大なり小なり似たようなことはある。そうしたワンマン社長を全部逮捕していたら日本経済は成り立たないのではないかと危惧してしまうのだ。

だから、日本政府がこの問題で大騒ぎをしないのは、むしろ賢明だと思う。レバノン政府はゴーン氏を匿うつもりのようだし、フランスなど国際世論の動向も日本国内のそれとは違うようだ。当面は、ICPOなど国際機関を使って正攻法での外交努力を粛々と進めるしかないだろう。

いずれにせよ、もうしばらく様子を見なければ、事態がどのように展開するのか予想がつかない。

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年を開けると、衝撃的なニュースに耳を疑った。

イラン革命防衛隊「コッズ部隊」のソレイマニ司令官が、バグダッド空港でアメリカ軍の無人機の攻撃を受け殺害されたというのだ。ソレイマニ司令官は、イランの防衛・外交の実権を握る非常に重要な人物で、イラン国内では英雄として人気が高かったという。

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ソレイマニ司令官について、米CNNは次のように伝えている。

ソレイマニ司令官は、イランでは勇敢でカリスマ性があり、兵士から愛される存在として英雄視される人物だった。

イランの最高指導者ハメネイ師はかつて、ソレイマニ司令官を「革命の生きる殉教者」と評したことがある。しかし、米国からは冷酷な殺人者とみなされていた。

イラン屈指の実力者の一人であるこの人物は、イランの対外工作を担う精鋭組織のコッズ部隊を率いていた。同部隊は米国からは外国テロ組織と見なされている。

ソレイマニ司令官が軍で第一線のキャリアを踏み出したのは1980年代初め、イラン・イラク戦争だった。そこから頭角を現すと、その後中東地域でイランの影響力を広めるのに重要な役割を担うようになり、同国内で代えがたい人物となっていった。

ソレイマニ司令官はイランの「影の司令官」とも呼ばれ、1998年からコッズ部隊を指揮。イラクやシリアでのイランの軍事作戦を指揮した。

米当局によると、2003年に始まったイラク戦争では、ソレイマニ司令官の部隊がイラクの反乱勢力に、装甲を貫通可能な特製の爆弾を供与。米軍に対する致死性の武器となった。ただ、イラン側はこれを否定している。

過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」との戦いでは、ソレイマニ司令官がISISのスンニ派戦闘員と戦うイラクのシーア派勢力を支援するため、イラクへの出入りを繰り返しイラクの戦場にいるとの報道が続いた。

コッズ部隊は中東からはるかに離れた地域でも暗躍した。

米首都ワシントンでは2011年、コッズ部隊の隊員がサウジアラビアのジュベイル駐米大使の暗殺を図って未遂に終わる事件があった。米財務省によると、この計画にもソレイマニ司令官が関与していたという。

国防総省は3日の声明で、ソレイマニ司令官が「イラクや中東全域で米外交官や米軍要員を襲撃する計画を積極的に進めていた」とした。

さらに、イラクで最近相次ぐ有志連合の基地への襲撃についても、ソレイマニ司令官が主導したと指摘した。先月27日の襲撃では米国人業者とイラクの要員が死亡している。

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トランプ大統領は、「我々は昨夜、戦争を止めるための行動を取った。戦争を始めるための行動ではない」と暗殺の正当性を主張しているが、これはビンラディンやバグダディといったいわゆるテロリストの殺害ではない。イランという国の中心メンバーに対する暗殺は、即戦争の大義となりうるのだ。

イランは当面の3日間を服喪期間として、すぐに過激な行動に出ることはないようだが、何もせずにやり過ごすという選択肢は、イスラム政権の存続に関わるため絶対にできないだろう。

イランは、必ず何かしらの報復攻撃を行う。

直接アメリカの出先機関を狙った攻撃もあるかもしれないし、要人に対するテロも考えられる。親イランのヒズボラなどを使ってイスラエルやサウジといったアメリカの同盟国を攻撃することもありえるだろう。

トランプ大統領もこれに反応して、もしイランが報復を行なったら直ちにイラン国内にある52箇所の重要拠点を攻撃すると脅しをかけた。

「52」という数字は、イランで1979年に起きたアメリカ大使館人質事件で人質となったアメリカ人の数だという。

アメリカの本音とすれば、イラン革命前の親米的なイランが中東に復活することが理想なのだろうが、そう簡単にはいかない。

軍事力ではアメリカが絶対的に優位ではあるが、宗教が社会の深くまで浸透した今のイランは、たとえ国土が破壊されても簡単には屈服しないと予想する。軍事大国だったフセインのイラク以上にアメリカにとっては厄介な存在となるだろう。

戦争は金の無駄だと考えるトランプさんとしては、本格的な戦争は本音ではしたくないのだろう。しかし、選挙目当てで人気取りのために行なった選択が大きな悲劇を生むこともある。

戦争になれば、アメリカの石油産業や軍需産業は喜ぶだろうが、日本経済にとっては悪夢となる。

新年早々のトランプ大統領からのプレゼント。

2020年の世界に新たな最大級の不安要因が生まれた。

1件のコメント 追加

  1. dalichoko より:

    きれいですね。華やかです!!(=^・^=)

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