今年の夏、日本の平均気温は過去2番目に暑かったそうだ。
気象庁によれば、今年6月から8月の平均気温は、過去30年の平均値と比べ0.91度高くなり、1898年の統計開始以来、2番目に高い記録だった。
ちなみに過去1番暑なった夏は2010年だったという。

特に、6月下旬の暑さは異常だった。
梅雨前線が早々に北上してしまい、気象庁は6月中に各地の梅雨明けを発表したのだが、ここにきてこっそりと梅雨明けの時期を大幅に修正したという。
6月27日とされた関東甲信の梅雨明けは7月23日、中国地方は7月26日に変更された。
こうした1ヶ月近い大幅な見直しは1997年以来だといい、スーパーコンピューターの性能が大幅に上がってもいまだに気象を完全に把握することは難しいことを証明した形だ。
このところ大きなニュースになっているのがパキスタン。
北部ではヒマラヤの氷河が夏の暑さで溶けて鉄砲水が村を襲い、南部ではモンスーンにより増水したインダス川が各地で氾濫を起こし、パキスタン政府によれば国土の3分の1が水に浸かってしまったという。

川沿いに建っていた高級ホテルが崩れ落ちたり、衝撃的な映像が次々に飛び込んできて、その映像の激しさで普段パキスタンのニュースなど扱わない日本のテレビでも取り上げられるようになった。
すでに3000万人以上が被災しているとされ、国連も220億円規模の支援を発表した。

洪水ということでいえば、中国南部でも6月に記録的な豪雨が降り500万人が被災した。
中国ではその後、一転して干ばつとなった。

中国人の胃袋を支える長江流域では70日以上にわたって異常な高温と雨不足に見舞われた。
この流域では4億5000万人が暮らし、中国の食糧生産の3分の1を賄っている。
人工降雨技術を誇る中国だが、これだけ広域での渇水には対抗する術はないようだ。

この夏、ヨーロッパでも記録的な暑さと水不足に見舞われた。
ロンドンでは史上初めて気温40度を観測したほか、水上交通の要であるライン川の水位が極端に下がり、少なからず経済への影響も出た。

アメリカでも記録的な猛暑により大規模な森林火災が4万3000件以上発生した。
消失面積は四国の大きさを超えるとされている。

テキサス州では渇水で干上がった川底から1億年前の恐竜の足跡が見つかって話題となった。
この足跡は「ローンレンジャーの足跡」と呼ばれていると説明。1頭のアクロカンサウルスのもので、約30メートルにわたって続いていた。
この1頭だけで140個の足跡を残しているとみられており、そのうちの約60個が露出しているという。

こうした世界規模の異常気象は偏西風の蛇行によるもの。
ヨーロッパでは偏西風が北上し、サハラ砂漠の暑く乾燥した空気を呼び込んだ。
パキスタンからイランにかけては逆に偏西風が南下してシベリアの寒気を引き込み、逆にインドでは偏西風は北上して大量の湿気を含んだ熱い空気がヒマラヤに吹きつけた。
こうした偏西風の蛇行はまさに地球温暖化の典型的な症状だ。
パキスタンのレーマン地球環境大臣は「温室効果ガスが私たちの気候を“生き地獄”に変える」と発言した。
世界の温室効果ガス排出量の1%にも満たないパキスタンが被ったあまりに大きな犠牲は、一国だけでは解決しようがない。
「地球温暖化」という言葉も世界中の人たちにすっかり定着したが、先月末に開かれた「G20環境・気候閣僚会合」はウクライナ情勢をめぐる欧米とロシアの対立により共同声明をまとめることさえできなかった。
地球温暖化の影響が誰の目にもはっきりと見えるようになった夏、愚かな人類は一致団結してそれに対抗する道筋を全く見いだせていない。