日本の若者たちは頑張っている。

将棋の藤井聡太くんは、史上最年少の19歳3ヶ月で四冠を達成した。
過去に四冠を達成したのは、大山康晴、中原誠、米長邦雄、谷川浩司、羽生善治の5人だけ。
将棋通ではない私でも知る伝説の棋士ばかりだ。
しかも驚くのは、タイトル戦を争う最高レベルの戦いでも、藤井くんは8割を超える勝率を維持していることだ。

竜王戦を終わった段階での今年度の勝率は、実に8割5分1厘。
プロ棋士になってから年度別の勝率が8割を割ったことが一度もないというのは驚異的だ。
このところ、天敵だった豊島将之さんから立て続けにタイトルを奪い、今回の竜王戦ではついに豊島竜王に1勝も許さなかった。
残るタイトルは、渡辺明さんが持つ名人、棋王、王将、そして永瀬拓矢さんが持つ王座の4つだ。
渡辺・永瀬の両氏に対しては藤井くんはこれまで圧倒してきているので、近い将来、羽生善治さん以来の全冠制覇を達成する可能性も高まってきた。
名人位への挑戦は早くても23年春になるというので、すぐにとは行かないものの、今の藤井くんを止められる者は誰もいなさそうである。

タイトルということでいえば、エンゼルスの大谷翔平が先日、指名打者部門での「シルバースラッガー賞」を受賞し、これで今季7つ目のタイトルを手にした。
前人未到の投打での大活躍をしたのだから、当然といえば当然だが、最も注目されているメジャーリーグのMVPもまもなく発表される。
大谷のオッズはなんと「ー5000」。
マイナスのオッズなんてのがあるのかと思ってしまうが、それほど誰もが大谷以外のMVPはあり得ないと考えているということだろう。
さて、こうして誰からも称賛される2人の若者とは違い、世間から執拗なバッシングを浴びているカップルがいる。

自らの愛を貫いて小室圭さんと結婚し、晴れて民間人となった小室眞子さんである。
今日午前、報道陣が待ち構える羽田空港からアメリカの新天地へと旅立った。
空港に現れた眞子さんは、カジュアルな服装に身を包み、ロングヘアーをなびかせて颯爽と出発ゲートを進んで行った。
その姿は実に格好よく、皇室時代の堅苦しさからようやく解き放たれた解放感に満ちあふれ、テレビを見ながら私は「ああ、よかったな」と心から感じた。
小室圭くんが前を歩き、その後ろから眞子さんがついていく。
皇室時代とは違う二人の関係。
ニューヨークに着いてからも普通の人のように静かには暮らせないのかもしれないが、できればそっとしてあげて欲しいと願わずにはいられない。
考えてみれば、二人に対するバッシングは不当で下劣なものだった。
そもそも二人には落ち度はなく、ただ圭くんのお母さんをめぐるスキャンダルに巻き込まれたに過ぎない。
その結果、眞子さんは心を病み、圭くんは20代の貴重な時間を奪われた。
これは由々しき人権侵害である。
たとえ、圭くんが試験に落ちようが、2人がニューヨークで生活に行き詰まろうが、それは二人の問題であり、他人がとやかく口を出すべき問題ではない。
興味本位で書き立てて二人を追いかけ回すメディアも悪いが、それを喜んで受け入れて、ああだこうだと論評する世論にも大きな責任がある。
若者たちは時に未熟ゆえに失敗するが、それが若者なのだ。
年寄りは引っ込んで、自分の老後の心配でもしていればいいのであって、決して若者たちの邪魔をしてはいけない。
皇室のことを心配して物申しているつもりの人もいるのだろうが、大きなお世話である。
皇室のことは本来、もう少し皇室自らで決められるべきだろう。
敗戦によって、現人神から一気に戦争犯罪人のような扱いになってしまった天皇は、自らの振る舞いや家族である皇室のあり様についてさえ表立って発言することが許されない。
すべては国民の代表である政府が決めるというが、そこには皇室を政治利用しようと目論む輩がいる。
少なくとも、皇位継承のあり方については、天皇や皇室の意思がもう少し考慮されていいのではないかと私は思う。

