チャイナセブン

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新たな「チャイナセブン」がお披露目された。事前の予想通り、習近平「一強体制」を実現するための布陣と受け止められている。

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今年4月にこのブログで引用させていただいた宮本雄二著「習近平の中国」で紹介された栗戦書氏と王滬寧氏も最高指導部入りを果たした。

しかも注目されるのは、習近平氏の後継者候補が常務委員に選ばれなかったことだ。専門家は習近平氏が3期目も権力を渡さないとの意思表示だと見ている。

今後5年間、中国を率いる新たな「チャイナセブン」の顔ぶれについて、日経新聞の記事を引用させていただく。

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『 中国共産党が25日選出した、最高指導部を構成する政治局常務委員7人の横顔は以下の通り。

■権力闘争に翻弄 奥に激しい情念

習近平氏(Xi Jinping、シー・ジンピン、64)総書記(国家主席)

習近平総書記=小高顕撮影

習近平総書記=小高顕撮影

5年前、総書記に就いた時は「敵の少ない協調型」と見られていた。父の習仲勲元副首相は権力闘争で失脚した経験から「何事も1人ではうまくいかない」と口を酸っぱく言い、母も慎重な振る舞いを求めたという。約30年の地方勤務では親の教えを守ってきた。

ただ、奥には激しい情念が潜む。15歳で下放された陝西省の寒村で、父の失脚にからんで冷遇されると「俺は絶対に負けないぞ」と啖呵(たんか)を切った。「権力なんてはかないものだ。私は世間の薄情さや、政治のむごさを見てきた」と漏らしたこともある。総書記就任後は反腐敗闘争で政敵を排除し、古くからの部下ばかりを抜てき。強権的手法の背後に、権力闘争に翻弄された幼少期の経験がのぞく。

発言の端々には、中国の安定統治には共産党による一党支配を維持するしかないとの思いがにじむ。党規約に追加された「あらゆる活動を党が指導する」との一文は、自らの言葉だとされる。ネットや人権活動家への規制は強まるばかりだ。

一方で、大衆目線を重視。庶民が喝采した反腐敗闘争は典型例だ。自らが打ち出した中国を再び強大な国に再興する「中国の夢」目標についても、「大衆に受け入れやすい表現だ」と語ったことがある。陝西省出身。

■胡錦濤氏直系 共青団のエリート

李克強氏(Li Keqiang、リー・クォーチャン、62)首相

李克強首相=小高顕撮影

李克強首相=小高顕撮影

名門の北京大学を卒業し、党の青年組織である共産主義青年団(共青団)のエリートコースを歩んだ。胡錦濤前国家主席が共青団トップの第1書記だった時にその下で働き、後に自らも同じ地位に上り詰めたため、同氏の直系とみられている。

共青団を離れてからは河南、遼寧両省のトップを歴任。2007年の党大会で習近平氏とともに50代で政治局常務委員に昇格した。13年に温家宝氏の後任として首相に就任。当初は市場メカニズムを重視する経済政策が「リコノミクス」ともてはやされたが、次第に習氏の陰に隠れて存在感が薄くなる。

1990年代初めに日中交流事業で来日した際は、自由党の小沢一郎共同代表の岩手の自宅にホームステイするなど日本にも人脈を持つ。本籍は安徽省。

■習氏の最側近 舞台裏支える

栗戦書氏(Li Zhanshu、リー・ジャンシュー、67)中央弁公庁主任

栗戦書氏=小高顕撮影

栗戦書氏=小高顕撮影

習近平氏の最側近として外遊や国内視察で常に寄り添う。日本の官房長官にあたる中央弁公室主任として習氏1期目を支えた。腐敗摘発、別格の指導者である「核心」の称号など節目節目で舞台裏を切り回した。

1980年代に河北省無極県トップだった時、隣接する正定県トップだった習氏と知り合った。年齢が近かった2人はすぐに打ち解けた。無極県の住民は「道路整備や工場誘致が進んだ」と懐かしむ。故郷の河北を手始めに40年間も地方で勤務したたたき上げ。習氏と同じく県、市、省すべてのトップを務めた。

偉くなっても故郷の友人に毛皮の帽子を送ったり、もらった手紙に手書きで返事を出したりと義理堅い。「戦書」の名は国共内戦で若くして戦死したおじが戦地から送った手紙にちなむ。河北省出身。

■貧困層出身 改革開放の「申し子」

汪洋氏(Wang Yang、ワン・ヤン、62)副首相

汪洋副首相=小高顕撮影

汪洋副首相=小高顕撮影

中国で最大の経済規模を誇る広東省のトップ時代は「籠の中の鳥を取り換える」と産業の高度化や構造転換を訴え続けた。30代半ばで就いた安徽省銅陵市長の時には行政や国有企業の改革を大胆に進め、地元紙に「目覚めよ銅陵」と題した文章を載せた。当時の最高実力者、鄧小平氏に注目され、1992年の南巡講話で鄧氏が接見したとされる「改革開放の申し子」だ。

安徽省の貧しい家庭に生まれ、中学を卒業すると食品工場で働いた苦労人。習近平氏を対外経済担当の副首相として支え、多くの外遊に同行した。明るい性格で冗談を絶やさない。

仕事の合間に歴史や経済、科学の本を読みあさった。部下に推薦図書を示すのが好きで、広東省トップとして開いた初の会議で南巡講話に関する本を読み上げた。

■総書記の頭脳 3代に仕える

王滬寧氏(Wang Huning、ワン・フーニン、62)中央政策研究室主任

王滬寧氏=小高顕撮影

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江沢民元総書記から3代にわたり仕える内政、外交のブレーン。江氏の「『3つの代表』の重要思想」、胡錦濤前総書記の「科学的発展観」を起草、習近平氏が総書記に就任した時に掲げた「中国の夢」も肉付けしたとされる。

