一帯一路

初めて「一帯一路」の現場を見た気がした。

NHKスペシャル「巨龍中国 一帯一路〜“西へ”14億人の奔流〜」が面白かった。NHKのサイトの説明では・・・

『かつて、東西の文明を結ぶ交易路として栄えたシルクロードが今、新たな形でよみがえろうとしている。中国が掲げる巨大な経済圏構想「一帯一路」。陸と海の2つの貿易ルートでインフラを整備し、投資や貿易を活発化させてユーラシア大陸に巨大経済圏を作る、壮大な国家プロジェクトだ。その象徴が、中国政府の主導で整備されている、中国とヨーロッパを結ぶ大陸横断鉄道。番組では、その沿線にある3つの“ホットスポット”に密着する。中国のエネルギーや食糧を支えるカザフスタン。中国製品の新たな市場となっているポーランド。そして、中国が急接近するEUの盟主ドイツ。「一帯一路」の旗印の下、西へ西へと進出していく中国人たちの姿から、ダイナミックに拡大していくシルクロード経済圏の実像に迫る。』

カザフスタンについて私は何も知らない。首都がアルマトイからアスタナに遷都されていたことさえ知らなかった。もう20年も前のことだという。

しかも今年、首都アスタナで万博が開かれていたという。全然知らなかった。日本のメディアでもほとんど報道されなかったのではないか。

首都アスタナの都市デザインは黒川紀章さんが手がけたという。しかしそれは20年以上前の話。大陸横断鉄道が通過するカザフスタンには今では巨額の中国マネーが投入され、膨大な量の原油と小麦が中国市場へと送り出されているという。

俄然カザフスタンに行って見たくなった。

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続いて登場するのはポーランド。ここも大陸横断鉄道が通り、今ポーランドが中国商品の巨大物流拠点になっているという。「中国商城」という名の巨大なモールには格安商品を扱う中国の卸店が軒を並べる。ここに東欧諸国からバイヤーが殺到している。リトアニアやブルガリアから車で乗り付け、大量の商品を爆買いしていく。自国に持ち込めば大きな利ざやを稼ぐことができる。実にシンプルな商機がそこには出来上がっていた。

これも一帯一路政策により、大陸横断鉄道を利用した物流の仕組みが整備されたためだ。書類一枚で国境での通関が簡素化された。船便と比べても輸送コストは劇的に削減されたのだ。

私は今年の夏、ポーランドを訪ねたばかりだが、そんなことはまったく知らなかった。

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そして大陸横断鉄道のEUの窓口はドイツ。ここでは越境ECの企業によるドイツ製品の買占めにカメラが密着していた。中国の消費者の間では安心安全なドイツ商品へのニーズが急速に伸びているという。

例えば、粉ミルク。日本だけでなく、ドイツでも粉ミルクの爆買いが起きていた。巨大な中国市場。そのニーズを満たすために必要な商品を買い付けようとすると、爆買いになってしまうのだ。当然ドイツ市場では粉ミルクの品薄状態が起こり、本国から求められる量を仕入れることができない。

ドイツでも粉ミルクの爆買いが起きていたとは、まったく知らなかった。

14億人という巨大市場はとてつもないビジネスチャンスを世界各地にもたらす。同時に多くの軋轢を世界各地で生じている。

そこで一攫千金を夢見て奮闘する中国人ビジネスマンの姿は戦後日本の「炎熱商人」を思い起こさせる。ただそのスケールは日本の10倍以上なのだ。

好むと好まざるとに関わらず、中国の動向は世界経済に大きな影響を与えている。

日本人が懐疑的に見ている「一帯一路」政策は、確実に実現への道を進んでいる。ひょっとすると国内の余剰生産資源と余剰労働力を活用する秘策として、中国を世界の超大国に導くことになるかもしれない。番組を見ながらそんなことを感じた。

ある日、日本人が気づくと、日米を除く世界がすべて中国の影響下に入っていたなんてことが起きないとも限らない。興味を持って見守っていきたい。

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