<吉祥寺残日録>ウクライナ危機🇺🇦 パトルシェフとボルトニコフ!英タイムズ紙が報じたロシア軍事侵攻の内幕 #221108

地球温暖化問題を話し合う国連気候変動枠組み条約締約国会議【COP27】がエジプトで開幕した。

しかし、ロシアによるウクライナ侵攻によって環境を巡る世界の意識は大きく後退してしまっている。

ロシアに対する経済制裁によって西側諸国の多くがエネルギー問題と歴史的なインフレに苦しみ、環境先進地域だったヨーロッパでさえ、ロシア産原油に代わって使わないと決めたはずの石炭火力に舵を切っている。

最大の温室効果ガス排出国である中国では電気自動車へのシフトを急速に進めているものの、二酸化炭素の排出量は増え続け、今も全世界の3割を排出している。

日本政府も口先だけでカーボンニュートラルという言葉を使いながら、目先のエネルギー価格高騰に対処するためとして巨額の補助金を出してガソリンの需要が落ち込むのを防いでいる。

もしも本気で温暖化対策を進める気があるのであれば、化石燃料の高騰は全世界的な省エネやエネルギーの地産地消への転換を進める絶好のチャンスのはずだ。

しかし世界中の政治リーダーたちの関心は目の前の有権者が抱くインフレへの不満にしかなく、将来世代のことなど知ったことではないようである。

個人的にはガソリンも電気もガスもどんどん値段を高くして、みんなが我慢せざるを得ない状況にすればいいと思っている。

そのうえで、生活困窮者にだけ支援をして最低限の生活を保障するぐらいでないと、目標としているカーボンニュートラルの実現など絵空事だと断言してもいい。

もしも本当に科学者たちの警告を信じるのであれば、今、私たちが我慢することが何よりも求められているのだ。

こうしたエネルギー危機の中で、ロシアはウクライナ国内の生活インフラに対して集中攻撃を加えている。

ウクライナの人たちにとって、厳寒の冬にライフラインを絶たれることの影響は辛い。

首都キーウでも発電所が攻撃されたことにより大規模な計画停電が実施されている。

反転攻勢で一時は楽観的な空気に包まれていたキーウの人たちも今はひたすら耐える生活だ。

私が取材したサラエボ戦争でも、ロシアが支援するセルビア側はサラエボを完全に包囲し、ライフラインを完全に遮断した。

だからサラエボの人たちは片っ端から木を切ってガスオーブンで薪を炊いて炊事する生活を4年も続けたのだ。

ある意味、市民生活の破壊は戦争にはつきものの試練であり、それが何年続くか誰にもわからないのが戦争なのである。

キーウのクリコフ市長は都心で電力や水道の供給が途絶える「最悪の」シナリオに備え、郊外の親戚や友人宅に移れるよう準備をするよう市民に求めたという。

もはやキーウのライフライン維持がギリギリのところまで来ていることを示すサインだ。

一方、南部ヘルソン州などでは依然としてウクライナ側の攻勢が続いているようだ。

冬になると雪で軍事作戦ができなくなるとされ、今のうちに少しでも陣地を拡大しようということらしい。

さらに西側から供与される最新鋭兵器によって冬場でもある程度の攻勢が可能という意見もあり、ロシアの予備兵30万人がまだ訓練を受けている間に戦況を有利に運びたい思惑がある。

これに対し、ロシア側はヘルソン州の住民たちをクリミア半島に移送する動きも見せていて、ヘルソン州を流れるドニエプル川の西岸から部隊を撤退させるという観測も伝えられている。

ただウクライナ側ではこの情報はロシアによる偽装工作の可能性があるとして油断を戒める発言が目立つ。

まさに一進一退、本格的な冬を前にリアルとフェイクを駆使した攻防が続いている。

冬になっても戦況が膠着する現在の状況はプーチン大統領にとって大きな誤算だっただろう。

そもそもプーチン大統領はなぜ軍事侵攻に踏み切ったのか?

