<吉祥寺残日録>ウクライナ危機🇺🇦 要衝マリウポリ「陥落」とフィンランド・スウェーデンのNATO加盟申請 #220518

ロシアによるウクライナ侵攻からまもなく3ヶ月。

最大の激戦地となっていた南東部の要衝マリウポリで大きな動きがあった。

ウクライナ軍参謀本部は声明で「南東部マリウポリの守備部隊は戦闘任務を終えた」と表明、ウクライナ側の最後の拠点となっていたアゾフスターリ製鉄所から負傷兵ら260人超が親ロシア派の支配地域に運ばれたという。

「Z」の文字が描かれた戦車に誘導されたバスの隊列。

この中には、製鉄所に立てこもり2ヶ月以上にわたり圧倒的なロシア軍に抵抗してきた「アゾフ大隊」を中心とするウクライナ兵士たちが乗っている。

その中には重傷を負って担架で運び込まれる負傷兵も多数含まれていた。

現地から送られてきた写真には女性兵士と見られる姿も写っている。

ロシア軍に包囲され、武器も食糧も補給が一切絶たれる中で激しい空爆と地上戦に耐えた彼らの戦いはひとまず終わった。

ウクライナ政府は彼らを祖国の英雄と称え、ロシア軍捕虜との交換を模索しているが、投降した兵士たちがすんなり母国に戻れるのかどうか、全く予断は許さない。

ロシア側は製鉄所に立て籠った兵士たちを「民族主義者」と呼び、ネオナチと見做している。

投降した兵士たちを尋問し、彼らがナチスの一味であることの証拠を捏造するだろう。

ウクライナでは戦争犯罪を犯したロシア兵に対する裁判が始まっているが、ロシアもまたネオナチ兵士として彼らを法廷に立たせ、プーチン大統領の主張の正当性をロシア国民にアピールするための道具に利用する可能性が高い。

それでも、東部2州とクリミア半島をつなぐ戦略的要衝マリウポリで彼らが決死の抵抗を試み、稼いだ時間はウクライナ側にとって極めて重要だった。

その間に、西側からの軍事支援が格段に強化され、北部のハルキウ周辺ではウクライナ側がロシア軍を押し返し占領されていた多数の村を奪還した。

焦点となっている東部ドンバス地方でも、欧米から供与された長距離砲が威力を発揮し、ロシア軍の進撃は計画通りには進んでいない。

戦線が膠着状態に陥る中で、ロシア側は支配下に置いた南部ヘルソン州などで「ロシア化」を進めている。

親ロシア派の市長を一方的に任命し、ロシアへの編入を求める要請をさせているという。

クリミア侵攻時にも使ったロシアの常套手段だ。

マリウポリを完全制圧した後には、この町でも同様の措置が取られるだろう。

軍事侵攻の口実とされた東部ドンバス地方の完全掌握は未だ目処が立たないが、最大の激戦地マリウポリを陥落させたことで、プーチン大統領は軍事作戦の出口戦略を見つけようとするかもしれない。

しかし、マリウポリをついに制圧したとはいえ、ロシアが今回の戦争で失ったものは計り知れない。

ロシアにエネルギーを完全に依存していたドイツが脱ロシアに向け方針を大きく変えたのを筆頭に、ロシアの孤立はクリミア侵攻の2014年とは比べ物にならないほど進んだ。

何より、戦争が長期化し世界中のテレビやインターネットで連日ウクライナ情勢が詳しく報じられたことにより、ロシアに対する国際世論はかつてないネガティブなものとなり、その影響はそうたやすく消えることはないだろう。

その象徴となるのが、ロシアと1340キロもの国境を接するフィンランドとお隣のスウェーデンが揃ってNATOへの加入申請を決めたことだ。

フィンランドは第二次大戦時に旧ソ連の侵攻を受けた経験を持ち、戦後は安全保障上の観点から冷戦時にも中立を貫いてきた。

一方のスウェーデンも今回のウクライナ侵攻を受けて、200年間にわたる国是である「中立政策」を見直し、NATO入りを決断した。

理性的なことで知られる両国の国民や野党の大半もNATO加盟を支持しているという事実こそ、今回のウクライナ侵攻がもたらした強烈反ロシア感情を示すものだ。

フィンランドのニーニスト大統領とスウェーデンのアンデション首相は共同で記者会見を行い、18日に正式に加盟申請を行うと発表した。

プーチン大統領は、ニーニスト大統領との電話会談で「伝統的な軍事的中立政策を終えてしまうのは過ち」だと反発した上で、「善隣友好と協力の精神に基づき長年にわたって発展させてきたロシアとフィンランドの関係に、悪影響を及ぼす可能性がある」と脅したとされる。

事実、ウクライナがNATO入りを求めたことがプーチン大統領に軍事侵攻を決断させたことを考えれば、今後フィンランドが直接ロシアから威嚇される可能性も少なくないだろう。

それでももしウクライナがNATOに入っていたら、西側からより直接的な軍事協力を得られたと考えれば、一刻も早くNATOの一員となることがロシアに対する抑止力となると考えるのは当然とも言える。

しかし、そう単純に事が進まないのが国際情勢というものだ。

北欧2カ国のNATO加盟にあたり、強烈に反対を表明したのがトルコである。

北欧諸国が、トルコがテロ組織として敵視するクルド人武装勢力「クルド労働者党(PKK)」の活動拠点となっており、強権的なエルドアン政権に対し制裁を課していることが理由だという。

NATOのルールでは、新規加入には全加盟国の承認が必要とされる。

欧米主要国にとってみれば、トルコよりもスウェーデンやフィンランドの方が近い存在であり、なんとしても早期加盟を実現させようとするだろうが、中東の大国であるトルコをどう説得するのかこちらも注目である。

マリウポリの陥落と北欧2カ国のNATO加盟申請。

短期決戦を目論んだプーチン大統領の決断は、思わぬ袋小路に迷い込んでしまった。

ロシア国内でのプーチン支持は未だに高いと伝えられるが、ウクライナ問題がプーチン大統領を失脚させる可能性が徐々に高まってきていると私には感じられる。

ロシア軍は侵攻開始時点の戦力の3分の1をすでに失ったとの分析もある。

ウクライナ軍の反撃が目立ち始める中で、たとえロシアが軍事作戦の終了を発表しても戦闘は止まないだろう。

ロシアは支配地域を守るために多くの戦力をウクライナ国内に残さざるを得ない。

ロシア兵士の犠牲が増え続け、国力を消耗していく事態が長期化すればするほどプーチン氏の足元は危うくなってくる。

マリウポリ陥落というウクライナ戦争の大きな節目の日は、一方でプーチン時代の終わりが近づいていることを感じさせる日でもあった。

<きちたび>フィンランドの旅2019②〜世界最高の図書館!ヘルシンキ中央図書館「Oodi」

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