<吉祥寺残日録>アフガニスタン政権崩壊!タリバンのカブール侵攻はベトナム戦争の再来だ #210816

すべては9.11、アメリカ同時多発テロから始まった。

時のブッシュ政権が「テロとの戦い」を標榜してアフガニスタンを攻撃したのは2001年のことだった。

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当時のタリバン政権がテロの首謀者ビンラディンを匿っているというのが攻撃の大義であった。

あれから20年、オバマ時代に最大の標的であるビンラディンを殺害した後もアフガニスタンでの戦争は続いた。

何のために米軍がアフガニスタンの治安を守るのか?

駐留が長引き「テロとの戦い」が色あせるにつれて、アメリカ国内に派兵反対の機運が高まった。

トランプ政権はアフガニスタンからの完全撤退の方針を打ち出し、アフガニスタン政府とタリバンの間の和平交渉を進めようとし、それを引き継いだバイデン政権もそのまま撤退のプロセスを進めていったのだが・・・

アメリカ軍の撤退が進むにつれ、アフガニスタン全土でタリバンの軍事攻勢が始まった。

アメリカの後ろ盾を失ったアフガニスタン政府軍は戦うこともなくタリバンに降伏し、わずか数日のうちに政府軍はあっけなく壊滅し、アメリカが供与した最新兵器もタリバンの手に渡ったのだ。

アフガニスタン国内の主要都市がタリバンの支配下に入り、首都カブールもタリバンに包囲される中、15日ガニ大統領の出国が伝えられた。

ガニ氏はカブール大学の元学者でアメリカで教鞭を取ったこともある知識人。

しかし、イスラム原理主義のタリバンと和解し和平の道を見出すことはできず、かと言って軍を率いてそれと戦う術も知らなかった。

明治維新の徳川慶喜と同じく、頭のいい人は味方を置き去りにして自分だけさっさと逃げるのだ。

アメリカにとってアフガニスタンを見捨てることは既定路線だったが、あまりに早い政権崩壊までは想定していなかったらしい。

タリバンが首都に迫る中で、脱出するアメリカ大使館員を空港に運ぶヘリコプターがカブール上空を慌ただしく飛び交ったという。

このみっともない撤退劇は、バイデン大統領にとって大きなダメージとなるだろう。

アメリカ人はとにかく負けることが嫌いだ。

年老いて弱々しいバイデン大統領の統治能力をめぐって、共和党から激しい攻撃が予想される。

それは私がテレビ局に入る前に起きたベトナム戦争のサイゴン陥落のシーンを彷彿とさせる。

サイゴンに突入する北ベトナム軍の戦車に追われるように、アメリカ大使館には逃れようとする群衆が殺到し大混乱となった。

タリバンは外交官やジャーナリストには危害は加えないと宣言しているが、アメリカだけでなく外国人の出国が混乱の中で続き、日本大使館員も全員出国を決めたという。

戦闘を避けるためカブール市の周辺で待機していたタリバン兵たちだが、政府軍が一斉にカブールから退去したため治安悪化を防ぐとの名目で兵士たちに市内に入るよう命令した。

中東のテレビ局アルジャジーラは、大統領府を占拠したタリバン兵たちの映像を世界に配信している。

ブッシュ政権に攻撃により政権の座を追われたタリバンは、20年の時を経て、再びアフガニスタンの統治者となったのだ。

タリバンは近く「アフガニスタン・イスラム首長国」の樹立を宣言すると伝えられている。

イスラム教を重んじる人たちにとっては喜ばしい出来事であり、アメリカ駐留時代に自由を享受していた人たちにとっては悪夢の再来である。

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絶対的と思われる権力でも、崩壊する時は思わぬほど呆気ないものだ。

ベトナム戦争は直接体験していない私が、最初に権力の崩壊を目にしたのは1986年に起きたフィリピンの革命である。

今では「エドゥサ革命」と呼ばれているそうだ。

20年以上権力の座にあったマルコス大統領が「ピープルズパワー」と呼ばれる民衆の力によって夜間密かに国外に脱出した歴史的な1日、私は新米のテレビカメラマンとしてマニラで取材していた。

道路を埋め尽くす群衆、散発的に聞こえる銃声。

大統領の逃亡が伝わると、群衆が塀を乗り越えて一斉にマラカニアン宮殿になだれ込んだ。

あの光景は生涯忘れることができない。

私のテレビマン人生でも最もエキサイティングな瞬間の一つだった。

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その後もベルリンの壁崩壊直前の東ドイツやソビエト連邦最後の日のモスクワも自ら取材し、歴史の転換点が突然やってくることを肌で感じている。

どんなに強固で絶対的な権力でも、それが未来永劫続くことはない。

ましてやアメリカの軍事介入によって作られた傀儡政権など、後ろ盾を失えば無残なほどたやすくこの世から消え去っていくのだ。

革命は最もテレビ的なニュースであり、権力の劇的な入れ替わりは多くの人たちの人生を狂わせる。

これまで20年間、アメリカのために働いてきた人たちには過酷な運命が待ち受けているだろう。

タリバンが大きな心で祖国の再生を目指すのであれば、ソ連とアメリカによって長年戦場となってきた国に、新たな時代が訪れることになるが果たしてどうだろう。

予断を持たずにイスラム国家の進展を見守っていきたいと思う。

隣国中国の新疆ウイグル自治区との関係もこれからは注視していくつもりだ。

<吉祥寺残日録>シニアのテレビ📺BS世界のドキュメンタリー「“裏切り者” 米軍現地通訳者のそれから」 #210703

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