その内幕に迫る記事がイギリスのタイムズ紙に掲載されたという。

NHKが昨夜伝えた「ロシア軍事侵攻“去年夏以降 大統領最側近ら内密に計画” 英紙」を引用しておきたい。

「タイムズ」の今月3日付けの電子版の記事は、ロシア政府の関係者の話として、ロシアを戦争に導くうえで中心的な役割を果たしたのは、プーチン大統領以外では、パトルシェフ安全保障会議書記と、治安機関のFSB=連邦保安庁のボルトニコフ長官、それに、ショイグ国防相だったと伝えています。

このうち、ソビエトの情報機関KGB=国家保安委員会出身のパトルシェフ氏と、ボルトニコフ氏が、軍事侵攻の必要性を強く主張したといいます。

ウクライナへの対応をめぐっては、去年夏の時点で、ウクライナ東部に小さな「国家」を樹立することや、領土のロシアへの併合、それに、ゼレンスキー政権を完全に排除し、ロシアのかいらい政権を打ち立てるという3つの案が検討されたとしています。

そして、夏の終わりまでには、パトルシェフ氏とボルトニコフ氏が、軍事侵攻の必要性を含めた原則的な決定を行い、あとはプーチン大統領を説得するだけという状況になっていたということです。

そうした中で、ショイグ国防相は、作戦にためらうこともあったとしています。

その後の具体的な検討も、ごく少人数で進められ、ラブロフ外相ですら、首都キーウに攻め込むといった作戦の詳細を直前まで知らなかったと指摘しています。

また、記事では、側近らが、プーチン大統領が高齢となり、西側への決定的な対抗策を見いだす時間が残されていないと考え、軍事侵攻という判断を急いだ可能性を伝えています。

引用:NHK

キーマンはKGB出身の最側近、パトルシェフ安全保障会議書記と連邦保安庁のボルトニコフ長官の2人だったというわけだ。

ニコライ・パトルシェフ氏は、プーチンさんが大統領に就任した際、それまでプーチンさんが務めていたロシア連邦保安庁(FSB)長官の座を引き継いだ人物で、ロシア政界の中でもタカ派中のタカ派として知られる。

彼はプーチン政権下で一貫して治安組織のトップに君臨し、プーチン大統領に対する絶対的な忠誠心によりプーチンさんからの信頼が厚いとされる。

もう一人のキーマンであるアレクサンドル・ボルトニコフ氏は、パトルシェフ氏の下でFSBの副長官を務めた後、2008年からはずっとFSB長官の地位を守っている。

すなわち、プーチン→パトルシェフ→ボルトニコフというKGBからFSBへと続く直系のラインで全てが決められたということなのだ。

しかし、彼らが思っていたほどロシア軍は強くなかったということなのだろう。

こうした場合、治安部隊出身者は手段を選ばないというのが歴史の教訓だ。

ヒトラーに忠誠を誓ったヒムラー率いるナチス親衛隊がホロコーストを主導したように、彼らは勝つためならばどんな恐ろしいことでもやるだろう。

ウクライナのザポリージャ原発を支配下に置いているロシアは、なぜかウクライナが核物質を使った「汚い爆弾」を使用しようとしていると繰り返し主張している。

自分がやろうとしていることをあえて敵の仕業だと宣伝するのは昔からの典型的な謀略の手法だ。

ロシアが何らかの核兵器を使用した際に、ウクライナ側の攻撃だと主張するために伏線を張っているに過ぎない。

またロシアは、ウクライナ側がドニエプル川のダムを破壊し下流域を水没させようとしているとも主張している。

つまり、ヘルソン州で決定的に不利な状況に陥った場合、ロシア軍がダムを破壊する計画も立てているということだ。

さらにロシアに併合した4州から住民をロシア領内に避難させているという主張も、ウクライナ国民の強制移住に他ならず、一部の報道では極東地域に送られているとも伝えられる。

現在、私たちが知ることができる情報がごく限られたものに過ぎない。

ロシアの占領地域で何が起きているのか、真実が明らかになるのは、戦争が終わりロシア軍が占領地域から撤退した場合に限られる。

もしも占領地域を奪還できないまま停戦になれば、この4州の住民たちの悲劇は闇から闇に葬られる運命にある。

太平洋戦争中、東条英機が首相と陸相に加え国内の治安を預かる内務大臣も兼務したように、ロシアの治安を維持するFSB主導で始まった今回の戦争がロシア国内から崩れることを期待するのは難しいということをタイムズ紙の報道は示唆している。

西側の経済制裁ではロシアは止められない。

先に根を上げそうなのはインフレに対する国民の不満が高まる西側諸国である。

今日投票が行われるアメリカの中間選挙で共和党が勝利すれば、ウクライナ支援の先頭に立ってきたアメリカの勢いがストップし、一気に状況が変わってしまうかもしれない。

ウクライナにとって、いよいよ厳しい冬がやってくる。

<吉祥寺残日録>ウクライナ危機🇺🇦 ロシア人が見る「パラレルワールド」!プーチンの国家戦略を学ぶ #220306

コメントを残す