昨日から岡山県の「まん延防止等重点措置」が解除され、1ヶ月半ぶりに岡山に帰省した。

東京は今朝、ごく弱い雨が降る空模様で日中も冬に逆戻りしたような寒い日のようだが、西日本は穏やかな陽気に恵まれ、岡山もとても暖かかった。
なんだか、日光の強さに違いを感じる。

山はまだ枯れ木のままではあるが、庭や道端には「ホトケノザ」とおぼしき野草が花を咲かせていて、もうすっかり春といった感じである。
やっぱり公園の草よりも田舎で見る草の方が自然で、心が落ち着く。

岡山駅で妻と合流して伯母の古民家に直行する。
心配していた自動車のバッテリーは上がっておらず、すぐにエンジンがかかった。
さすが新車でハスラーを買った甲斐があるというものだ。

1ヶ月半ぶりに畑の様子を見て回る。
この季節はさすがの雑草たちもおとなしくしていてくれるようで、1月に耕した畑もほぼそのままの状態。
じっと春の到来を植物たちが待っているようだ。

今日一番目についたのは桃の木。
枝先にもう花芽がたくさん出てきていた。
本当は2月までにいらない枝を剪定しないといけないのだが、来られなかったのでこの機会に少しだけ剪定することにした。

草刈りは徒労感ばかりの疲れる作業だが、こうやって桃の実がなるのを想像しながら剪定するのは楽しい作業だ。
すでに花芽が膨らんでいる枝は残して、枯れ枝を適当に切っておいた。
これでうまく花が咲くかどうかは正直わからない。

そんなのどかな田舎暮らしに舞い戻っても、やはりウクライナのことが気にかかる。
岡山ではWi-Fi環境がないため、アマゾンプライムビデオで映画を何本かダウンロードしてオフラインでも見られるように持ってきたのだが、その中に1本ウクライナの映画があった。
2018年に制作された映画で、今回の軍事侵攻の口実として利用されたウクライナ東部ドネツク州を舞台にした戦争映画である。
映画の出来が今ひとつなので、ストーリーが理解しにくい部分もあるものの、謀略、偽装、ニセ情報というハイブリッド戦争の現実を理解するには格好の映画だと思う。
政府軍の中に入り込んだロシア人の工作員が住民を不当に殺してウクライナ政府軍の仕業に見せかけ、親ロシア・反ウクライナの感情を作り出していく。
ロシア人の工作員が捕虜にしたウクライナ人女性に質問するシーンがある。
工作員「君は何人だ?」
女性「ウクライナ人」
工作員「ウクライナ人なんて存在しない。ベラルーシ人もバルト人もいない」
女性「なら何なの?」
工作員「みんな同じ民族だ。ロシア人、つまりスラブ人さ。アメリカとNATOが俺たちを引き裂いてる。奴らこそ真の敵だ」
女性「デタラメね」
工作員「洗脳されて気づいてないだけだ。俺たちは同じスラブ人。見捨てはしない。ちゃんと直してやる。最後には感謝して貢献を望むようになる」
まさに、プーチン大統領の主張そのものではないか。

戦争にはいつの時代も謀略がつきものだが、ロシアの工作員は筋金入り、しかもウクライナではロシア語を主言語とする人たちも多いために、敵と味方を見分けるのは極めて難しいのだ。
ウクライナで起きていることを理解しようと思ったら、一度見てみる価値がある映画だと思う。

ウクライナでの戦闘は、ますます一般市民を巻き込み住宅街が戦場となってきた。
アメリカの分析によれば、国境周辺に集結していたロシア軍部隊のほぼ全てがウクライナ領内に入ったとされ、いよいよ主要都市に対する総攻撃がカウントダウンとなってきた。
ここ数日、戦争地域から逃げてくる住民の中に高齢者の姿が目立つようになった。
体が不自由だから家に留まる決心をしていた高齢者が、あまりの戦闘の激しさに耐えられなくなり、人の手を借りて家から出てきたのだろう。

電気などのインフラも遮断されることが増えていて、病院では患者たちがちゃんとした設備のない地下室や廊下で命の危険にさらされている。
多くの妊婦が病院の地下や中には地下鉄の駅などで出産していて、その数は1日100人近くにのぼっているという。
それが戦争だ。
ただ平和に暮らしていた一般の人たちには、先を予測することが難しく、本当に戦争に身近に迫ってから重い腰を上げる人も多いのだろう。

ウクライナの人たちがどれだけ苦しもうが、プーチン大統領の決断は全く揺らがない。
チェチェンやシリアで行ってきた戦争に比べれば、まだほんの序の口だからだろう。
ロシアは、日本を含めて経済制裁を発表した西側諸国を「非友好国」に指定した。
政府や自治体、企業を含むロシアの債務者は、「非友好国」に指定された国・地域の債権者に対してはロシアの通貨ルーブルによる債務返済が可能になるという。
経済制裁によってロシアの通貨ルーブルは暴落していて、ロシアと取引している企業にとってはまさに死活問題である。
アメリカはポーランドを通じてウクライナに戦闘機を譲り渡す検討を行っているが、もし本当に戦闘機を支援した場合、ロシアはその国が参戦したものとみなすと威嚇しNATOを牽制している。
一つ間違えば、第三次世界大戦。
連日ウクライナからの悲惨な映像が流れ、欧米では「ウクライナを助けろ」との世論が高まっているようで、戦火がNATOに飛び火する事態だって絶対ないとは言えない状況になりつつある。

ウクライナの戦争映画を見ながら、私はあることを感じた。
2014年のクリミア併合の後、ウクライナではずっと戦争が続いていてのに、私たちはほとんどその戦争に注意を向けてこなかったという後悔だ。
所詮はウクライナの東部で続く内戦、住民同士の対立程度にしか思っていなかった。
しかし、それはロシアによって周到に作り上げられた紛争であって、ロシアはこの東部2州とクリミア半島を結ぶウクライナの土地が欲しかったのだ。
そしてウクライナが西側に接近することは絶対に許さないとの考えのもと、いざとなったら東部2州のロシア人保護を口実にいつでも軍事介入ができるよう作戦を温めていたのだと思う。

今日、日経平均は節目とされた2万5000円を割り込んで終えた。
プーチンという一人の指導者の決断によって、世界の「当たり前」はすっかり破壊されてしまったのだ。
もうウクライナ前に戻ることはないだろう。
冷戦後グローバル化を続けてきた世界は、再びブロック経済に移行する。

西側の企業がこぞってロシアから撤退したように、徐々に中国に頼ったサプライチェーンの見直しも進むだろう。
中国はそれに対応するため、自国で完結する独自のサプライチェーン構築に舵を切るようだ。
そうすると、巨大な中国市場に群がってきた日本企業は否応なく中国市場から締め出されてしまうだろう。
今世紀に入り、中国市場という麻薬にどっぷり浸かってしまった西側の企業が果たして中国なしでやっていけるのか?
ロシアよりもずっと重い課題が今後日本政府や企業にも突きつけられることになるだろう。
でもそれば、いつか通らなければならない道だったんだと思う。
中国に経済を依存していたら、アヘン中毒のようになってしまう。
更生施設に入って、禁断症状の苦しさに耐えるのは今しかないんだと思う。
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