米国への留学経験があり、フランス語にも堪能。ほぼ全ての外遊に同行するなど習氏の信認は厚い。腐敗を戒める一方、「改革には権力集中が必要」との主張は習氏の政治思想の骨格になっている。

本籍は山東省だが上海生まれ。30歳になる1985年に名門、復旦大学の副教授になり名を上げた。格上の人物にも直言をいとわない率直な性格。学歴を詳細に記述するよう求められたことを嫌って日本留学を取りやめるなど、短気さをうかがわせるエピソードも。

■習氏の人事戦略 まとめて頭角

趙楽際氏(Zhao Leji、ジャオ・ルォージー、60)中央組織部長

趙楽際氏=小高顕撮影

趙楽際氏=小高顕撮影

10代から過ごした青海省でキャリアを積み、2000年に当時最年少の42歳で省長に就任。07年から書記を務めた出身地の陝西省では貧困地域をこまめに視察し、「庶民派書記」と呼ばれた。陝西なまりがあり、陝西省にある習氏の父親の墓を巨大に建て直して習氏の目に留まったという説もある。

党中央での知名度は高くなかったが、12年に党の人事や組織運営を担う現職に抜てきされた。北京市や重慶市など重要拠点のトップに習氏の側近を起用する人事を推進。次世代ホープだった孫政才・前重慶市党委書記が7月に汚職で失脚した際は、現地に赴き地元幹部に説明した。習氏1期目の政権基盤固めを支えるうち、「側近」と位置づけられるようになった。

北京大学で哲学を専攻。陝西省書記時代には奈良県や京都府を訪問し、文化や観光などで交流を促進する土台をつくった。

■上海一筋40年 バランスに定評

韓正氏(Han Zheng、ハン・ジョン、63)上海市党委書記

韓正氏=小高顕撮影

韓正氏=小高顕撮影

複数の地方政府を回りキャリアを積む最高指導部メンバーが多い中、約40年間、一貫して上海で勤め上げた異色の経歴を持つ。

2006年当時、上海市トップである同市書記だった、陳良宇氏が汚職で解任された。その後任に習近平氏が就いた際、市長として支え、混乱を収めた。そうした手腕が買われ、最高指導部への登竜門である上海市トップに上り詰めた。

20代は工場で在庫管理などの仕事をしながら、30代前半で夜間大学を出た苦労人だ。上海閥を率いる江沢民元国家主席に近いとされてきたが、同氏が影響力を弱める中、習指導部に立ち位置をシフトした。実直な人柄に加え、バランス感覚を指摘する声も多い。浙江省出身。』

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昨日閉幕した共産党大会では、「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」という名称で習近平氏の思想が党規約の改正案が採択された。毛沢東思想、鄧小平理論と並ぶ三人目の偉大な指導者という地位を手に入れたとも言える。

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こうした中で統制の動きも一段と強まっているようだ。同じく日経新聞の記事を引用する。

『中国共産党の習近平政権の2期目発足を前に、民間で習氏を礼賛する動きが広がっている。1期目の成果を示す展覧会は盛況で、習氏をたたえる本や歌も話題だ。背景には習氏の政治思想を様々な手段で社会に広めようとする党の狙いがある。党はインターネットの言論統制を強化しており、習氏や党への異論は許されない空気が強まっている。

「習近平同志を核心とする党中央と緊密に団結し、中国の特色ある社会主義という偉大な事業を進めていこう」。北京市内で開催中の習政権1期目の5年間の成果を示す展覧会。習氏の名前を含んだスローガンの看板や党旗の前で記念撮影する人が絶えない。9月下旬に開幕し70万人以上が参観した。地元メディアは「北京の新たな観光名所になった」と伝える。

「習近平本」も売れている。上海市の書店では青年期の習氏を紹介する本の品切れが続く。北京市内の公園では党大会の開催にあわせるかのように、習氏をたたえる歌を合唱する市民も現れた。

ただ展覧会の参観者は学生など集団で訪れるケースが目立ち、北京の公園で合唱する市民も当局の後押しで実施しているようだ。習氏は党大会冒頭の活動報告で「社会主義の革新的価値観を家庭や子供まで徹底させる」と宣言した。党は教育などあらゆる手段で民間への働きかけを強める方針で、習氏への礼賛もセットになるとみられる。

党は一方でネットの言論統制を強め、スマートフォン(スマホ)の対話アプリなどで削除された「違法情報」は今夏から急増。企業経営への関与も強まる方向で、非上場の国有企業だけでなく上場企業でも党による経営介入を容認する定款変更が急速に増えている。

中国では1960~70年代、最高指導者だった毛沢東氏への個人崇拝がもたらした「文化大革命」で社会が大混乱に陥り、党はそれ以降に個人崇拝を禁じてきた。ただ16年10月に党の重要会議で習氏を別格の指導者である「核心」と位置付けてから、習氏への個人崇拝と受け止められる動きが実質的に広がっている。』

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確かに今年のゴールデンウィークに訪ねた南京の地下鉄では習近平氏が推し進める「中国の夢」キャンペーンのスローガンを数多く目にした。一般の人たちはそれに注意を払うこともなく、自由を謳歌しているように見えたが実際の心のうちはどんなものなのだろう。

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習近平「一強」と安倍「一強」。

ますます「力の政治」が世界を覆う気配である。

 

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