出発に先立って、小室圭さんは母親の元婚約者と面会し、解決金を渡して一連の問題に決着をつけた。
良かったと思う。
もっと早くそうしていればと批判する人もいるが、そうさせなかったのは元婚約者の背後にいた週刊誌であり、世論だったのではないか。
もちろん小室家サイドにも問題があったのかもしれないが、あまりに理不尽なバッシングだった。
反撃してこない相手には散々ひどい記事を書いておいて、すぐに抗議してくる権力者に対しては忖度する、そんなメディアは百害あって一利なし、淘汰されて然るべきである。

それでも私は、大いに期待している。
眞子さんがニューヨークで立派な活動をされるのではないかと。
元皇室という特殊のキャリアと今回の騒動で見せた芯の強さ。
それを活かして、海外との相互理解を促進するような素敵な女性になっていく気がする。
そのためにも、メディアにはくれぐれも二人の生活を邪魔しないよう猛省を促すとともに、眞子さんにはぜひお幸せになっていただきたいと願う。
煩わしい日本を離れて、新生活をアメリカで始められたのは賢明な決断だった。
二人には精一杯これからの人生を楽しんでもらいたい。
一方で目を海外に転じると、若者たちにとっては、「環境問題」が私たち年寄り世代と比べてとてつもなく大きなキーワードになっているようだ。
すっかり時代の寵児となった環境活動家のグレタ・トゥンベリさんは、閉幕した「COP26」について「ブラ・ブラ・ブラ」とツイートした。
ダラダラと話をするばかりで問題解決に動き出そうとしていないと大人たちを批判しているのである。
未来の地球環境と目先の利益。
この相容れない対立は、先進国と発展途上国との間の対立である以上に、世代間での対立である。
パリ協定から離脱したトランプさんに代表されるように、地球温暖化をあえて認めようとしない人は世界中に溢れている。
確かに、自然災害は昔からあったし、今でも暑い日もあれば寒い日もある。
地球の歴史を紐解けば、地球上の気温は大きく上下動を繰り返していて、暖かい時期よりも氷河期の方がずっと長かったのも事実だ。
緩やかに上昇していく気温の脅威を本気で理解するためには、豊かな想像力と科学に対する信頼が絶対に必要だ。
その一方で、脱炭素の取り組みで仕事を失う人々が確実に存在する。
トランプさんが重要視したのは確実に票に結びつくこの人たちであり、仕事を失う恐怖に怯える人たちのNOは、地球温暖化対策に漠然と賛成している人たちのYESに比べてはるかに強固なのだ。
それでも今日閉幕した「COP26」では、プラス1.5度以内というこれまでよりもさらに厳しい目標を世界が意識する場となった。
議長国イギリスが積極的に議論をリードしたおかげである。
環境活動家が求めるレベルにはまだほど遠いかもしれないが、それでも現実の政治も少しずつ脱炭素社会へと向かいつつあるのだ。
それを突き動かしているのは単なる理想論ではなく、脱炭素の分野で出遅れると国際競争から脱落するという経済的な強迫観念からだろう。
日本企業はもともと環境技術で世界をリードしていた。
各企業がバラバラに持っている環境技術を総動員して世界の脱炭素化に貢献できれば、日本企業復活の起爆剤となる。
日本政府も企業もそのことを理解するようになった今、国家予算を大規模に投入して国際的な働きかけを強めることが必要だが、果たして日本にそれができるだろうか。
5Gでも電気自動車でも、日本は国家プロジェクトを立ち上げながら、世界に遅れをとった。
果たして何がいけなかったのか?
日本人がデジタルに弱いのか、それとも国に金が足りないせいか?
はたまた日本の若者たちにベンチャー精神が欠けているためなのか?
もしも得意だった環境技術でまた再び遅れをとるようなことがあれば、日本は経済大国の地位を失うことになるだろう。
ひょっとすると、経済大国でなくなった方が日本人らしい生き方が見つかるかもしれないのだけれど・・・。
いずれにせよ、未来のことは若者たちに任せよう。
年寄りが、デジタルだのグリーンだのと慣れない言葉を口にしても、デジタルネイティブの若者たちから見れば何もわかっていないことがバレバレなのだ。
私たち年寄りにとって大切なことは、若者たちがいかに危なかしく見えても、彼らの邪魔をせず、暖かく見送ってあげること。
年寄りは、自分が若者たちのお荷物とならないよう、自分のことはなるべく自分でやって、シニアならではの価値を秘かに創出することに集中しよう。